『ハイパーガール』ピラミッドと謎の女
『ATTACK』
地球に襲来する怪獣や宇宙人から地球や地球人を守るチームで、その日本支部は男女5名ずつの計10名で構成されている。
『神村春美』
彼女はATTACKの若き隊員であり、宇宙の彼方、X55星雲から来た正義のヒロイン
『ハイパーガール』
の地球上で滞在する間の人間の姿であった。
ハイパーガール自身の姿では地球上に5分と滞在出来ないため、どうしても地球人と同調して生活する必要があったため、ある時、ハイパーガールが宇宙人に襲われている神村春美に乗り移り、いざという時だけ変身して地球人を守るのだ。
また、下手に正体が暴露されると侵略する宇宙人に不意打ちを食らう危険性があり、地球の危機が増大するため、誰にも明かしていない!
筈だった…
しかし、ハイパーガールと春美が同調した時、春美を助ける為に現場に救援に来た同じATTACKの隊員である
『東郷裕』
(春美とは彼と彼女の間柄)
と
『長原ひとみ』
(春美とは同期入隊)
に知られてしまう。
同調した春美はもとより、ハイパーガールから正体を明かしては地球がピンチになることを教えられた裕とひとみの2人も、誰にも春美とハイパーガールの事をバラさずに日夜、地球の平和のために戦っていた。
そんなある日、首都圏のB県の某市に突如、宇宙から直径100mはある隕石が落下した。
本来なら落下の衝撃で首都圏は壊滅的破壊を免れないが、何故か、隕石は落下前に急激に減速し、ほぼ落下の衝撃がなく地面に着地した。
自然には有り得ない現象に侵略する宇宙人の気配を感じたATTACKは春美と裕を現場に向かわせた。
「皆さん、落ち着いて避難して下さい!」
「怪我してる方は居ませんか?」
突然落下してきた隕石から避難する人々を誘導しつつ、落下してきた隕石に近づく2人だった。
隕石に程近い場所で警戒線を張り、周囲に逃げ遅れた人々がいないか捜索している地元警察と合流した。
「ATTACKです。逃げ遅れた人々は居ませんか?」
「警戒線外は居ませんが、内部は、正体不明の有毒ガスが隕石から噴出しているらしく、近寄れません。出来れば、ATTACKの力で捜索出来ませんか?」
「分かりました。本部に要請します。」
裕が地元警察の幹部から要請を受諾したその時だった。
「おい、君、早くこっちに来なさい!」
警戒中の警官が隕石の方からふらふらとよろめきながら歩いて来た若い女性を見つけた。
「大変だ!まだ人がいた!早く助けないと!」
警察幹部が狼狽した。
そこに…
「自分が行きます!」
裕が警戒線の中に入り、今にも倒れ込みそうな女性に向かって駆け出した。
「裕ーッ!戻って!」
ガスマスクや他の防毒措置を施していない裕を心配した春美が叫んだ!
幾らハイパーガールと同調している春美と言えども、本来の地球人のままである神村春美の姿では普通の地球人と何ら変わりなく、防毒措置を取らなければ春美自身も命の危険が迫る。
地球人以外の何者でもない裕なら生命の保証など無いのだ。
「おーい!大丈夫か?」
何とか女性の側に行き、裕は彼女を警戒線まで連れて来た。
「ヴェーッ、ゲホ、ゲホ!」
裕はガスを吸い込んだようで、警戒線の外側に戻った途端に嘔吐しながらうずくまった。
「何でいつも無茶ばかりするの!自分の命を大事にしてよ!」
裕の背中をさすりながら春美は裕の無謀な行為を咎めた。
「ひ、人助けも、ゲホッ!大事な任務だろ。」
「だからと言って心配するこっちの身にもなってよ!」
「いざとなれば…な。」
裕は咽びながら春美にウインクした。
(いざとなれは…ハイパーガールが助けてくれるしね。)
「もう、だからって、いつも間に合うとは限らないからね!」
春美は裕が考えてる事を読み取ると、裕をキッと一瞥して叱った。
春美、否、ハイパーガールには地球人が心の中で考えてる事はだいたい読み取れる能力がある。
しかし、それも、裕やひとみとかの、仲のいい者同士なら完璧に分かるのであって、心を開かない人間には効かない能力であった。
「春美…それより、彼女に救急車を呼んでくれ。」
裕は自分が救出した女性の身を案じて救急車を呼ぶように春美に言った。
「バカねぇ、あなたに言われる前に、警察が救急車を呼んであるわ。2台も!」
「あ、ありがとう…で、何で2台も?」
「あと1台はあなた用に決まってるでしょ!」
(この人は本当に馬鹿なの?)
春美は無謀な上にお人好しの裕の行動にはよくハラハラさせられてる上に、いつも自分が注意してるにも関わらず、無茶な行動を止めない裕に怒りを覚える事もよくあるが、それでも、誰かを助けるために全てを差し出す勇敢な裕に心を惹かれていた。
(この人だけはどんな事があっても助けなきゃ!)
春美にとって掛け替えの無い大切な人…この人を守るのは春美、春美はいつも自分自身に言い聞かせていた。
裕と女性は現場から離れた総合病院に搬送された。
幸い、裕は猛毒ガスを少し吸っただけで診察のみで終了したが、女性の方は、猛毒ガスを吸ったにも関わらず、何故か治療を拒否した。
「早く、退院させて!」
医師や看護士の説得も聞かず、女性は『退院』を叫び続けた。そこへ、治療を終えた裕と付き添いの春美が通りがかった。
「どうかしましたか?」
「患者さんが、退院したいと言って言うことを聞かないんです。」
看護士の困った姿を見た裕は、誰も頼んでないのに女性の説得を買って出た。
「君、具合が悪いんだろ?医師や看護士の言うことを聞いて暫くの間入院したらどうだい?」
「あんたには関係ないでしょ!ほっといて!」
「ほっとけないよ!あんなに猛毒ガスを吸ったら命にかかわるぞ!無茶な事はやったらダメだ!」
「あんたに言われる筋合いはない!」
(あんたが言う筋合いじゃない!)
