始まりはTSと共に
一面、クリスタル、クリスタル、クリスタル、床から壁、天井に至るまで様々な色のクリスタル覆われた洞窟の中の一番奥で光る10m程の逐お鏡の前で俺は鏡のように銀色のクリスタルの前で立ち尽くしていた。
「ははは……確かに強い身体にしてほしいとは言ったさ…………」
鏡には顔を引き釣らせた17~18歳程に見える謙遜しても美人、贔屓目に見れば絶世の美女がそこにいた。
「だが……………」
新雪のように白く柔らかい肌。
精巧な人形のような完全なプロポーション。
メロンかボウリング球でも入っているのではと思うような豊満なバスト。
170を越える身長。
地面につくほどの艶のある白の長髪。
深紅の瞳はルビーのような赤々とした光沢を放っている。
こんな美人がいたら俺は間違えなく
ファンになるだろう……だが。
「これはないだろぉぉぉぉ!!!!?」
その美人は紛れもなく、ただの男子高校生だった俺そのものだった。
「少し…いやかなり錯乱した…状況を纏めよう……」
鏡の中のあるびの美人(俺)はorzの体勢から顔だけ上げて死んだような目で鏡を見つめていた。
そんな姿勢でそんな顔するなよ……美人が台無しだぜ?………………ぐすん…泣いてなんか無い…鏡の中の美人が泣いているだけだ…俺は泣いてない……ぐすん…。
俺は所謂転生者という奴だった。
色々…うん…それはそれは色々あり豆腐の角に頭をぶつけて死んだ俺は神様の手違いという見事なテンプレで1つだけ転生特典付きの転生を果たした訳だが、今思えばその時に頼んだ転生特典がマズかった。
"強い身体…後、魔法とか使ってみたいな"
そう頼んだ……え?1つじゃない?気にすんな。
男女の指定ぐらいしておけば良かった……これじゃあ性同一性障害じゃないか………………………ぐすん…あれ?頬をなみ…違う…違うこれは塩水だ!断じて涙ではない!………………もうやだ死にたい……。
「ひっく……ひっく…ううう…」
止めろよ、美人を泣かせるなんて最低だぜ?…チクショウ……。
いつまでも泣いているわけにもいかないのでとりあえず生きることにした。
もういいや……………性同一性障害の私は頑張ることにするわ!……………………………ダメだ…女言葉と一人称私とか無理だ。
「しかし…ここはどこだ?」
あ、声が多少高くなってる。
それはおいといて一体この空間は何だろう?壁床天井一面クリスタルで覆われやたらに光っている。
ん?
「な、なんだこのエロい服は?」
よくよく銀に映った自分を見てみるとやたらにデカイ胸をザックリと開け谷間が非常に強調された髪と同じ白のドレスに手足に白銀の籠手とレギンスを装備していた。
なんというか…見れば見るほどゲームか何かのボスキャラのように見えてくる。さながら何かの女王的な。
「……とりあえず普通の服が欲しいな」
女王様はどうだか知らんが俺はこんな服では外を歩けません、せめてジーパンとカッターシャツを求む。
「とりあえずここから出るか」
「おお…光だ」
輝くクリスタルのせいで目に毒なほど明るかった洞窟を10分程かけて歩くとやっと光が見えてきた。
さて、外の景…色……は……。
「……………ふふふ…まさかとは思ったがな…うふふふふふ…」
え?突然どうしたか?だってさ、まず"太陽が青い"んだぜ…。
うん、真っ青だ。超ブルーだ。それに周りを見渡すと様々な色のクリスタルの地面に草花に木に虫に鳥や小動物だらけだった、と言うよりも全ての存在がクリスタルで出来た世界が広がっていた。
………間違えなく異世界だ。
「なんだよここは……」
まさか性別を変えられるだけではなく異世界にまで飛ばされるとは………魔法とか使ってみたいなって言ったのがマズかったか…魔法?
「魔法かー、何か使えるのかな?」
んー…ステータスとか見れたら楽なのにな。
そんなことを考えていたら頭の中にモヤモヤと思い浮かんできた。
魔水晶女王
ランク:SSS
身体値:530000
魔力値:530000
スキル:
《魔水晶女王》
《魔水晶魔法Lv99》
《火魔法Lv99》
《水魔法Lv99》
《風魔法Lv99》
《土魔法Lv99》
《闇魔法Lv99》
《光魔法Lv99》
《魔王》
《女王道》
《魔水晶生命創造》
《迷宮創造》
……………なんだこれは…53万?俺はフリ〇ザか。
スキルもやばそうなものしか無いんだけど?水魔法に闇魔法に光魔法はまだ解るが魔水晶魔法ってなんだ?
「魔法ねぇ…責めて使い方を知りたいな」
「お困りのようだね?」
近くからかなり低めの男性の声が聞こえた。
「ん?」
俺は背後から声を掛けられたので振り向くとそこにはなにもいなかった。
「あれ?今声が…」
「ここだ、足元だよ」
「足元?」
下を見てみると古めかしい本が落ちていた。
薄めの辞書程のサイズのそれは黒緑色の表紙にギロギロと動く紅色の目玉が1つついた異様な本だ。
「そうだ、拾ってくれないかね?」
「あ、ああ…」
「カッカッカッ。随分と綺麗な娘な事だ」
拾い上げると本は笑いだしカタカタと震えた。
綺麗とか娘とか言うなバラすぞこの野郎。
「おっと、それは怖い。失敬失敬」
そう、おどけて話す本には一切の反省の色は見受けられない。
あれ今声だしたっけ?
