水晶の王女様って…俺?
感想どうも、少し遅くなりました。短めです。
『お母さん!ご本読んで!』
『あらあら、じゃあ今日はこれにしましょうね』
『なにそれ?』
『これは"水晶の王女様"って言う本よ』
『すい…しょう?』
『そう、とってもキレイな宝石のことよ。じゃあ読むわね』
『うん!』
『昔々それはうーんと昔。水晶の王女様は生まれました』
『王女様は凄い力を生まれつき持っていて生まれるとすぐに王女様は自分の世界を作りました』
『王女様はきらめく白い髪に赤い宝石のような目をしていました』
『王女様は自分の世界でとっても長い時間暮らしました』
『王女様はある日ふと思いました。外の世界が見てみたい、と』
『そして王女様は旅に出ました』
『それでそれで!王女様はどうしたの!』
『ふふふ、それでね…王女様は…』
王女様は……王女様は……
「ん…」
目が覚めて最初に目に入ったのは傾いた木々だった。
「夢?」
随分懐かしい童話の夢だったなぁ、私が小さい頃に一番好きだった話。
水晶の王女様が色んな世界を旅する話で最後は…最後は…どうなるんだっけ?
私が物語を思い出そうとしていると頭がついてる地面が柔らかい事に気付いた。まるで膝枕されてるような感触が……。
私が何気なく上を向くと白くて丸い山が2つあった。
「え?」
「おはよう寝坊助ちゃん」
私が困惑していると山の向こうから凄く透き通ったような女性の声が聞こえた。
私が身体を起こして後ろを向くと女性がいた。
「…!?」
その女性は透き通るような白い肌に白銀の糸のように白く細い髪、更に赤い宝石のような目をした女性はまるで物語の水晶の王女様のみたい…。
でも…それ以上に目を見張るのがメロンでも入ってるような大きな胸…。
ふと、自分の胸に目が行った。
………………………………………違う…彼女が大きすぎるだけ…私は小さくない…彼女が(ぶつぶつぶつぶつぶつぶつ)
「(ぼそぼそ)巨乳なんて滅べばいいのに……」
おい…聞こえてるぞ、好きで巨乳になったわけじゃねぇよ。
そんな恨みがましい眼でこっちを見るな。
「お前、名前は?」
「巨乳なんて…え?あ、はい。私はリリウム・イーグルアイ・ベイオウルフです」
そう言うと彼女は手を前に合わせてペコリと頭を下げた。
いかにも育ちの良いお嬢さんと言う感じだ。
「そうか、どうしてこんな森の中に?」
「それはその…」
「キュリリリリ!!」
そこまで言った所で黒板を爪で引っ掻いたような声に遮られた。
「ひっ…クローラーワーム!?」
「クローラーワーム?」
後ろを振り向くとさっきの巨大毛虫がいた。
うえぇ……近くで見ると更にキモいな…全身を覆う針が忙しく蠢いてるし、頭から大量に触手のようなもの伸びてるし。
「ふむ、クローラーワームステータス」
貪り喰らうもの(クローラーワーム)
身体値:9000
魔力値:0
「ふ…戦闘力たったの9000か」
「なにいってるんですか!?速く逃げないと…」
ほら、なんとなく言ってみたいじゃん?ラディ〇ツ的な。
俺は右手の人差し指を指を巨大毛虫に向けた。
「光弾」
指の先に直径1m程の黄色く光る光の球が現れた。
「え…光魔法?」
「初歩の初歩だ。失せろ害虫」
光が俺の指から解き放たれた。
その瞬間、叫ぶまもなくクローラーワームの頭と直線上の木々を消しながら空へと消えていった。
まあ、形態以降しなければこんなもんか。
てっ…キモ!?頭無くなってもバタバタもがきやがる。
死ね!死ね!
バスンバスンと光弾を撃ち込むとクローラーワームの身体は地面と共に跡形もなく消えた。
「凄い…光弾であの威力なんて…」
俺のSAN値は大分下がったがリリウムちゃんは唖然とした様子でこちらを見ていた。
「とりあえず家までは送ってやるよ。俺も町まで行ければ…」
「あの!」
リリウムちゃんは俺の手を握ってきた。
「ん?」
「私を弟子にして下さい!」
「は?」
「私も光の魔法持ちなんです。は、恥ずかしい値ですが…ステータスを見てください」
「ん?リリウム・イーグルアイ・ベイオウルフステータス」
ちなみに当然のようにステータスを開いているが、相手のステータスを見れる条件は自分のステータスに表示される名前をフルネームで言い、その後にステータスと言うことだ。魔物なら種族名でステータスが見れる。
リリウム・イーグルアイ・ベイオウルフ
種族:人間
年齢:16
職業:学生
ランク:G
身体値:150
魔力値:220
スキル:
《駆け出し魔物使い》
《光魔法Lv2》
「低っ」
合わせても500いってないな…これは…その…御愁傷様です。
「ご、ごめんなさい。わ、私落ちこぼれで……」
リリウムちゃんはしゅんとして肩を落としてしまった。
いかん、美人は幸せになるためにいるのだ。
「弟子か…」
確かに、俺はLvと魔力値だけ見れば大賢者も真っ青であろう。
だが、だ。俺は生後5日半だ。ぶいぶい。
とは言え魔法だけはダンダリアンに叩き込まれたならなんとかなるな。
「俺で良いなら構わないぞ?」
「ほ、本当ですか!?」
リリウムちゃんは花が咲くような笑顔を浮かべた。
ああ、可愛い。これだけでご飯三杯は行けそうだ……ごめん三杯は無理、せめてキムチかメンマか妹の顔写真くれ。
そう言えば昔、『お兄ちゃん!ご飯は私が炊いたんだよ!でも炊きすぎちゃた…えへへ』って妹に言われた時はご飯だけで十杯は軽く行けたな。
「ありがとうございます!私には夢があるんです!」
「へー、夢?」
夢は良いことだな。うんうん。
「笑わないで下さいね?」
「笑わないよ」
「いつか童話の水晶の王女様に会うんです!」
「は?」
童話の水晶の王女様…?
「はい。童話ですけどずっと昔からこの森のずっと先に魔水晶世界が確かにあるんです!私は見たことはありませんがきっとそこにいると思うんです!それで…もし、居るなら水晶の王女様と一緒に旅がしたいんです!」
普通なら童話を本気にしてるメルヘン娘だと思うだろう…だがその森でちょっとまえに生まれた俺からすると間違えなくその童話の水晶の王女様って俺の事だろ!?
「そうか、それならきっといつか会えると思うぞ?」
ユーの目の前にいますけどね。これじゃあ名前は明かせないな。
「え……笑わないんですか?」
「笑わないよ。お前は信じてるんだろ?水晶の王女様とやらを」
水晶の王女様?呼んだ?俺だよ俺。
「し、師匠は優しいんですね…」
師匠か、なんか良い響き…。
「ま、そろそろ町に戻ろうか?町ってどっち?」
「あ、はい!あっちです!」
俺とリリウムちゃんは歩き出した。
しかし…こんな森の中ので会った変な女の事を完全に慕うとは…リリウムちゃんは天然なのか?天然なんだな。萌えポイント1追加だ。
彼女の住む町に到着したのは日が傾いた頃だった。
次回は天然のリリウムちゃんの話です。