春美もこの言うことを聞かない謎の女性と同じく、心の中で突っ込んだ。
しかし、春美もこの聞き分けの無い女性に対して苛立ちを覚えていた。
「ちょっと、いいかしら?」
「誰、あんた?」
「この人はさっきあなたを毒ガスの中から助けた人よ!そんな言い方はないんじゃない?」
「余計なお世話よ!」
「今、何つった!?」
攻撃的な女性の発言に春美は我を忘れんばかりに怒りが込み上げて来た。
「止めろよ、春美!」
裕は何故か春美の方を制した。
「ひ、裕、何で?」
「彼女、突然、隕石が降って来て、毒ガスを吸ったからパニックになってるだけかも知れないじゃないか。冷静になろうよ。」
「裕、自分が馬鹿にされてるのに、この人の肩を持つわけなの?」
「肩を持つつもりはないよ。ここは冷静になろうよ。」
裕は怒る春美を落ち着かせようと宥めた。
「裕…私の事より、この人を応援するわけ?」
「別に、そんな事言ってないだろ!」
「もういい!」
堪忍袋の緒が切れた春美は怒りを露わにしながら診察室から出て行った。
裕は何とか女性を説得しながらも、春美の後を追いかけた。
病院からATTACKの基地に帰る車中、運転席の春美はスピードを出しながら苛立ちを見せていた。
「春美、何怒ってんだ?」
「…。」
裕の問いかけにも、春美は何も答えなかった。
「春美、いい加減に機嫌直せよ?」
「あなたこそいい加減にしてよ!」
「春美…。」
春美の機嫌が直らないまま、2人は基地に戻った。
「裕、あの状況で彼女がおかしいと思わない?」
基地に戻った2人は他の隊員たちに見守られながら、さっきの謎の女性の事で対立を続けた。
「おかしいって…まだ何も分からないだろ?」
「猛毒ガス吸って、入院を拒む女がおかしくないって思うわけ?」
「おかしい、おかしくないって、何で早々と決めつけるんだ?いつもの春美らしくないぞ!一旦落ち着いたらどうだ。」
裕は春美を宥めようとしたが…
「はあ?裕は私がおかしいと思ってるの?」
逆に春美の怒りに油を注いだ結果となった。
「そんなに怒ることないだろ?お前、どうかしてるぞ?」
「裕…、私の事より、あの女の方が気になるんでしょ!勝手にしなさいよ!」
「春美、落ち着けよ!」
裕の事に頭に来た春美は怒れるまま裕や他の隊員達が居る作戦室を出た。
裕も春美を追いかけ、作戦室外の廊下に出た。
「春美、待てよ!」
「もう知らない!ほっといてよ!」
完全に我を忘れるほど怒り心頭に達している春美は裕の制止を無視して廊下を進んだ。
「ま、待てよ!」
裕は小走りで春美を追いかけようとしたが、裕の背後から誰かが裕を捕まえて、後ろを振り向かせた。
刹那…!
『バチイィィン!』
誰かが裕の頬を平手打ちした。
平手打ちしたのはひとみだった。
「痛ってーッ!何すんだ?」
「あんた、春美の気持ちをわかってない!」
「ひとみ、お前も何言ってんだ?」
裕はいきなり自分を叩いたひとみに問いかけた。
しかし、ひとみは裕の問いかけを無視して喋った。
「何時も何時も、あんたには女心がわかってない!今日と言う今日はあんたを絶対に許さない!」
「ひとみ…!」
ひとみは裕の胸倉を掴むと、今にも殴りつけそうな勢いで裕を睨みつけた。
「何やってるんだ?お前たち!」
そこに、廊下の向こう側から誰かがやって来た。
ATTACKの副隊長で女性隊員のトップとなる
『赤井碧』
だった。
「ひとみ、何をそんなに怒ってるんだ?」
碧の問いかけを聞いたひとみは裕の胸倉を掴んだ手で裕を押してから手を話してその場を離れた。
「どうしたんだ、あの子?」
「さ、さあ…?」
「裕、何があったんだ?訳を聞かせてくれないか?」
裕は自分の上官である碧に事のいきさつを話した。
「なるほどな…確かに裕の言い分が理に適ってるな。」
「でしょ、副隊長。」
「しかしな、裕は女心と言うものが分かってないようだな。」
裕は碧の一言に目を見開いた。
「えっ?」
「お前からしたら確かに『?』かも知れないな。女の私だから春美やひとみが怒ったのも分かる。」
「だったら教えて下さい。」
「教えて分かれば誰も苦労はしないさ。さ、先ずは考えて見なさい。」
フフフと笑うと、碧は他の隊員達のいる作戦室へと入った。
「何で訳が分からん事で、春美に怒られて、ひとみに叩かれなきゃなんないんだよ!」
裕はぶつくさと呟きながら、春美が消えて行ったパトロール車の車庫へと向かった。
「あれ?春美の奴、もう出て行ったのか?」
裕が車庫に着いた時には、既に春美と、パトロール車が一台出発した後だった。
「畜生、アイツも無鉄砲なとこあるから、どこ行ったんだよ?」
裕は1人、途方に暮れるしかなかった。
その頃、春美は1人、裕と女性を搬送した病院に向かっていた。
「裕のバカ!…私の気持ちも分からずに、こうなったら、私1人であの女の正体を暴いてやるんだから!見てなさいよ!」
怒りの収まらない春美は女性のいる病院の受付に来た。
「すみません、今朝、隕石の被害にあって検査入院した女性は居ますか?」
すると、受付の看護士は困った様子で答えた。
「あ、あの人なら、勝手に病院を飛び出して行きましたよ。」
「ええ~っ!」
看護士は更に続けた。
「あの人、入院は絶対嫌だ!とか言って聞かないから、困りましたよ。過去にも、訳ありの患者さんを受け入れた事は何度もありますけど、名前や身内まで何も言わなかった人は初めてでしたよ。」
「その人、どこの誰かも分からないんですか?」
「そうなんです。」
「そんなあ…。」
春美は、正体不明の謎の女を捕まえてやろうと意気揚々になっていたが、あらゆる手掛かりが無くなり、途方に暮れるしかなかった。
「あ、そう言えば…。」
看護士が何かを思い出した。
「あの女の人、助けてもらったお礼がしたいからと言って、ATTACKの新兵器開発研究所の場所を教えろ!と言ってましたから、住所を教えましたが、まだ来てませんか?」
「えっ…、どう言う意味?」
(あんなに裕を毛嫌いしてた女が、お礼がしたいだなんて?それに、新兵器開発研究所は、私達の基地から離れているのに?あの人、一体、何考えてるの?)
