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第1話 恋心は殺意と共に落ちてゆく

「あのなぁ…もう勘弁してくれって」


目の前で起こっている出来事を見て、大きなため息をつく。

俺は朝海 慎也(あさみしんや)。ゲーム好きの、普通の高校1年生だ。


先程、新作のゲームソフトを買いに行こうとしていたのだが……


「ねぇ……私を置いていくの?…ふざけないでよ!!そんなの許さない…!」


一緒に住んでいる自称彼女のアリアに、現在行手を塞がれていてね。



彼女は白銀の長髪で、翡翠色の目を持ち、スタイルは文句なしの抜群。

一見すれば、モデルさんだと言っても違和感はないでしょ。


しかし。正体は、数年前に突如として家へ押しかけてきた元・アンドロイドなのだ。


なんでも国の実験体として、人間へと改造されたが、嫌になって脱走してきたとか…

人と同じく感情を持ち、人と同じように食べ物を摂取したり睡眠もとる。


寒いと思ったら暖かくするし、暑いと思ったら涼む。


俺も最初は、『アリアが昔はロボットだった』と言われても全く信じられない。

それもその筈。彼女は外見も体の構造も人間と全く変わらないからさ。


今の日本じゃ、AIは日常生活の基盤を築く物の一つとなっているけどね。

人の頭の構造が全部わかった今、AIが感情を持つのは当たり前となった。


それこそ10年ほど前までは、全く考えられないことだったけど。

まあ、すごい進化したよ。人類の進歩ってすごいね。


しかしAIが風呂に入った、食べ物を摂取した…と言った話は全く耳にしない。

唯一、目の前にいるアリアを除いてだな。


……さて、話を戻そう。俺はさっきも言ったが、本当に遊びたいんだ。


「……なぁ、そろそろ退いてくれんか?本当に買いに行きたいんだよ」


「…そんなの理由になってない!なんで私から離れようとするの!?」

全く、とことん話が通じないやつだ。


だけど、俺も感情的になったら逆に悪化するばかり。

ここは落ち着いて、冷静に諭すべき!


「別に、新作のゲームソフトを買いに行くだけさ。何がダメなんだい?」


「……別に私が買ってきてあげてもいいんだけど」


「え?買ってくれるん?……それじゃあ、お願いします」

アリアは、あっけらかんとしていたが、やがて微笑んで部屋から出ていった。


緊張した雰囲気の部屋が徐々に落ち着いていく。


俺は、体中から力が抜けていく感じがして、そのままベッドにどさっと倒れた。

仰向けになって天井を見上げる。


見慣れた白色の壁紙が、視界に入ってくるばかりだ。



(いつからこんな風になっちまったんだろうねぇ……)



俺はぼーっとしながら、頭の中で回想していた。


あの時は、大雨が降る日だったか。あの日を境に彼女は変わってしまった。

……それこそ、前兆みたいなものはあったよ。


その日の1ヶ月ほど前から、アリアが急に俺にくっつくようになってきた。

今まで俺を毛嫌いしてきた彼女が、俺を愛しき恋人のように扱う。


まるで畏敬の念を抱く対象だった猛獣が、主君に忠実な家来に変わったようだった。

そこから俺の身の回りで、異変が起きるようになってね。


初期は俺の筆箱や使っていた皿が、忽然と姿を消すぐらいの出来事だった。

そしてそう言った物は、共通して彼女が見つける。


これがお決まりの展開。ここ、テストにでるよ(出るとは言っていない)。


あの時こそ「よく見つけたな…」ぐらいの反応しかしなかったよ。

だって、そうでしょ?少しぐらい勘がいいとしか思わんもん。


その時に手を打っていればと、何度後悔したことか。


そこから段々と行為がエスカレートして行った。


最初こそ服やペンとかが姿を消す程度の物であったが、下着や俺の大事なゲームソフトが姿を消していくようになってね。


同時に、アリアの行動や雰囲気も変わっていったんよ。

これはある日、俺がアリアに黙って遊びに行き、夜遅くに帰ってきた時のことさ。


(寒いな…早く家に入らんと)


そう思って家の扉に手をかけた瞬間、とんでもない寒気を感じた。

中に悍ましい化け物がいる、そう言ってもまだ足りないほどさ。


勇気を出して扉を開けた瞬間。目の前に彼女が立っていた。

しかし、どこかおかしい。


腕には傷が入っており、リストカットをしたような跡が残っている。

服は着ておらず、大事な所が丸見えであったが、気にする余裕は皆無さ。


手には血が付着したカッターナイフが握られており、明らかに俺を刺そうとしているのが見えた。


「………これは関わっちゃいけないやつだな」


その日は、裏口から入って事なきことを得たが、いつ殺されるか分からないという思いにかられて眠りにつくことができなかったのさ。


その瞬間、俺はあることを思いついた。

何って?遺書を書くこと。我ながらなんとも素晴らしい名案だろうか。


「こういう系統を書くのは得意だからねぇ…」

そう呟きながら、ノートにツラツラと文章を書いて行く。


ちなみに、授業でよくある小論文などを書くのは無理だ。

書いたとしても文章は壊滅的。とても見れたもんじゃない。


しかしこう言った遺書系のものを書くと、文章が石油のように湧き出てきて、まるで文豪が書いたかのようなクオリティへと仕上がるのさ。すごいでしょ?


「こりゃすごい……やっぱ、我ながら最高の仕上がりだな」

そして、遺書もどきを書き終えると溜まっていた疲れが津波のように押し寄せる。


眠気に勝てなくなった俺は、ろくに隠しもせずにベッドの上に倒れて、そのまま眠りについてしまった…。


その行為が後に、文字通り地獄と化す事になるのは知る由もなかった。

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