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妖怪のいぶき  作者: 槐妖
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第五夜 「涙」

運動音痴な僕は小学時代、秋の運動会が大嫌いだった。

10月10日が近付くにつれ気持ちは落ち込み憂鬱な日々を過ごしていた。


ある日学校の帰り道、雑木林を抜け古い神社の横に差し掛かった時。

風化した石階段の所に綺麗な浴衣姿の女の子が目に留まる。


齢は僕と差ほど替わりないだろうか。

「ねえ、どうしてそんな暗い顔しているの」突然その娘に声を掛けられた僕は驚いた。


しっとりと澄んだ声。

学校の友達には居ないタイプ。

その彼女に何の疑いも躊躇もなく僕は応える。

「うん。もうすぐ運動会があるんだけど…嫌いなんだ。カケッコ苦手だしビリになるから、何時も雨が降ればいいって思ってて」

「ふ~ん。なら君の願い叶えてあげよっか」

「えっ、本当」

「勿論。私は此処の神社の娘、探萌さぐめよ。嘘は言わないわ。約束さえ守ってくれれば」

「僕、天野猛。どんな約束でもするからお願い」

探萌の約束とは、一生友達で居てくれだった。即座に承諾した。


結果運動会は雨で中止となり、その後探萌と友達になり神社でよく遊んだ。

ずっとずっと…

ぼろぼろで人気のない神社で…


あれから普通の人生を過ごして来た僕。

今更ながらあの頃を思い出す。

ピーッピーッと電子音が頭に響く。

薄れた意識の中、あの頃のままの探萌が病室内に居た。

僕はニッコリと笑って見せた…

「嘘つき。だから人間は嫌い…私の寿命と違いすぎっ」くるりと踵を返し立ち去ろうとした彼女の目に一粒の涙が光っていた。


僕の脳裏に先程見せた探萌の表情が焼き付き…電子音はゆっくりと消えていく。


外はそぼ降る雨。

探萌の涙と共に降り続く。




今回の妖怪:雨女、雨を呼び起こすことが出来る日本の女妖怪。

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