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龍の涙は、鎮魂の雨



愛ちゃんの病気のこと.

いつもにこにこと元気に育っているようで、彼女は脳腫瘍の術後の化学療法を受けるために、定期的に入院が必要である.


いつも元気に出かけて、元気に帰ってくる.しかし今回は様子がおかしい.

病院から帰ってきて、一言も話をしない.いつものにこにこはない.


本当は、点滴は痛いし、吐き気はする.白血球が下がると熱が出たりして入院が長くなることもある.髪の毛は抜けるし、ご飯も食べたくなくなる.


しかし、彼女は決して自分のことでは弱音を吐かないし、痛みも我慢する.

しかし、他人の痛みはものすごく辛く感じる.


同じ病気で、化学療法を受けるお友達が、これまでに何人かできた.皆で励まし合って治療を頑張った、同志たちである.その中には治った子もいれば、亡くなった子もいる.


今回の入院の前後、なかよしが亡くなったらしい.


一人で縁側に座って、ぼーっとした表情で、雪割草を眺めている.

こういう時、彼らは、愛ちゃんに声をかけない.海丸くんや、健ちゃんも、見守るしかない.別館の大人たちもこういう時に愛ちゃんに話しかけることはできない.


アテナが、一人、愛ちゃんの隣に座った.何も話さない.お互いの息遣いしか聞こえない.

アテナの隣にはそっと海丸くんが座った.


天井から、蜘蛛が糸にぶら下がって降りてきた.

海丸くんが何気なく払い除けようとすると、アテナが少し鋭い口調で言った.

「海丸、ダメ、蜘蛛を殺したら!」

海丸くんはビクッと驚いて蜘蛛の糸から手を引っ込めた.


しばらく沈黙が続いた後、アテナが静かに話し始めた.


「私もね、子供の頃、友達、死んだことがあるんだ、病気とかでなくて、ほとんど私のせい・・・」


「アテナも、友達死んじゃったの?」愛ちゃんが尋ねる.


「うん、アラクネって子でね、織物がとっても上手な子だった.アテナには負けないわよ、って彼女、私に織物で勝負しましょうって言ってきたの・・・」


アラクネは人の子である.アテナは最高神の娘であり、オリンポスの12神の一人である.アラクネにしてみれば、神に挑むつもりであった、それだけ、自信があったのと、何よりも、親が偉いからって、だからって何よ、という気持ちがあり、不遜な挑戦ということになったのだと思う.


「私は、親が偉い神でも、友達だと思ってた、でもアラクネは私のこと友達だと思ってくれてなかったのかな?今はわからない・・・・」


アテナは、12神を讃える絵柄を織った.アラクネは、最高神を侮辱するような絵柄をおった.神々の軍配はアテナに上がった.


「ふん、何よ、私なんかどんなに努力しても、あなたにかなうわけがない」


そして悲観した彼女は首を吊って死んでしまったの、なんとか助けたけど人の姿では、生き返らせることはできない


「生きられるなら、私、ずっと織物を続けたい、アテナより上手におれるように、なりたい・・・」


そして、アラクネは蜘蛛として永遠に、人の家の天井で織物を折ることになったという神話である.


黙って聞いていた愛ちゃんが口を開いた.


「私、恵まれていると思う.だって、お父さんがお医者さんだし、海ちゃんや、お兄ちゃんや、みんなが助けてくれる.ヘラ様も私のこと可愛がってくれる・・でも贔屓されてるかな?友達に悪いのかな、って思ってしまって、私と彼女の身の上が逆だったら、でもそれで彼女が死なないで済むなら代わってあげたいって思ったり.アテナはそんなこと考えたことある?」


「私は、自分に与えられたもの、力一杯使って、皆と一緒に強く、賢くなりたい!それだけかな、だから、泣いてばかりはいられない、でも時々人が見てないところで泣くことにしてんだ」


隣で海丸くんが声を出さないで泣いている.愛ちゃんは、人前では泣かない子である.


「泣かないと辛いことがあるんだよ、よし、これから思いっきり泣きに行こう.愛ちゃん、海丸ついといで!」


アテナが、広いところに二人の子供を引っ張っていった.


「リバイアサン、リバイアサン、リバイアサン!」

「え、アテナ、僕の封印勝手に解いたら・・・」

言い終わる前に、海丸くんは龍の姿に変わった.


「それじゃ、私も!」


アテナは翼の生えた天使の姿に変わった.


「海丸、ほれ、愛ちゃんを背中に乗せて、行くよ!」アテナは空高く飛び上がった.


「え、アテナ、強引、つうか、人の都合関係ないんだから全く、しょうがないから、愛ちゃん、僕の背中に乗って」


愛ちゃんは黙って頷いて、龍になった海丸くんの背中に乗った.

「それじゃ行くよ!」

龍もアテナの後を追って空高くに舞い上がった.


龍の背中の愛ちゃんに、女神は優しく語りかける.

「愛ちゃんの友達.お星様になった子たち、見えるはずだよ、探してご覧・・・

そして、思いっきり泣いてごらん、涙の雨を降らすんだ!」



海丸くんの龍と、愛ちゃんは大声で泣いた.

そして、大量の涙の雨を大地に降らせた.

雨粒となった涙は月の光を受けて、七色に輝き、

万華鏡の花のように、空に散らばり、

ゆっくりと大地に降り注いだ


アテナもないて大量の涙の雨を降らせていた.

死んだ友達に対する鎮魂の涙である.














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