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発端

この世界は、大きく変わってしまった。

私が知る古き良き時代というのはもう、確実に戻ってくることはないだろう。

世界は、並行世界というべきところと一部の都市が入れ替わってしまった。

すなわち、ニューヨーク、チューリッヒ、東京、ロンドン、ヨハネスブルグ、デリーの6つの都市である。

これらは、全てが高濃度の汚染物質で埋め尽くされるだけの平野と化しており、それらに対処するべく、世界中の国家は国際連合を中心として、統一された。

国際連合は、連邦と呼ばれる組織となり、それぞれの国は、連邦を構成することとなった。

わが故郷、グレートブリテンも、その一つの構成主体である。

いまなお、敬愛すべき王室はある。

それは、偶然にもヨーロッパ本土へ王室のご家族がご休養遊ばされているさなかに、転移が起こったからにすぎない。


私は、その連邦の中で、警察、消防、救急、軍事、司法の5分野をつかさどっている連邦総局と呼ばれる組織に属している。

通常は、それぞれの権限は独立しており、協力して事にあたらなければならない。

だが、そのような行政の枠を飛び越え、警察官として、検察官として、そして時と場合によっては裁判官として活動できる、連邦全体で、6番目に権限があると言われている者たちがいる。

私もそのうちの一人なのだ。

彼らの名を、個人総局という。


「ふむ、いつもより紅茶を濃くだしたのか」

私は、その日は久しぶりに取れた休暇の最中であった。

「旦那さま、本日は御友人が来られておりますが。いかがいたしますか」

「通してもらえるかな。ああ、紅茶はそのまま、そこに置いてもらえるかな」

「分かりました」

執事が一礼して、紅茶セットを机の上に置いたまま、部屋から出ていった。


「やあ、ミッデジアン卿」

友人として部屋へ来たのは、確かに我が友人であった。

「久しぶりではないか。座り給えよ」

やってきたのは、今は連邦総局 軍事局 海軍総部 総隊長補佐をしているアドミラル・サー・ウイリアム・ジョン・マッケンドだ。

彼自身は男爵位を有している貴族階級ではあるが、だいたいは、アドミラル・マッケンドかマッケンド閣下と呼ばれる。

爵位でいわれるのが嫌いらしい。

私は、ミッデジアン伯爵領を有しているため、ミッデジアン伯爵もしくはミッデジアン卿と呼ばれるのだが。

特に嫌いではないので、そのまま読ませている。

ちなみに、マッケンドとは、大学の寮の時からの友人だ。

バカなこともやったが、それはもう昔のことだ。

「さて、紅茶でもどうかな」

執事に合図を送り、熱い紅茶を入れさせる。

「おお、ありがたく頂こう」

そして、執事がいれてくれたばかりの紅茶をすすり、ソーサーの上に置き、さらにそれらを机の上に置いた。

「さて、君がこうやって来たということは、何かしらの伝令役ということかな」

「そう言うことだ。まずは、この手紙を見てもらいたい」

もってきているカバンの鍵を開け、私に蝋で封印されている手紙を渡す。

「……王室紋章じゃないか」

「その通り。今回は、陛下が直々に御指名の上の仕事だ」

「何ということだ。ならば、もとから断るという選択肢はないではないか」

「そういうことだな」

現在の国王はジョージ7世陛下。

そして、私は貴族だ。

陛下あっての私である。

ゆえに、陛下のご命令には従う。

あまりに不条理な物ならば抵抗するが、今回の手紙の内容は、さて。

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