[共産]プラスマイナス
痩せぎすな男は黙々と働く。
晴れの日は畑の手入れをし、雨の日は暗い部屋で内職を続ける。
大柄な男は働かない。
そのよく回る舌の半分も体を動かさない。
晴れていれば女に声をかけ、雨が降れば寝て暮らす。
しかし、この二人に収入的な格差は無い。
それが共産主義というものだ。
平等の大義名分のもとに、働かざるものでも食べてゆける。
だが、共産主義は崩壊した。
広がり続ける資本主義に飲み込まれていったのだ。
そこからこの二人の生活は逆転していった。
痩せぎすの男は働けば働いただけ豊かになったし、大柄な男は仕事というものに慣れず、その日食うものにさえ困るようになっていった。
痩せぎすの男はそこそこ幸せな生活を送り、結婚し、二人の子供をもち、孫の顔を見る前に死んだ。
大柄な男は最後は乞食にまで身を落とし、誰に知られるでもなく、いつの間にかいなくなっていた。
努力は報われる?
怠け者は身を崩す?
そんなことが言いたいのではない。
人生は、いや。
『人類は』共産主義だ。
同じ分だけ生まれ持った幸福を、一生をかけて使い切っていく。
だからこそ、こう言いたい。
どう生きるかは貴方次第。
そして貴方はどう死ぬのですか?