ギガントマキア⑨「戦後の復興」
戦況は全ての戦線で、オリンポス軍の大勝利である.次々と、「お味方、大勝利!」と連絡が入る.
ヘルメスが忙しげに戦況報告に飛び回っている.文字通り・・
彼は、翼の生えたサンダルを履いて空を飛べるから.
トラキアから中マケドニアの戦場.アレスも、ヘラクレスも無事らしい.アレスは、忙しげに、捕虜のギアースの処分について、書類にサインしている.
ヘラクレスは、岩に座ったまま動かない.特に手負ではないようだが・・・
空を見上げてヘラクレスはボソリとつぶやく「あ、腹減ったな・・・」
戦争が始まってからというもの、食事は、猪の肉を干して乾かしたもの、干したぶどう、いちじく、ナッツ、鮭の塩付けをさらに干して乾かしたもの、他の魚の干物、あとは、麦をこねて、それを焼いたのを乾燥させて保存したもの、干しパンのようなものしか食べていない.大麦をこねて、蜂蜜を混ぜた、団子や、焼き餅、麦の粥になると、それはもう戦場にあっては豪華な「ご馳走」である.
「あったけえ、飯、食べたいなー」
オリンポスの円卓には、デメテルとヘスティアしか残っていない.皆、で払っている.各戦線で、勝利を挙げて、あちこちに連絡したり、喜びの宴会をしたり、大騒ぎのようである.
しかし、神々と、ギガースの間の弱い人間たちは、そして、戦った兵士たちは・・・・・・・・・・・・・・・
「ヘスティア、そろそろ、私たちの出番のようだね」とデメテルがいい、よっこらしょと腰を上げる.
「おや、もうそんな時分かね、姉さん、じゃあ、私たちも参りましょうかね・・・」
ヘスティアもよっこらしょ、と腰を上げる.
別にばあさんと言うわけではないから二人とも腰が曲がったりはしていない.膝も曲がっていない.しかし動きは緩やかである.
二人して、宮殿の中庭に立つ.
何やら呪文のようなものを唱えると、デメテルの足元には、麦の穂や、花や、いろんな草花、野菜の妖精が飛び出した.豊穣の女神の足元から渦を巻き、七色の光と共に彼女の体を取り囲み、デメテルの姿はやがて、七色の翼の生えた、女神に変わった.
「やあ、姉さん、久しぶりに見たけど、くわっこいいね・・」
「何言ってんだよ、人のこと見とれてないで、あんたもさっさと変身しな!」
「はいはい、お姉様、と」
ヘスティアも何やら呪文を唱えると、彼女の足元には、囲炉裏の仄かな種火のような光が見え、それがみるみる、大きな炎となって、彼女の体を取り囲んだ.ヘスティアの体も、赤い炎の翼を持った女神に変わった」
「ほお、あんたもなかなかのいい女っぷりじゃないかい、くわっこいいよ、これなら嫁に行けそうだ・・・」
「姉さんも何馬鹿なこと言ってるんさね、とっとと仕事に行くよ」
「はいはい・・・」
翼の生えた二人の女神は、それぞれの戦地と戦争によって被害を受けた土地に向かった.
畑や森を復旧し、
食料を補給し、飢えた人々に食事を与えるためである.
ギガースが火を吐いて、踏み荒らして回った、森や畑はにはどころどころ、まだ火が燻李、煙が立ち上っている.
空から見下ろし、踏み荒らされた、麦畑を見つけると、デメテルが、手に持った杖を一振りする.倒れた、麦の穂が立ち上がり、また豊かな麦畑となり、葉が落ちた無花果や葡萄の畑はまた青々と蘇る.
戦で傷つき、飢えた兵士の上を通りかかる.今度はヘスティアが、その杖を一振りすると、彼らの前に、数日分の、はちみつ入りの麦団子、粥、猪の肉が並んでいた.そして、余計な火の粉を見つけると、また杖を一振りして、避けな火の粉を消して回る.
彼らが空を眺めると、二人の天使が飛んでいくように見える.
「次は、パレーネの戦場かね・・・」
「あそこがギガースの被害がひどいところだったからね・・・」
二人はパレーネに急いだ.
ヘラクレスは岩に座ったまま、空腹で動けない.
遠くから、七色の羽と、明るい炎で赤い羽を生やした女神が飛翔してくる.
目を凝らすと、デメテルとヘスティアだ.
「おばさんたち、くわっこいい!」ヘラクレスは、歓喜の声を上げた.
「おおーい、おおーい!」自分はここだと力の限り手を振った.
その後、待ちに待った暖かい、食事にありついた.一心不乱にあったかい麦団子を頬張る、ヘラクレスの食べっぷりに感心した二人の女神は、きく
「アレスはどこで何をしているかね?」
「アレスは、トラキアで戦後処理でさあ、捕虜のこととか色々忙しいみたいですぜ」
再び二柱の女神は飛んだ.北東のトラキアに向かった.
正確には、海の上を飛ぶと、海に突き出た、三又の半島を超えて真東に行くとアレスのいるトラキアだ.
途中、陸の上を飛んでいくから、北東に進み、途中の被災住民のところには、小麦やら、大麦、不足しがちな、ナッツや、葡萄、無花果といった乾燥フルーツやら豆、オリーブ、猪、鴨の肉やらを数年は困らないように配って回った.踏み荒らされた麦畑は見つけては復旧していく.
トラキアに降り立つと、アレスが珍しく書き物をしている.
ヘスティアがからかってきく
「ほお、あんたが、剣とかフォーク以外に、筆を持つことがあるんだね・・」
「おばさん、何からかってんですか、こっちは真面目に仕事してんだから.食い物持ってきたんでしょ、さっさとくださいよ.俺、腹減って腹減って・・・・ホントは仕事どころじゃなかったんですよ.」
これは軍神アレスの精一杯の感謝の気持ちの表現である.
「全く、あの子は相変わらず、素直じゃないね・・・じゃ、姉さん、次に参りましょうか」
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次に、デメテルと、ヘスティアが向かったのは、ヴェスビオス火山、の火口近くである.
ギリシャからイオニア海を超えて、イタリア半島まで.
ここには、アテナと四天王、ヘパイストスに、キュクロープスが、腹を減らして、動けないでいた.
「やれやれ、あの子たちも腹っぺらしかい・・・・」
「全く、我が一族の若い者たちときたら・・・・」
「あ、あそこ、デメテルと、ヘスティアのおばさん、おおーい、おおーい!」
アテナが呼んで、大きく手を振る.
「え、おばさんたちが、どうやって・・・」
ヘパイストスも、空を見上げると、二柱の女神がこちらに向かって飛んでくる.
「はあ、伝説の女神像・・・くわっこいい!」ヘパイストスも大きく両手を振った.
キュプロプスも、手を振って二人の名を呼んだ.
四天王は、力の限り、アテナの旗指物を大きく振って女神たちを迎える.
それぞれ、別も文字が書かれている.
広目天白虎は、アテナの旗指物「若者の胸に、力と勇気を !]
多聞天玄武は、「知・情・意」の文字
持国天青龍は?
おや、あの旗指物、なんて書いてあるんだい?デメテルはきく.ヘスティアのおばさん「どれどれ、何?17・目高屋?」なんだい日本の飯屋じゃないかね.
増長天朱雀はもっと直接的だ「腹減った!」
なんだだろね、あの子達は「やれやれ」
古今無双の勇者たちに、おばさん女神たちは呆れた.




