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ギガントマキア ⑩「もう一つの戦後」



11月末、別館の図書室である.


愛ちゃんと、健ちゃん、ママが絵本を読んでいる.


健ちゃんは、「「なんかつまんない・・・」

愛ちゃんも「つまんない・・・」

とちょっとご機嫌が悪い.


「うみたんと、みんな早く帰ってこないかな・・・」


海丸くんも、ドクトルも、はるなも、静香も、アテナも新潟の学会に出かけてしまったから.デメテルのお母さんまで、一緒に行ってしまった.先週、ペルセポネは、冥界に帰っていったから、いないし.四天王は、ヘパの親方の攻防が忙しいから今はずっとオリンポスで仕事である.だからアテナとは同行しなかったのだ.

 

すぐ戻ってくるのだが、それがすごく待ち遠しい.


「そうね、お土産、買ってきてくれるかな・・・ドクトルだったらきっと万代太鼓買ってきてくれるかも・・・」


「え、ほんと?」と愛ちゃんと健ちゃんは目を輝かせる.この前、新潟に行った時、新幹線の中で、家に帰るのが待ちきれなくて開けた、あの新潟のお菓子が二人の子供は大好きなのだ.


「早く帰ってこないかな、うみちゃん・・・」

「早く帰ってこないかな、うみたん・・・」


その代わりと言っては恐れ多いが、別館には、大物女神二人がご降臨である.


ヘスティアおばさんが、台所の仕事を手伝いに来てくれている.ママと二人で居残り組のご飯の用意をする係である.


そしてもう一人は、なんと、ヘラ様である.しかし、なんのことはない、鬱陶しい亭主やら生意気小娘のアテナがいない隙に、愛ちゃんと遊びに来たということである.


ママも、すでに、ヘラ様とはお近づきになっており、なんでも話ができる仲になっている.本当は、愛ちゃんや健ちゃん、はるなやドクトル.静香のような「巫」の能力ちからを持っていないと、意思疎通ができないのが、神々なのだが、すでに友達のように、ヘラ様といろいろ話ができる.その昔話やら、子育ての哲学、教育方針、夫の扱いなど、この女神の女王から学ぶことは多い.


ヘスティアのおばさんにははるなと同様台所仕事をいろいろ教えてもらっているし.

でも、いつの間に?


彼女も「かんなぎ」になったのだろうか?あるいはその素質があった?あるいは眠っていた力がまた目覚めたか?

まだママには、他の巫たちが、精霊を解放して、神々を変身させる能力だとか、変身した神々の背中に乗って、空を飛ぶということはできない.巫資格、初級というところかもしれない.


ヘラ様は、ルシフェルがいないと、穏やかな顔である.


「まあ、うるさいうちの亭主がいないうちに、いろいろ本を読んだり、勉強する、いい機会です、しっかり勉強なさい」この辺は普段笑わない、厳しい教育ママである.


「はーい!」愛ちゃんと、健ちゃんは、ヘラ様のいうことは、素直によく聞く.彼らが、この怖い女神様のお気に入りはそういうところにあるのだろう.


ヘラ様はこの子達の元気な返事に目を細める.


ママが一旦部屋から出て行き、次にヘスティアおばさんと、一緒に、ホットケーキをお盆に乗せてまた書斎に入ってきた.


「さあ、さあ、手洗ってきて、ホットケーキ食べましょう」


「ヘスティア姉さん、ありがとうございます」あのヘラもヘスティアに対して言葉使いは丁寧である.


「なんだよ、あんた、そんな言い方やめとくれよ、女王様、なんだからね、あんたは、それにギガースとの戦争の時、飢えた子供の面倒、みてくれたのあんただったからね・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


あの、ギガースとの大戦争、ヘスティアと、デメテルが、戦後の復旧作業に従事したことは前作で話した.


畑と森はあれ、そこら中、火の粉が燻っていた.飢えて、傷ついた兵士たちに食事を与えて回った二人.


当然、兵士や、非戦闘員の、子供たちが一番の被害者だと言っていいだろう.

特に親を亡くした子供たちは悲惨である.まだ残党のギガースがいるかもしれない.家には、いくさの火の粉がまだ燻っているかもしれない.腹を減らした落武者兵士が、物取りになってしまうこともあっただろう、最初に狙われるのは、親のない子供達である.


親と住む家を亡くした戦災孤児たちを集めて保護したのはヘラ様である.

虹の女神・イーリス、季節の女神・ホーラーと言った、女官や、アルゴス、スフィンクス、その他の腹心の怪物どもを使い、子供たちを集め、食事と温かい家を与えた.


こうした子供たちは、ペロポネソス半島に集められた.アルゴス、ミケーネス、スパルタといった場所.


これは、ヘラクレスが生まれ育ったところ?

そして、ヘラクレスは、生まれてからずっと、ヘラ様には嫌がらせを受けてきた・・・・


しかし、ヘラ様のお乳で育ち、最強の戦士となり、さらに、12の功業ののち、ギガースとの戦争では第一の手柄を挙げた、あのヘラクレス.


都市国家スパルタ王国の人々は、皆ヘラクレスの末裔であることを誇りにしたといわれる.


親から引き離されて、戦士担うためだけの訓練と、教育を受ける.適合できないものは打ち捨てられる・・・・


この国の教育は、まさに「スパルタ教育!」


その国の人々は、ヘラ様がギリシャ各地から集めた戦災孤児だった!


意地悪な、継母の栄光を冠した、名前、「ヘラ」様のクレス=勇者、という名前、嫌いな継母の名前なら一生背負う気にはなるまい.


「ヘラ様」この厳しく育ててくれた、「母」は、ヘラクレスにとって、あるいはその末裔たちが打ち立てた、最強の軍事国家にとっては誇り以外の何者ではなかったということになりはしないか?


「親のないそなたらすべての、母として、私が、そなたらに与えられるもの・・・それは強く生きる術、それだけです」


遠い目をしたヘラ様をヘスティアと、健ちゃん、愛ちゃんのママは静かに見つめる.


愛ちゃんの頭を撫でながら、

「そなたらの役目は、強く生きて、親のない子供を作らないことです、そして、親のない弱い子供達を守ることです」


愛ちゃんと健ちゃんには、ヘラ様の教えの意味が、まだわからない、しかし、あの時のヘラ様は何か大事なことを教えてくれていたのだと、記憶の底にずっと残った、ひとときだった.


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