春美の中で疑問が膨らんだ。唯一つ、女性が益々怪しいと言う疑念だけが更に濃くなったが…。
「私が絶対捕まえる!」
春美は病院からATTACKの新兵器開発研究所に向かった。
新兵器開発研究所には、確かに最新鋭の武器を開発しているところではあるが、警備に関しては春美達のいるATTACK日本支部に比べて手薄であり、何者かによる不意な襲撃に対して脆弱な部分がある。
春美の脳裏には
『まさか、彼女が…?』
と言う、破壊工作を企む一員だとしたら、新兵器開発研究所が危険晒される危機感が支配していた。
その頃、新兵器開発研究所の正門から何者かが内部に突破しようとした。
「止まりなさい!」
何人もの屈強な警備員が侵入者を捕まえようとしたが、侵入者が投げつけるガスの様なものを浴びると次々に痙攣を起こして倒れて行った。
春美が新兵器開発研究所に到着した頃には、全ての警備員がガスを浴びて倒れていた。
「…どう言う事?」
目の前の光景に唖然としながらも、春美は倒れている警備員の安否を確認した。
幸いな事に、警備員達は気絶しているだけのようであった。
「あの女の仕業ね!」
春美の疑心が確信に変わった。
春美は正門から研究室へと向かっていった。
研究室のドアは、正門での襲撃を察知して固く閉ざしたため、謎の侵入者がドアを開けようとしてもビクともしなかった。
「くそっ、こんなところで!」
「待ちなさい!」
そこに春美が現れた。
「無駄よ、そのドアは爆弾でも破れないわ!」
春美が侵入者に向かってレーザーガンを構えながら叫んだ。
「ちっ!」
「キャッ!」
侵入者がいきなり反転して春美に襲いかかった。
「止めなさい!」
春美は侵入者と取っ組み合いの状態になりながら、必死で侵入者と格闘した。
やっとの事で、春美は侵入者を押し倒し、馬乗りになって相手の顔を見た。
「やっぱり…、あなただったのね!」
侵入者の正体は、春美が予感した通り、あの謎の女性だった。
「邪魔するな!」
「キャッ!」
一瞬の隙をついて、謎の女性は自分に跨がっている春美を押し倒し、正門に向かって逃げ出した!
「待ちなさい!」
春美は謎の女性を呼び止めようとしたが、女性が自分に向かって何かを浴びせて来た。
「ゲホッ、ゴホッ、な、何これ?」
正体不明のガスを浴びて、春美はその場にしゃがみ込んだ。
だが、春美には記憶があった。それが今朝の隕石落下現場で裕が浴びたガスと同じ匂いだと言う事を。
「やっぱり、あの女、宇宙人ね。」
春美が抱いていた疑問が確信に変わった時だった。
春美は研究室内の職員に、正門付近で倒れている警備員達の救護を要請すると、直ちに謎の女の追跡を開始した。
「絶対に捕まえる!」
我を忘れた春美の怒りが頂点に達している。
それが証拠に、不審者追跡中にも関わらず、基地への連絡を忘れている。
やがて、謎の女はあの隕石落下現場の近くにやって来た。
「止まりなさい!」
春美の叫び声で女は立ち止まり、春美の方を振り返った。
「あなた一体何者なの?」
春美はレーザーガンを抜き取り、謎の女に向かって構えた。
「地球人風情が私の破壊工作の邪魔をするとは!」
「やっぱり、あなた宇宙人だったのね!何が目的なの!」
春美が女を問い詰めている時、
突然、隕石の上部に亀裂が入り、その部分だけが砕け落ちた。
同時に、春美の無線機に基地にいたひとみの声が入った!
『春美、どこなの、返事して!新兵器開発研究所からあなたが不審者を単独で追いかけてると連絡があったわ!単独行動は止めて!』
春美が無線機に応答しようとした時…!
「キャーーーッ!」
隕石の上部から現れた赤銅色の三角錐の頂部が見え、そこから春美に向かって赤い色の無気味な光線が放たれた。
一瞬でその光線に包まれた春美は身動きが取れなくなったばかりか、その光線によって赤銅色の三角錐の中に吸い込まれて行った。
『春美、どうしたの?お願い、返事して春美ーーッ!』
無線機の向こう側のひとみの声も虚しく、春美は隕石の頂部の三角錐へと消え去った。
「申し訳ありませんでした!」
謎の女は何故か隕石に向かって土下座した。
『工作員659号、低俗な野蛮人の基地を潰せないばかりか、尾行されるとは、愚か者めが!』
土下座する女に向かって隕石から謎の声がした。
「どうか、お許し下さい。」
『チャンスをもう一度だけやる!再度、ATTACKの基地を破壊せよ!失敗は許さん!』
「はいっ!」
「ここはどこ?」
その時、春美は三角錐の中に閉じ込められていた。
閉じ込められる際に赤い光線が胸と両腕の上半身と足首にそれぞれ頑丈なベルトとなって、あたかも、縛られたかのように春美の身体に食い込んでいる。
「くっ…、取れない!」
上半身と足首を縛られ、身動きが出来ない状態で床の上でもがいたが、ベルトはビクともせず、ただただ床の上をもがきながら転がるだけだった。
「無駄だ!」
暗い部屋の中に春美の他に誰かが居るようであった。
「…誰?」
春美の問いかけに、何者かが暗闇から現れた。
その姿は、頭は蛇で、体つきは人間のような、2m以上は優にあろうか。
「…ッ!」
春美は息を呑んだ。如何にハイパーガールと言えども、元は地球人の女の子だから、蛇の頭をした宇宙人に恐怖感を抱くのは無理もない。
「私は蛇遣い座方面から来たシュランゲ星人だ。」
シュランゲ星人と名乗った蛇頭の宇宙人は、蛇のような赤い舌をペロペロと出し入れしながら、尻尾で春美の顔を撫で回した。
