表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/16

[天命]イヤホンジャック

イヤホン付けっ放しの奴っているじゃん?

店だろうが、誰かと話してようが、ずーっと付けっ放しの奴。

俺もちょっと前までそうだったんだよ。

まあだから何って話でもないんだが、ちょっと面白い話があるんだよ。

聞かないかい?え?聞かない?

んな事いうなよー!ちょっとした世間話なんだから、さ。


……ごほん。

それでなんで付けっ放しかっていうとだな、声が聞こえるんだよ。

……ああいや、歌声だとか、ラジオの声とかじゃない。

そのまんま、話し声だ。

語りかけて来る、な。

あ、怪しんでるな。

というか俺の精神状態を疑ってるな?

わかるわかる。

その気持ちはよーくわかる。

ま、別にそう思われてもいいんだ。誰かに話したいだけだから。

最後まで付き合ってくれよ。


それで、そう。声だな。

これは俺の場合になるけど、ちょっと前から気になってたラーメン屋に行こうとしたんだが、どうにも奥まった所にあってな。

有り体に言って、迷ったわけだ。

仕方ねー引き返すか、と思った瞬間、イヤホンから音楽が途切れて、声が聞こえたんだよ。

『そこ、左です』ってな。

そりゃあびびったさ!

声も上げた!

その声が言うには、自分は神の使いで、俺は選ばれたから何かと優遇しましょう、みたいな、まあ、そんな感じだ。

正直、うさんくさかった。

……んだけど、どうせ迷ってるなら従ってみてもいいか、近くにはきてるはずなんだ、と思ってな。

その声が言うとおりにふたつみっつ角を曲がったのさ。

するとそこに!

あったのさ!お目当てのラーメン屋が!


あ、大したことないって思ったな?

んなもん携帯の地図でいいだろって?

甘いな。これからなんだよ。

それから俺は声の言う通りに過ごした。

宝くじも当たったし、彼女もできた。

テストは予め範囲を知ってたし、もうやりたい放題さ。

どこどこに行きたい、と言えば、

『そのまままっすぐ……ここ右です。

通行人に気をつけて』

みたいな具合に、ナビゲートしてくれんだ。

便利だろう?


……でもな。

ある夜、コンビニに行ったんだ。

その途中で、イヤホンがずり落ちた。

まあ、拾うよな。

拾うために俺は屈んだ。



すると、俺の頭すれすれをトラックが通ったんだ。



髪の毛が数本持っていかれた。

俺はそのままで固まったね。

イヤホンを耳にはめる直前で。

すると、聞こえてくんだよ。

『しくじった!』

って。


……ま、それ以降、俺はイヤホンを付けてない、いや、付けられないんだ。

だって、いつ殺されるかわかったもんじゃねぇもんな。



あの声はなんだったんだろうな。

神の使いってのは嘘で、悪魔だったかもしれないし、妖怪みてぇなもんかもしれない。

……でも、俺は案外そこは本当かも、って思うんだ。

ほら、俺はあんまりイイコじゃなかったからさ。

まー、社会的に見て、有益だったとは思えない。

そんな人間にいちいち世話を焼くか?

俺はそんなことしないね。

だからこう思ったんだ。


カミサマは、要らない人間を間引いてるんじゃないか、ってな。

ほら、生贄は、殺す前に美味しい目に合わせてやるものだろう?



……最近、不自然な事故多いよな。

まあ遭わないに越したこたあないが、もし見かけたら、そいつがイヤホンしてるかどうか、確認してみろよ。

そんだけだ。

聞いてくれてありがとよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