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認知症学会④「鳥たちの王、朱鷺」

玄関から家に入った.海丸くんとアテナと、デメテル母さんは、「お邪魔しまーす」とホイホイ中に入っていく.はるなと静香が、ボーとして腑抜けのような顔になって、ふらふら奥に入っていった.これはわかる.だって、ドクトルに奥さんがいるなんて、誰が想像できたでしょうか、と言う話である.しかし、この二人の他に、ルシフェルも腑抜けのようになってボーとしている.しかし、顔が少し赤い、そして表情がニヘラニヘラしている.目がハートマークに見えなくもない.


「え、まさか、ルシフェル・・・」デメテルは少しピンときた.

「え、まさか、親父・・・・」アテナもピンと来た.

「え、まさか、おじさん・・・・」海丸くんも、ほぼ毎日、ルシフェルおじさんに会っているからもちろん、ピンと来る.


なんと、ルシフェルは、ドクトルの奥さんに一目惚れしたようである.


ドクトルは意味がよくわからない.

あの3人がわかるということ、ルシフェルのこの症状を理解するには血のつながりが必要ということなのかもしれない.

「まあ見てなって」デメテルがいう、

「自己紹介の時になんていうかであいつ、わかるんだよ、好きになった子には、絶対俺は悪魔のルシフェルでえ、どうでえ、かっこいいだろう、変身してみてやらあ、なんて乱暴なこと言わないから・・・」


玄関から上がってロボットみたいなカチこちの歩き方で、客間に通された.


「あ、あの私、ドクトルくんの親友の、ゼウスというものです.ご存知でしょうが、オリンポスというギリシャの神話の世界では、最も偉い最高神、ということになっています、はい」


ドクトルの奥さんは予想通りというか、当然、キョトンとしている.


「はあ?」なんじゃそりゃ?地獄の帝王で堕天使の首領のルシフェルで、悪の元締めじゃなかったっけ?


なるほど、ルシフェルの自己紹介、完全に相手を選んでいる.そういえば、はるなに自己紹介した時には、ゼウスって呼ばれるよりは、ルシフェルって呼んでくれって確か言ってたよな.


デメテルの母さんはもちろん、海丸くんやアテナの最高神の性癖を知り尽くしていたということか.


「娘が二人とも家を出て私がこの家で一人暮らしをしているもので、4人家族が4カ所で生活です.なんか勿体無いですよね」といいながら、ドクトルの奥さんは、客の部屋割りをする.


海丸くんと、あんた(ドクトル)は、この居間で寝てください.

アテナさんと、デメテルさんは、海にむいた部屋、

はるなさんと静香さんは、公園向きの部屋.洗濯物はすぐ片付けますね.

鬼丸さんは、申し訳ありませんが、2階の真ん中の部屋、上の子が使っていた部屋で一人で寝ていただけますでしょうか?


お風呂は2階にあるんですよ.隙間風、まだ大丈夫なんですけど、冬は結構寒いかもしれません

一通り案内してくれる


夕ご飯召し上がります?

夕方、結構遅い時間にタレカツ丼を食べてきたのだが、アテナは真っ先に、

「いただきます!」


夕ご飯、煮込みハンバーグ、トンカツ、鳥の唐揚げと、サラダである.こんなものしかありませんけど.ご飯が美味しい.煮込みハンバーグは奥さんの自慢の料理らしい.


ドクトルだけは、淡々と食べている.皆は美味しい美味しいと食べた.

ルシフェル、別館で食事する時もあまり美味しいなんて言わないくせに、ここでは「お、これはうまい、煮込みハンバーグ、ソースがシチューみたいで、トマトの酸っぱさがあまり感じないな、お、こんなうまい唐揚げ初めてだ、おお、何とこのご飯、何?コシヒカリっていうんですか、いやーこんなうまいご飯初めて食べました、炊き方がいいのでしょうかね」と奥さんの料理を褒めちぎっている.


食後にはテーブルを皆でお茶を飲んでいる.りんごとバナナを小さく切って丼に入れ、いくつかフォークがさしてある.デザートにどうぞをいうことらしい.


「うちの人、なんか、こお、ぼうっとしていて、正体不明でしょ、何考えてるか分からないというか・・・でもにうちの人が友達連れてくるなんて初めてなんですよ.そもそもあの人友達なんか一人もいないと思ってました.いつも仲良くしてくれているのでしょうね、ありがとうございます.」


そういえば、巫のはるなも、静香も、ドクトルの心の声を聞いたことがない.