春美は身の毛もよだつほどの気持ち悪さから、シュランゲ星人の尻尾から顔を背けようとしたが、自由の効かない身体では逃げることが出来なかった。
「下等な人間よ!貴様達は私達の奴隷となるしか脳がない癖に、無駄な抵抗をする。どれほど見苦しいか分からせないといかんようだな。」
「私をどうする気?…、嫌ぁ!」
シュランゲ星人は春美の上半身を締め付けているベルトを握ると片手で一気に春美を持ち上げ、春美の顔を自分の顔、正確に言うと、自分のチョロチョロと口から出入りしている舌の前に近付けた。
「醜い猿の分際で私に楯突くとは…フッ、強がるのも今のうちだ。」
シュランゲ星人は春美のヘルメットを強引に取り去り、恐怖におののく春美の身体を逆さにして、春美の縛られた両足を右手で掴んで持ち上げ、やはり春美の顔を自分の舌の前に近付けた。
「や、止めて…。」
「今のお前なんか容易く殺せるが、人質に丁度いい。」
「ギャッ!」
シュランゲ星人は春美を再び床に落とすと、尻尾で春美を何回か転がして遊んだ。
「痛い!痛い!止めて!」
何度も転がされているうちに、春美の顔、ATTACK隊員ようの身体にぴっちりとフィットしたスーツがすす汚れていった。
「非力な猿め!何時までも泣き叫んでいるがいいわ!ワーッハッハッハッ!」
シュランゲ星人は散々春美をいたぶってから部屋を出た。
「みんなに連絡も取れないし、変身も出来ない…私どうしたらいいの?ひとみ、裕、お願い!ここから出して!」
春美は自分のピンチになって初めて悔やんだ。
もし、謎の女の追跡中に連絡を入れていればこんな事にはならなかったかも知れない…、軽はずみな事をしてしまい、もしかしたら、あの蛇みたいな無気味な宇宙人に殺されてしまうかも知れない…。
いつしか、春美の目に涙が滲み出た。
その頃、裕とひとみは連絡が取れなくなった春美の捜索のため、パトロール車で新兵器開発研究所から隕石落下現場を隈無く捜索していた。
「ひとみ、ちゃんと見てるか?」
「あんたに言われなくても探してるわよ!それより、あんたも周りをよく見なさいよ!」
「運転中によく見れるわけないだろ!」
「つべこべ言わずに探しなさいよ!」
春美と裕の仲違いの一件からまだ仲直りしていない2人だった。
(春美…お願い、無事でいて…。)
(春美、何でお前らしくない?1人で行動するなんて。)
仲違いしていても、春美を心配する気持ちに違いはなかった。
「あ、あれ、あの娘?」
裕は、前方に歩いている謎の女を見つけた。
「何?こんな大事なときにナンパ!?」
「違うよ!あの女が今朝俺が隕石落下現場で助けた女だよ!」
「何ですって?そいつは確か検査入院してるんじゃないの?」
「見間違うもんか!あんだけ騒ぎ立てる奴、見たこと無いよ。」
裕は車を女の傍に近付けた。
ところが、女の様子がどうもおかしい?
何時しか気分が悪くなったのだろうか?道端にしゃがみ込んでしまった。
「君、大丈夫か!」
「あ、あんた…確か!」
「そうだよ!今朝君と会ったばかりだよ!何で病院を抜け出したんだ!ダメだろ!」
「うるさいわね、ほっとい…。」
(待てよ…コイツらを上手く騙して人質にすれば、ATTACKの基地に潜入出来る!ここは一つ…。)
「ゲホッ、ゲホッ…ごめんなさい、私、子供の頃からお医者さんが嫌いだから…。」
「そんな事より、病院に戻ろう!」
裕は謎の女を病院に連れ帰れろうとした。
「ち、ちょっと、裕?春美を探す方が先決でしょ!」
春美の捜索より赤の他人の心配をする裕にひとみが反発した。
「ひとみ、春美の事も心配だけど、苦しんでる人をほっとけないだろうが!」
「あんたには優先順位ってものが無いの?救急車を呼んだらいいじゃない!」
「苦しんでる人を見過ごせるわけ無いだろ!」
「あんた、いい加減にしなさいよ!」
ひとみが再び裕の胸倉を掴もうとしたその時だった。
「そうよねぇ、苦しんでる人を助けないと…。」
謎の女がひとみの背後に回り込み、ひとみを羽交い締めにしながら、ひとみの右腰にあるレーザーガンを抜こうとした。
しかし、
「止めるんだ!」
裕がひとみや謎の女の右側に回り込み、先にひとみのレーザーガンを握り締め、謎の女が抜き取らないようにした。
「きゃあああ!」
「な、何…?」
まさかの事態に悲鳴を上げるひとみと、裕の咄嗟の行動に驚きを隠しきれない謎の女だった。
「き…貴様、何故?」
「彼女を離せ!さもないと…!」
「離すもんですか!この女は人質よ!あんたが無駄な抵抗を止めなさい!」
「ひ、裕…。」
謎の女に羽交い締めにされたひとみのレーザーガンを握り締めたまま、裕は謎の女に問いかけた。
「君の目的はATTACKへの破壊工作なんだろ?しかし、既に新兵器開発研究所の破壊工作は失敗してるじゃないか?無駄な抵抗は止せ。」
「お、お前…私の正体を…!」
「今朝、君を助けた時からもしかしたらとは思っていたよ。」
「じゃあ何故?私を助けた?」
「感だけで人や宇宙人を疑えない。それに、俺には君が本当に悪人に見えなかったから。」
裕は優しく女に問いかけた。
「裕、こいつが春美を拉致したのよ!早くこいつを何とかしてよ!」
羽交い締めにされたままのひとみが裕に怒鳴った。
しかし、裕は再び優しく女に問いかけた。
「あと一つ、どうしてもわからない事がある。君は今本当に苦しがってるみたいだ?何か患っているのか?」
「私は健康体だ!」
「裕、早くこいつを!侵略宇宙人を何とかしなさいよ!」
ひとみが、自分の言うことを聞かず、女を説得する裕に怒鳴った!