「私には他人の心が読めるのだよ娘よ」
「心が!?なんだよお前は…って娘っうな!」
「おっと、名乗るのがまだでしたか。私の名は"ダンダリアン"。世界の観測者として君の知識となることを使命されたモノだよ」
世界の観測者?使命?なんの話だ?
「まあ早い話、チュートリアルと攻略本と図鑑がセットになって本屋で2500円ぐらいで売っている完全攻略本だとでも思ってくれ。ちなみに神からの贈り物だよ」
「うん、凄く良く解った」
あれか、本屋の会計の近くの棚に置いてあるこのネット社会で誰が買うのか解らない絶滅危惧種のゲーム攻略本の異世界版か。
「うむ、そんなところだ。早速色々使ってみるといい」
そう言うと勝手動いて1ページ目が開かれた。
「え、読めってこと?」
「ああ、時間ならタップリあるのだから」
確かに今俺に一番必要なのは情報だ。
「………仕方ない、読むとするか」
~勉強中~
とりあえず、この世界について要約した事を話そう。
この世界は人間と魔人が共存して魔物なんかもいる世界らしい。
んで、魔界の人は魔人、人間は人間と呼ばれている。
そして人間は人間だけなのに対し、様々な魔人がおり例をあげると、人間に友好的なエルフ族やドワーフ族などが存在する。
それに対し敵対的な悪魔族や植人族なども存在する。
更に中立の淫魔族や天使族など様々な種族がこの世界には存在する。
そして何より忘れてはならないのが"魔物"の存在だ。
魔物とは所謂ゲームやマンガのように無差別に襲い掛かって来るあれだ。
自我は持たず本能的に魔力の濃いモノをひたすら捕食し続ける生き物だ。
魔物の幅は広く、踏んだ程度で潰れる弱さの魔物から単身でエルフが束で掛かっても撃退しか出来ないような魔物も存在し、魔物の実力はF~Sまでの段階評価で決まる。
だが魔物の中で極稀に出現する異常な力や魔力を持った強力な魔物も存在する。
そういった魔物を"魔王"と呼び現在魔界に256体いるそうだ。
俺の持っているスキル魔王がそれに当たるらしい……ということは俺は魔物かい、勇者に狩られたりして…がくがくぶるぶる。
それはそれとして、魔王は他の魔物と違い完全に独立した自我を持っている為、魔物を統べてよくあるゲームの魔王のようになっている魔王、ひたすら力を求めて強者を求める魔王、快楽的に特定の種族を殺害するものなど様々な魔王がいる。
まあ、共通していることは基本的にそいつらは他種族にとって天災でしかなく、ろくな奴がいないということだ。
「そんなところか?」
「ふむ、まあ及第点だ。追加するなら人間や魔人は上質な魔力を内包している為、魔物は優先的に人を襲うと言ったところか」
「なるほど…」
この本かなり使える、口が悪い事を除けばだが。
「お褒めいただき光栄だ。お嬢様」
そう言うとダンダリアンはカタカタと笑った。
「この野郎…また呼びやがって」
「まあ、それは置いておいて次はステータスの話をしようじゃないか」
「ああ…」
なんか流された気がするが仕方あるまい、さっきから話してて解ったがダンダリアンにはどうやっても口で勝てん、本当に何なんだこの本は?
「まず主のステータスのを確認しようか、どれどれ…ほう…SSSランクに53万…魔水晶魔法に全魔法とは…いやはや大した娘だ」
「一人で勝手に解釈するな。娘って言うな」
「いやはや、感銘を受けていたのだよ。53万など魔王の中でも指折りの高さだ」
「そうなの?」
「そうだな、例えを出すなら他のSSSランクの魔王の魔力と身体能力の平均値は20万ぐらいだ」
20万?…約2.5倍。
「俺ってヤバくね?」
「ああ、人外なんて生ぬるい言葉だな」
……本格的に人間止めたんだな…俺、今ならフリ〇ザのデス〇ームとかも撃てそうな気分だ。
「ふむ、デス〇ビームという物はわからないがビームならうてるぞ?それはそれとして魔法とスキルの説明を始めよう」
射てるんだ…。
「ああ…」
「魔法には火・水・風・土・光・闇の6つとそれに属さない固有の特殊な魔法が存在する」
と言う事は俺は大体全ての魔法を使えると言うことか。
「魔法は君の思ってるようなものだ。火魔法なら火球、水魔法なら水球などが初歩の魔法だ。そしてスキルレベルに応じて上位の魔法が解放されるのだ。ちなみにLvの上限は99だ」
「へー………ん?てことは俺って既に」
「究極魔法(Lv99)が使えるな」
なんたるチート…。
「話を戻そう、魔法とはそもそも……
ダンダリアンの話を聞きながら俺は異世界転生した事もTSしたことも既に大分適用してきた自分に気付くのだった…。
そしてこの時はまだこのダンダリアンの話が3日もぶっ通しで続くなんて考えてもいなかった。