そういえば、ドクトルの心の声を聞こうと思ったことすらない.

これは神々である、デメテルも、海丸君も、ルシフェルも、アテナも同じである.


あの男、そもそも心の中が空っぽ、なのかもしれない.

そういえばドクトル以前にはるなに言ったことがある、


「本当のこと言わないのは、嘘つくのと全然別だ」と

今回のこのこと言っていたのかもしれない.


はるなと、静香は少し、生気を取り戻した感じ、かもしれない、表情が出てきたようだ.


壁に、鳥の写真が貼ってある.「あれが、朱鷺」です.奥さんが説明してくれた.

これは、近所の写真屋さんにもらったものなんですが、この家を買う前、不動産屋をいろいろ探している頃でしたよね.駅からこっち向かう時に国道があったと思いますけど、あの道をずっと大学の方に行くと、新川って川があるんです.国道がまっすぐ橋になって、川の向こうに繋がってるのですけど、佐渡の朱鷺保護センターから何羽か放鳥された、なんていう名前だったか「朱美ちゃん」だったかな、橋の袂に巣をつくったみたいで・・・


夕方、5時前になると、新川の橋の歩道に人がたくさん集まってくる.橋から見た、東側のしゃめん、橋から見て左の少し下とところに巣があるらしい.


朱鷺が巣に戻ってくる時間なのだ.写真は朱鷺が驚くといけないからとってはいけないという決まりで、カメラを構えている人はいない.


「ほら、学会のプログラムにも絵が載っているでしょ」


新潟の人たちにとって、朱鷺は特別な鳥である.


一度は日本国内で絶滅した朱鷺.中国からつがいを貰い受けた.佐渡の朱鷺保護センターで、繁殖させて、少しずつ増えていった.今は何羽になるのだろうか?


新潟の大きな学会といえば、朱鷺メッセであるし、


2009年の新潟国体のマスコットは、トッキッキと言って、朱鷺を象ったゆるキャラだし、テーマソングとダンスは通称、「トッキッキダンス」(がむしゃらな風になれ)である.当時のに新潟の新潟の小中高校生は皆踊れた.ドクトルも娘に教わったができなかった.


さらに東京、新潟間の上越新幹線は「トキ号」である.新幹線、前にも話した、二階建てMAXにも、今の新幹線にも、朱鷺が羽ばたく絵が描かれていた.


保護センターから、放たれた、朱鷺が、新川沿いに巣を作って住み着いているというニュースが新聞に載った.


不動産屋巡りをして、夕ご飯食べる前に、じゃ、いってみますか、ということになった.


すでにかなりの人が橋の上に集まっている.ドクトルの家族も、朱鷺が飛んでくるという、新川の上流の方を見て待っていた.5時を過ぎても、それらしい鳥は飛んでこない.


しばらくすると、鳥の群れが、飛んでくる.一羽や、二羽ではない.それこそ、数十羽の鳥の群れである.


「何だ、カラスか」田圃で餌を食べて巣に戻るところか・・・


「いや、あのカラスたちの先頭を飛んでいるのは・・・」


それが、朱鷺であった.カラスたちより、一回り少し体が大きい.色はもちろん黒くない.カラスの黒の中に一つだけ、うっすらピンクががかった、白い鳥が、まるで、カラスの群れを率いるように飛んできた.光を放っているように見えた.錯覚だろうか?


朱鷺は、橋の上を旋回して、丘の斜面の巣に帰っていった.皆、あっけに取られてみるしかなかった・・・


ドクトルがいう、「まさに神の鳥、カラスの王の風格でした」

当初からカメラの撮影は禁じられていたからその時の写真がないのは残念ですが.今のように、まだ携帯電話が、いわゆるガラケーで、スマホはまだ普及していない時代だった.


アテナに、海丸君、ルシフェルは、新潟の人たちが、朱鷺を大切にする理由がわかった気がした.


静香と、はるなも少し正気を取り戻した感じで、うっすらと微笑みが戻ってきたようである.


次の日、奥さんの朝ごはんを食べて、きた道をそのまま戻り、寺尾駅に行き、今度は新潟駅から降りて、朱鷺メッセに行った.


学会で学んだことは、おいおいまた機会があれば話そうと思う.



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