「侵略ですって?シュランゲ星を侵略使用としている地球人が!」
ひとみの一言に驚いた女が一瞬、ひとみ羽交い締めにしていた手の力を緩めた。
刹那、裕がひとみと女を引き離した。
「きゃっ!」
「ギャッ!」
ひとみと女はそれぞれ小さな悲鳴を上げた。
「お前達は我がシュランゲ星を、シュランゲ星人を滅ぼし、星の資源を奪い尽くすつもりの癖して、我々を侵略宇宙人だと避難するのか?」
謎の女は確かに、自分達が侵略者ではなく、裕やひとみ達地球人が侵略者だと決め付けたかのように怒鳴った。
「シュランゲ星…?聞いたこと無いわよ?ね。」
「ああ、そんな星、あるの?」
謎の女の発言、聞いたことの無いシュランゲ星と言う言葉にさえ意味が分からない2人だった。
「騙すつもりか?地球人!」
「ち、ちょっと待てよ!俺達地球人はどの星も侵略する気なんて無いよ。それは、君達がこの地球を侵略しに来てるんじゃないのか?」
「地球人がよその星を侵略だなんて、あんたバカなんじゃない?」
食い違う3人の会話はまだ続く。
「それより、君は何て名前?」
裕は女に問いかけた。
「私は工作員659号、お前達に語る名前など無い!」
「本当はちゃんとした名前があるだろ?」
「裕、何でこんな奴の名前が気になるわけ?」
ひとみは、否、ひとみと女は、何故裕が女の名前を聞き出そうとしているのかが理解出来なかった。
「誰だってちゃんとした名前があるよ。俺は君を一人の人として話をしたい。そして、春美を、仲間を助けたい。」
「あんたって、何処までお人好しなの?私の事や行方不明の仲間の事が気になるなんて!それに、あんたのお仲間がどこに行ったか、私は知らないわ。」
「テメェ、いい加減にしろよ!」
女の態度にひとみがキレて女に殴りかかろうとしたが、何故か裕がひとみを制した。
「ひ、ひ、裕?気は確かなの?」
「今彼女を殴ったところで、彼女は本当の事を語らないよ。だったら、こっちから語りかけるまでだよ。」
「何で、地球人って、こんなにお人好しなの?私達のシュランゲ星では考えられない…?」
女は、裕の優しさが理解出来ずにいたが、少しずつだが、心を許して行った。
「さあ、教えてくれ。仲間を、春美をどこに連れ去ったんだ?」
「騙されるもんですか!あんた達地球人は私達を侵略しようとしてるから!」
「信じてくれ!俺達はよその星を絶対に侵略しない!」
「だったら証拠を見せなさいよ!」
「しょ…、証拠って?」
「ほれ見なさいよ!証拠を見せられないなんて、あんた達が私達を騙そうとしてるからよ!」
女は裕の言葉に耳を貸さなかった。
裕は他星を侵略しない証拠がどうしたら見せられるのかが思いつかないでいた。
「証拠ならあるわよ!」
ひとみが、小さく折られた紙を女に放り投げた。
「ひとみ…、その紙は、新兵器開発研究所で作成中の新兵器の記録だろ?トップシークレットだから見せられないやつだぞ。」
「あんたは黙って見てなさい!この馬鹿女には目に見える証拠を突きつけた方が良いのよ!それ見なさい!今ATTACKが開発しているのが、バリヤーやシェルターと言った防御用の物ばかりよ。」
女は、わなわなと震えだした。
「う、嘘…嘘よ!地球人が侵略しないなんて?」
「わかったでしょ!私達が絶対に侵略しないのが。」
「…信じられない、私達は小さい頃から地球人は何時かシュランゲ星を征服しにやって来ると、そして、私達を殲滅すると…?これが真実だなんて…?」
その時!
「うわああ!」
「きゃあああ!」
突然、地面が揺れ出した!否、隕石全体にひび割れが発生し、隕石の中から、赤銅色の巨大な三角錐が現れた。
そう…
春美を閉じ込めた三角錐はこの巨大な三角錐の頂部の一塊に過ぎなかった。
その姿はまさしく、三角錐と四角錘の違いこそあるが、ピラミッドそのものの姿であった。
「ぴ、ピラミッド!」
2人はまさか、宇宙から落下した隕石の中からピラミッドが出て来るとは想像もしていなかった。
更に!
砕けた隕石の破片が合わさって、人の形をした全身50mはあろうかと言った怪獣が現れた!
「あ、あれは!」
隕石の破片で出来た怪獣、然も、頭部は蛇みたいな形をした化け物が現れた。
「ま、まさかシュランゲを出すなんて…最終兵器のシュランゲを出したら、私達が地球を侵略しようとしてるみたいじゃない!」
謎の女も、この怪獣の出現には驚いているようだった。
「ひとみ!早く基地に連絡だ!」
「はい!」
「とにかく、君は逃げるんだ!」
裕はひとみに怪獣出現の一報を基地に連絡させ、女を守るため、彼女をパトロール車に載せた。
『659号!地球人に唆されるとは!貴様には用はない!行け、シュランゲ!地球を破壊し、地球人を奴隷とするのだ!』
「まさか、司令官?地球人が侵略者ではなく、私達が侵略者なのですか?」
『地球如き星は侵略するに容易い!シュランゲ星の子供のうちからお前達を教育しておくと、命を懸けて侵略を手助けするから楽で良いからな!』
「司令官?騙したのですね?」
『騙すも何も、お前達愚民は私の下で私の為に命を捧げるしか価値がないわ!』
「そ、そんな…。」
シュランゲ星が謎の女を騙してATTACKの基地を破壊し、その隙に地球を侵略しようとしていたのだ。
『659号!もうすぐお前は死ぬ!私達シュランゲ星人にとっては、地球の空気は毒性が高いから、長くは呼吸出来ないからな。』
何故、隕石落下現場で猛毒ガスが発生し、謎の女が現れたのか?
そして、何故謎の女はさっき気分を悪くしたのか?
答えはこの通りなのだった。
「何とかして食い止めなければ!」
裕はレーザーガンを抜き取ると、怪獣目掛けて撃ち続けた!
