棘の山へ
感想どうも、そろそろ魔王VS魔王が書きたいですねぇ。
「……ひ、酷いのでございます…」
目の前にボロボロになって戻ってきたネメシスが伸びていた。
「ダ・マ・レ。精々1割殺しぐらいで済ませたのだからありがたく思え」
俺はネメシスを足蹴にするとヴィッセルさんとリリアナちゃんに向き合った。
「スドーさん…」
「ヴィッセルさんリリアナちゃん良く聞いてください」
俺はこれ以上ないぐらい真剣な顔をした。
「私の本当の名前は…、」
「クリスタル・ノヴァさんだね?」
「クリスタル・ノヴァでしょう?」
「そう…クリスタル・ノヴァ…あれ?」
…なんで知ってんの?
「な、なんで知ってるんですか?」
「一様気付かない振りはしていたが……だってほら……なあリリアナ…」
ヴィッセルさんは物凄くばつの悪そうな顔をした。
「何時も部屋の机の上にあるお姉ちゃんの絵日記に書いてあるのですよ~」
ぶふっ…リリウムちゃん…ちっとも隠し通せてない…。
「えっと…俺は魔王なのになんで…」
「リリウムがなついてるんだ。悪い人な訳がない」
「お姉ちゃんがなついてるんだから悪い人な訳ないのですよ」
「それにスドーさんが居なくなってはあの美味しい料理が食べられなくなってしまうしな」
「そうなのですよ~」
そう言うと二人ともドヤと言いたげな顔をした。
えぇ…そんな顔されても……俺が間違っているのか?人間の魔王の間の溝なんて2mmぐらいなのか?ひょっとして人間は魔王に対してウェルカムコーヒーを出す店並に非常にウェルカムなんだろうか…。
突然、蘇生したネメシスから肩に手をポンと置かれた。
「大丈夫でございます…スドー様は何も間違ってございません…この家が特殊なのでございます」
何か悟ったような顔で言われた。
「そうか……」
もう復活したのかこの痴女は…。
「話は後で、まずリリウムちゃんを助けに行きます」
俺は空中にジャンプして高く飛び上がると空に止まった。
最近気付いたんだが、俺……生身で空飛べた。
まあ、良く考えれば全身が魔水晶で出来ているから俺自体も飛べたわな。
更に全身に魔力を溢れさせると、身体が淡く光り、着ていた服は生まれた時に着ていた手足が甲冑のドレスに変わっていた。
身体に魔力を流せばこの姿になると気付いたのはメイド服生活1週間目の日である。
「待ってろ、リリウムちゃん」
「待ってくださいませスドー様」
ネメシスは下から神妙な顔つきで声を掛けてきた。
「なんだ?」
「夕飯までには帰ってきて下さいませ♪」
「てめぇも来やがれぇ!!!てめぇのご主人様でもあるだろうが!!!」
俺は魔水晶の縄を造るとネメシスを縛り上げると、一瞬にして音速の壁を超えるギリギリの速度で棘の山へ飛んでいった。
後から死ぬとか体が千切れるとかなんて上級プレイとか言っている気がしないでもないが知らん、知らんったら知らん。
一方その頃、棘の塔ではクロノスローズは切り株のような机に向かいながら頭を抱えていた。
何故かドレスは着ておらず黒い下着姿で豊満な胸を露にしていた。
「嘘でしょぉ………私これでも何千年も前からずーーーっと生きているのよぉ…コレだって得意なのにぃ…それなのにぃ…それなのにぃ」
切り株の向かい側にはニコニコしたリリウムが座っていた。
勿論、服は着たままだ。
「えへへー、ローズさんの番ですよ?」
向かいながらしていたのはなんと…、
チェスだった。
「なんで一度も勝てないのよぉー!!!せっかく裸に剥いちゃおうと思ったのにぃ…」
否、脱衣チェスだった。
盤を見ると白の駒に黒のキングが完全包囲されていた。
誰がどう見てもチェックメイトである。
「ローズさんよわよわですねー、もう脱ぐものが無いですよ?」
「嘘っ!?100年は無敗だったのにぃ………」
リリウムは屈託のない笑顔で言ったが、無垢な笑顔から告げられたそれはクロノスローズの心に塩を塗りたくるのだった。
「なら今度は将棋よぉ!」
クロノスローズは何処からともなく将棋と書かれた箱を取り出した。
「良いですよ、私ボードゲームは結構強いんですよ?」
「今度こそぉ…は剥いてみせるわぁ!」
そう言うとクロノスローズは一瞬光り、元のドレス姿に戻った。
切り株の隅にはこれまでしたであろうトランプやら花札やらジェンガやら様々なパーティーゲームが散乱していた。
ちなみに、どちらが圧勝したかはご想像におまかせする。




