黒光りするカマキリ
皆さん感想ありがとうございます。ドレスの着方ですか…どうにかします!
「しかしなんて身体能力だよ…」
投げ飛ばしてリアルにキラーンってなった本を2日掛けどうにか回収して四次元巾着(仮名)にぶちこんだ後、このクリスタルの森を抜けようとひたすら同じ方向に走り続けているのだが木が凄まじいスピードで前から後ろに移動していく、バイクで並木通りとか森の中を激走するような感覚だ。
まあ要するに凄まじく速い、時速150Kmぐらい出てそうだ。
しかも日の傾き方てきに半日はずっと走っているのに息切れひとつしない。
だがこの身体の凄まじさはそれどころではない…ふざけた事になんとコレで小走りなのだ……全力疾走したら一体なんキロ出るんだか、木にぶつかったら痛そうだからしないけどな。
「おっ!」
目の前に前世で見慣れた平原が見えた。
やっとクリスタルの森を抜けた。
そして俺は勢い良く飛び出すと平原に降り立った。
ふふふふふ……ついに。
「大地だ…俺は帰ってきたぞぉぉ!!」
………………………………………。
…………………………………。
…………………………。
特に意味はないぞ?
うん。べ、別になにか反応を期待した訳じゃないぞ?…………………コラッそこのなんかよくわからん小動物!そんな憐れなモノを見る目でこっち見んな!
小動物相手に1人漫才をしていると突然、日が遮られ俺を後ろから影が覆った。
「なんだ?」
ふと振り向くと5mはあろうかという巨大な黒いカマキリが俺を頭上から見下ろしていた。
振り上げられた巨大な鎌がキラリと光った。
なんだカマキリか、取り敢えず出たけど人里はどこだろう?正面には平原が広がるだけだし後ろにはクリスタル森とでかいカマキリがいるだけだ……………ん、カマキリ?
「………………カマキリ!!?」
俺が再び後ろを向いた瞬間に鎌が降り下ろされた。
あ、死んだわこれ。
あーあ、せかっく転生したのにな……ごめんなさいお母様、お父様、妹様、糞神様。親不孝テイクツーな息子(?)をお許しください。次生まれ変わるなら男で魔王になりたいです。後、次は最初に巾着や貯金箱だけじゃなくお金も欲しいな。それから妹よ愛してるライクじゃなくてラブの方で。
そこまで考えたところで俺に鎌が降り下ろされた。
「ふあっ…」
スポッ。
変な声と効果音が出た。
「あぅ…やめ…」
ふよんふよん。
確かに鎌は俺に刺さっていた…………胸の谷間に。
挟まった鎌を引き抜こうとカマキリが暴れるがなぜか俺の身体は全く動かないので胸を揺らすだけの行為になっている。
身体と服は傷ひとつないが男としての尊厳がガリガリ削り取られるのを感じる。
ブチッ…。
俺の中の何かがキレた。
「………この………この糞虫野郎ぉぉ!」
俺は片手で胸を庇いながらアッパーを放った。
「ギギュッ…!?」
ズドン!!
小さな断末魔と轟音を上げながらカマキリの頭が空高くぶっ飛んで雲に隠れ見えなくなった。
頭を失ったカマキリの黒い巨体は力無く俺に向かって倒れこんできた。
「寄るな大型昆虫!」
俺は谷間から鎌を抜くと背負い投げの要領で後ろに投げた。砂煙を巻き上げながらカマキリは地面に転がった。
なんて生き物だ……まさか人様の胸
を揺らすだけの虫がいるとは……カマキリ恐ろしい子。
「全く……ん?」
カマキリの死骸を見ると死骸が急激に収縮しボーリング球程の黒い宝石になった。
「なんだこれ?」
拾い上げてみるが特に変化はない。
そうだこういう時の……。
ちゃらちらっちらーん、攻略本。
「魔物魔物っと…えーとなになに魔物を損傷を少ない状態で倒すと魔結晶石になる事があります。魔結晶石は装備の材料にもなりまた非常に高く売れます。魔物図鑑のしたの方を見るとドロップアイテムや魔結晶石が書いてあります。魔物図鑑?さっき白紙だったような…」
ぺらぺらとめくると俺以外の絵が描かれたページが見つかった。さっきのセクハラカマキリが両鎌を上げ威嚇している絵が書いてあった。
《スティンガー》
ランク:A
討伐難度:S
系統:マンティス系
ドロップアイテム:
魔石スティンガー
黒マンティスの鎌
黒マンティスの脚
黒マンティスの装甲甲殻
スティンガーの卵巣
《概要》
マンティス系の最上位種、通称黒マンティス。巨体に似合わぬ機敏な動きと鋼鉄をもチーズのように切り裂く鎌を持ち全身が金属のような質感をしておりかなり固く魔法耐性もある。弱点は柔らかい腹。
また、蟻蟷螂とも呼ばれ通常のマンティス種と違い蟻のように女王を中心としたコロニーを地中に形成している為、某お家の中の悪魔ことG様の如く一匹いたら百匹は軽くいると思っていい、ランクより討伐難度が高いのはそのせい。
ちなみに黒マンティスの卵巣は非常に珍味、ビールに良く合う。身体の方は柔らかい腹の部分を素揚げでからっと揚げで塩だけで食べるのがオススメ。強火で良く火を通せば固い殻もパリパリして食べやすくなる。
…………………ん?途中から料理本になった?と言うか食えるんだあのカマキリ、そういえばいつまで経っても空腹が来ないなこの身体、あと睡魔と疲れも、なんたるチート。
ふと本に向けていた視線を平原に戻すと横一列にキレイに並んだ数十匹のスティンガーがコチラを見ていた。
おや?まだ説明に続きがあるぞ?
《注意》
一匹殺すとそれから流れ出た体液によって周囲にいる仲間を呼びます気をつけて下さい。
「って手遅れ!?」
「キシャァァァ!!」
スティンガーは俺の声に合わせるように雄叫びを上げると一斉に進行を開始した。
距離は約500mってとこだろうか?いずれにせよ俺絶体絶命である。
取り敢えずさっきダンダリアンに叩き込まれた魔法でも使ってみようか。
魔水晶女王(俺)の魔法は魔法を使う前にすることがある。まず形態を変えることだ。別にしなくても使えるがダンダリアン曰く魔法を最高威力で使えるらしい。
「えーと…火形態」
そう唱えた瞬間俺の髪の色が紅に変わった。
「すげー変わった」
まる炎髪赤眼のう…おっとこれ以上は言えないな。まあ、あのうるさいうるさいうるさいの娘とは似ても似つかないけどな、主に体型が。
おっと、触っている場合じゃない、さっさと魔法を撃たなければ。
どんな威力になるか知らないが一発で一匹ぐらい倒せるならもうけもんだ。最悪全力疾走して逃げればなんとかなるだろう。
俺はカマキリの波に向け手をかざした。
「火球」
俺が唱えたのは初歩の初歩の火の魔法だ。次の瞬間ての平に拳台の"白い火の玉"が現れた。
「白?ま、いっか……ていっ!」
野球ボールを投げるように火の玉を飛ばすと真っ直ぐと進んでいった。
そして、一匹のスティンガーの頭に触れた。
ズドオオオォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!
その瞬間、俺の視界は真っ白になった。