しかし、巨大怪獣に人間のレーザー兵器などは蚊の一差しのようなもの、焼け石に水だった。
ようやく、ひとみが呼んだATTACKの戦闘機が2機、応援に駆けつけ、裕と共に攻撃した。
「何で?何であなた達は無敵のシュランゲに対して無謀にも攻撃出来るわけ?」
謎の女は自分のいるパトロール車の中から、パトロール車の外に居て応戦する裕を見て叫んだ。
「幾ら敵が無敵過ぎても、俺達ATTACKが逃げたら地球が滅びる。俺達は地球を地球人を侵略者から守るために戦うんだ。」
そして、怪獣が裕達のいるパトロール車に向かって歩き出した。
「こっちに来る!」
「ひとみ!彼女を連れて安全な場所へ逃げるんだ!」
「裕、あんたも逃げるのよ!」
「俺が何とか食い止めるから、ひとみは彼女と逃げてくれ、それから春美を探してくれ!」
「…わかったわ!あんたも無事でいてね。」
ひとみは裕の言うとおり、パトロール車を走らせたが…
怪獣が投げつけた瓦礫の大きな塊が行く手の道路に投げられ、車での避難が不可能になった。
「畜生…!」
裕は動けなくなった車を庇いつつ、怪獣への攻撃を続けた。
その裕に女が近付いた。
「何故?何故あなたは自分を犠牲にしてまで戦うの?死んだらおしまいじゃない!」
「そりゃあ死にたくないよ!でも、1人でも多くの人を助けるためなら自分を犠牲にしても構わないからな。」
「裕、あなたって、あなたって地球人は…。」
その時だった。
上空の戦闘機のうちの一機が怪獣の目から放つ光線に当たり裕達のいる近くに不時着した。
中から現れたのは、副隊長の赤井碧だった。
「副隊長!無事ですか!」
「裕、彼女の事は無線でひとみから聞いた。彼女を収容してひとまず撤退するぞ!」
「しかし、副隊長!あの怪獣を暴れさせては被害が拡大しますし、まだ、春美がどこにいるか分からないから、撤退は出来ません!」
「無謀に攻撃しても意味がない!もうすぐ隊長が地上から駆けつけるから、隊長と共に撤退するぞ!」
「しかし…。」
裕が言葉に詰まった時だった。
「お~い、碧?無事か!」
声の主は隊長である赤井秀夫だった。
因みに、隊長と副隊長は夫婦である。
「隊長!今は戦闘中です!私の事を気安く呼ばないで下さい!ここは家じゃありません!」
「堅いこと言うなよ!それより碧、裕、ひとみ、その女の子も連れて撤退するぞ!しかし裕、これは逃げるんじゃ無い!戦前を後退させてから戦力を立て直して再攻撃するためだ!」
隊長である秀夫も、裕達の安全を考慮して、撤退を命じた。
「隊長…分かりました。」
裕は怪獣に攻撃しつつ、撤退を始めた。
その時!
あの赤銅色のピラミッドの頂部が開き、中から何かがせり上がった。
「あ、あれは…春美?」
ピラミッドを見ていたひとみが双眼鏡越しに指を指しながら驚いた。
ピラミッドからせり上がったものは、十字架にベルトで両手両足と腰を締め付けられ、身動きの取れない春美が居た。
「春美をどうする気だ?」
裕が攻撃をしつつも、ピラミッドにいる春美を見ながら呟いた。
『地球人共よ!無駄な抵抗は止めろ!お前達が攻撃すると、この女が犠牲になるぞ!ワーッハッハッハッ!』
シュランゲ星人は辺り一面に響く声で喋った。
確かに、ピラミッドの上にある十字架に磔られているのは春美だった。
「みんな、私にかまわずシュランゲ星人を攻撃して!」
春美は精一杯の大声で攻撃の手を緩めないように懇願した。
同時に。
「きゃあああーっ!」
春美を架けた十字架に赤い光と共に高圧電流が流れた。
「春美ーっ!よくも春美を!」
裕のシュランゲ星人に対する怒りが頂点に達しようとしていた。
『攻撃を止めろ!人質が犠牲になっても良いのか?』
卑劣なシュランゲ星人の前に、人質になった春美を助けるためにATTACKは攻撃を中止した。
しかし…この男、裕だけは、碧が不時着した戦闘機に乗り込み、離陸した。
「裕ーっ!止めるんだ!」
皆の制止を聞かず、裕は春美に向かって飛行した。
「裕ーーっ!あなた殺されるわよ!お願い!私にかまわず逃げて!」
春美は十字架から、自分を助けに来る裕の身を案じて叫んだ。
そして…。
(いやぁ、怖い、こんな磔にされたままで死ぬなんて…裕、助けて!)
死への恐怖を感じ、自分を助けに来る裕に生きる希望を託す春美も居た。
裕の乗り込んだ戦闘機が近付くに連れ、またもやピラミッドから赤い光が戦闘機目掛けて放たれた!
光線は見事に命中し、戦闘機は操縦不能に陥った。
「いやああああ!」
春美は裕への攻撃に悲鳴を上げたが、裕は間一髪、戦闘機から脱出した。パラシュートが開き、裕は春美を磔ている十字架に降りたった。
「裕、無茶よ!馬鹿よ!何で危険を犯してまでも私を助けるの?」
「俺にとって掛け替えの無い人を助けるのに、危険がどうとか関係ないよ。春美、お前は俺にとって掛け替えの無い人だからな。」
「裕…あなたって。」
春美は瞳に涙を浮かべた。
その時!
「きゃあああ!」
「ぐわわわわ!」
あの赤い光が2人を襲った!
丁度裕が春美の隊員用スーツの胸ポケットの中から春美がハイパーガールに変身するための変身用カプセルを取り出した時だった。
「裕ーっ!」
「は、春美…後は頼んだよ…。」
裕は感電しながらも春美に変身用カプセルを手渡し、自分はそのまま十字架から滑り落ちた。
「裕ーーっ!死んじゃあ嫌ああああ!」
春美は変身用カプセルを持ちすぐにハイパーガールに変身した。
「みんなーっ!あれを見て!」
春美がハイパーガールに変身した時、ひとみは春美の正体を隠すためにATTACKの全員を怪獣に向けさせた。
ひとみの機転のおかげで、春美は正体がバレずに済んだ。
ハイパーガール:遙か彼方の宇宙にから地球を守るために日夜、怪獣や宇宙人と格闘する伝説のヒーローで全身が1cm~55mまで変身出来る。今回も50mの怪獣シュランゲを倒すため、すぐさま巨大化したのだ。
ハイパーガールに変身した春美は地面に叩きつけられそうになってた裕を救うと、両手で裕を包み込みながら、自分の両胸の間に裕を優しく挟むと、裕をひとみ達ATTACKの隊員達の元に置いた。
『な、何だ?あの化け物は?』
ピラミッド内のシュランゲ星人はハイパーガールの存在を知らないので、突然現れた巨大化女戦士に驚きを隠しきれなかった。
『行け!シュランゲ!』
「みんな!ハイパーガールを援護するぞ!怪獣目掛けて撃て!」
戦いの火蓋は切って落とされ、隊長の秀夫はATTACKの隊員にハイパーガールの援護を命じた。
ハイパーガールとシュランゲとの戦いは一進一退の様相を呈していた。
戦いが長引けば、地球上で5分間しか存在できないハイパーガールが不利になる。
「私も手伝うわ!」
あの謎の女が何やら笛のようなものを取り出し、勢いよく吹き出した。
すると、さっきまで暴れていたシュランゲが大人しくなった。
「この笛は暴れて手の着けられないシュランゲを大人しくさせるためのもの、さあ、今のうちにシュランゲを倒して!」
謎の女のおかげで大人しくなったシュランゲにハイパーガールが必殺技のスパークスターを放ち、シュランゲを粉々に吹き飛ばした。
『おのれ…659号!裏切り者には死を!』
またもやピラミッドから赤い光が今度は謎の女目掛けて襲いかかった!
「きゃあああ!」
女が自分の死を覚悟したその時だった!
「危ない!」
女を庇おうと、裕が彼女に覆い被さった!
「裕!危ない!」
ハイパーガールの手が、裕と女をカバーし、彼らを殺人光線から救った。
「…許さない!」
ハイパーガールは全身から湧き出るまばゆい光を両手に集め、必殺技の一つ
『ブリリアントアロー』
をピラミッド目掛けて放った。
『ギャアアアア!』
強力な怪獣シュランゲや狡猾なシュランゲ星人を倒したハイパーガールは宇宙の彼方へと飛び去った。
「ごめんなさい…私達のせいで、こんな事に…。」
あの女が目に涙を浮かべながら裕達ATTACKの隊員達に詫びた。
「仕方ないよ!君も騙されたのだから。」
裕や秀夫が彼女を宥めていた。
そこへ…
「裕ーっ!」
シュランゲ星人に捕まった春美がみんなの所に帰って来た。
「春美!」
裕はヘルメットを取り、春美の所に駆け寄った。
ところが…
「裕のバカ!」
春美は右手の平で裕の頬を平手打ちにした。
「い、痛ってーっ!何で殴るんだよ?」
「あなたって何回同じ事言えば分かるの?あれほど無茶しないでって言ってるじゃないの?そんなに自分の命を粗末にしたいわけ?」
春美は両目から大粒の涙を流しながら裕に問い詰めた。
「何回も言ってるだろ!人助けが仕事だって!」
「自分を危険に晒してまで他人を助けるのが仕事?誰が決めたの?」
「別に…決めてなんかは…。」
「何度も言ってるでしょ!人の命は一つしかないって!あなたが居なくなったら私、私…どうしたら良いのよ…バカ!バカ!バカァ!」
春美は両手の拳で裕の厚い胸板を何度も叩きながら、やがて顔をその胸にうずめ大声で泣いた。
「…ゴメンよ。わかったから。泣くなよ…。俺、他人に泣かれたら何も出来なくなるだろ…。」
ようやく涙が止まった春美が顔を上げ、裕の近くに居たあの女の所に歩み寄った。
「あなたも本当は寂しかったのね。」
「ごめんなさい…あなたをあんなに危険な目に合わせて、任務とは言え、ごめんなさい…。」
「でも、もういいわ。あなたはもう工作員じゃないのだから。もう、自由なのよ。」
「ありがとう、ありがとう。でも…私…地球じゃ生きて行けない!」
「心配しなくていいぞ!朗報だ。」
碧がたった今、ATTACKの世界本部から受けた内容を知らせた。
シュランゲ星の艦隊が女を引き取ると申し出てきたからだ。
シュランゲ星人もあの狡猾な司令官のみが侵略好きで、本来の平和な彼らは、司令官の暴走を阻止するべく、地球に派遣されたのだ。
戦いが済んだその日の夜、基地の近くにある公園に来た春美と裕は小高い丘の上から夜の星空を眺めていた。
「春美、シュランゲ星ってどの方角かな?」
「あっちの方よ。」
「今頃、レーミィさん、シュランゲ星に着いてるかしら?」
「レーミィさん?誰?」
「あの女の人の名前だよ。彼女が帰る前に名前を聞いたんだ。」
「裕って、あの人が好きなんだ!」
春美が唇を尖らせて拗ねた。
「お、怒るなよ!名前が知りたかっただけだからさ。」
「別に怒ってません!」
と言いながら春美は裕から顔を背けた。
「名前を聞いただけだから、他には何も無いよ。」
「ウフフ、冗談よ!裕ったら、私が拗ねただけで慌てるから、カワイイ。」
「からかうなよ、カワイくない奴だな!」
その時!
「痛てっ!」
春美が右手で裕の左手の甲をつねった。
「何すんだよ!」
「私、まだ許してないから!」
「一体、何に怒ってるんだよ?」
「何回も言ってるでしょ!無茶しないでって!私がどんなに心配してるかわかってるの?私がいつもどれだけハラハラしてるかわかる?」
「仕方ないだろ!誰かがやらなきゃ!」
「やり方ってもんがあるでしょ!自分の命を無駄にしないでよ!」
「無駄にも何も、別に俺は死にたくてやってる訳じゃ…。」
裕の台詞を遮るかのように、春美は右手の人差し指を裕の顔の前でピンと伸ばして、裕を黙らせた。
「『もう二度とあんな無茶な事はしません!』と約束して!」
「はぁ、何を偉そうに?」
「約束しなさい!」
声を荒げる春美に裕はビクッとしてから黙った。
「…わかったよ。…お、おい…。」
裕が渋々納得した時、春美は思わず裕に抱き付き、裕の胸に顔をうずめた。
「裕、今日は助けてくれてありがとう…。あの時、私、怖かった…もう死ぬんじゃないかって…。だから、だから…裕には死んで欲しくない!いつまでも私の傍に居て!お願い。」
涙混じりの春美の声が、裕の心を揺さぶった。
「約束するよ!だからもう泣くなよ。」
「…裕。」
春美は瞳に大きな涙を溜めながら顔を上げた。
ところが…
「許さない」
春美の表情が再び険しくなった。
「レーミィさんが現れた時やレーミィさんが病院で騒いでた時、裕、私じゃなくて彼女を庇ったのかどれだけ悔しかったか!」
「今度は何を言い出すんだよ?」
唇を尖らせた春美が怒り口調で話す。
「だいたい、裕は誰にでも優しすぎるのよ!それがあなたの良いところだけど、だから、人のために自分を犠牲にしたり、他の女の子を助けたりするのよ!」
「別に良いことだから、怒こるとこじゃないだろ!」
「怒るわよ!裕にとってはレーミィさんに優しくしてるのは当たり前でも、私にとってはどれだけ辛かったか分かる?」
春美はキッと両眉を上げながら話を続けた。
「女の子は好きな人から『自分は特別だ!』って想われたいのよ!本当、裕ったら鈍感なんだから。」
(面倒臭いなぁ…。)
裕は春美の態度に困惑しながらも、自分の事を好きでいる春美の事が愛おしく想えてきた。
「今『面倒臭い!』って思ったでしょう。」
春美はハイパーガールと同調してから、裕やひとみと言った仲の良い者の考えている事が読めるようになっていた。
だから、裕は春美に対して何も隠し事は出来ない。
「お、お前、俺の心の中を覗くなよ。」
「単純なんだから。」
(ウフフ…、裕に対する恋の主導権は女である私がきっちり握っておかなきゃ。それに、何回言っても無茶な事をする裕だから、普段から私の言うことを聞くようにさせないと…、私の大事な人だから、私がちゃんと面倒を見なきゃ、ね。)
自分の大切な人だから、春美は裕を想う気持ちを胸に秘めていた。
「だったら『私の事を特別扱いしてます!』って証拠を見せてよ!」
「しょ…、証拠って?」
「ウフフ、バカねぇ…、こんな事も知らないの?」
春美は瞳を閉じ、さっきまでキツく尖らせていた唇を柔らかく尖らせて、裕の顔の前にそっと出した。
「春美…!」
『証拠を見せてよ!』
今日は同じ事を二回も聞かされるなぁ、と、今日の出来事を振り返りながら春美の肩を優しく抱き、春美の顔に自分の顔を近寄せた…。
『ウンンッ!』
そこに誰かの強烈な咳払いが聞こえ、2人は慌ててお互いから離れた。
「ひとみっ!」
「ひとみっ!」
咳払いの主は、顔を怒りで滲ませているひとみだった!
「ひとみ…っ、あんたいつからここに来てたの?」
「3人でこの公園からレーミィさんを見送ろうって裕が言ってから、同じ車に一緒に乗ってここまで来て、ずーーーっと1人でほったらかしにされても居ましたけど!」
さっきから裕と春美が2人だけの世界に入っていて、ずっと1人で置き去りにされていた上に、2人だけの熱いシーンを見せつけられて怒り心頭のひとみだった。
「裕っ!」
ひとみは話を続けた。
「あんたは誰にでも優しいし、それがあんたの強さなのよね。だから、春美が十字架に磔にされても勇敢にも助けに行けるし、宇宙人のレーミィさんの心を開かせられたのよね。」
「ひとみ…、今日は俺の事を誉めるのか?」
「勘違いしないでよ!私は春美の気持ちをわからない、誰にでも優し過ぎるあんたの事は嫌いよ!ちょっとは春美の事を考えなさいよ!」
「何も怒って言う事じゃないだ…!」
すると、ひとみも先程の春美と同じ、右手の人差し指を裕の顔の前でピンと伸ばした。
「『これからは春美を泣かせません!』って約束しなさいよ!」
ひとみはさっきの春美と同じく、裕に約束を迫った。
「それ、さっき春美がしたのをパクっただろ!」
「うっせー!約束しろっつってんのよ!」
ひとみが一歩前に出ながら険しい表情で裕に迫った。
迫力に気圧された裕は一歩後退りしながら。
「わかったよ、約束すりゃあ良いんだろ!」
「あんたって生意気よね!でも許す!今日のあんたは格好良かったから。」
「ひとみは俺や春美と同期隊員なのに、上から目線だな!」
ひとみの気迫に負けた裕だった。
「でも、何だかんだ言って、何時もの私達に戻ったみたいよね。」
裕とひとみのやり取りを可笑しく見ていた春美が言った。
「そうだね。」
裕が同調した時
「ふーん、そうかしら?」
ひとみが横槍を入れた。
「春美が変身した時に裕を1回胸に抱きかかえたでしょ。本当は裕、あの時ハイパーガールの巨乳に全身を埋められて嬉しかったんじゃないの、男はみんなスケベだから!」
「わ、ひ、ひとみ…、お、おま…。」
裕はひとみの一言に顔を一気に赤く染め、なおかつ、しどろもどろになって何も弁解出来なくなった。
「もぉーっ、裕のエッチ~!」
「い゛、痛で~!」
再び春美が裕の手の甲を思いっ切りつねった。
(ビンタに、『証拠を見せてよ!』に、『約束して!』につねられたりとか…今日は同じ事が2回も続く日だな!)
裕は強烈な痛みに耐えながらも、また今日の出来事を振り返った。
いつしか、再び笑顔に戻った裕や春美達は公園を後にした。
唯1人…
(私の大事な春美を奪った裕が許せない!何時も春美とイチャイチャして!春美も春美で裕と仲良くし過ぎよ!私だって裕が好きなのに!)
何と、ひとみはレズだった!
ひとみは入隊の日から同期の春美に一目惚れをしていた。
更にややこしい事に、ひとみは裕の事も好きなようだ。
ひとみは自分の中だけで成立している普通の人では理解できない三角関係にイライラしながらも
(何時か裕から春美を奪って…それから、裕も…!)
運転中の裕と助手席の春美が楽しく会話してる中、後部座席で1人嫉妬のドス黒い渦の中心にいたひとみは、苦虫を噛みしめたような顔をしながら前の2人を睨み続けていた。
幸か不幸か?普段なら裕やひとみの心が読める春美だが、裕との会話に夢中なのか?このひとみの怨念にも似た怒りの気持ちだけは読めなかったようだ。
地球の平和を守るため、ATTACKやハイパーガールの活躍はまだまだ続く。