ギガントマキア④「決戦、ヴェスビオス!」
ポンペイには、ヘパイストスとキュクロプスの軍が、ヴェスビオスの火口を見上げる.
足の悪い、ヘパイストスと片目のキュクロプス?
戦における、この既視感はなんだ?
黒田官兵衛と、山本勘助?
秀吉の軍師、官兵衛と、信玄の軍師の勘助が、同じ戦場にいたことはないのだろうが.
古今無双の軍師の二人が、アテナをいう全軍の大将をこれから迎えようという時である.
戦と知恵の女神、アテナの軍勢には、東、西、南を守護する三つの神が従って今まさにイタリア半島の南、約三分の一を北上中である.さらにヴェスビオスの北には、多聞天玄武が控えている.前にも触れたが、彼の別名は毘沙門天である.軍神と言われた、上杉謙信が崇め奉った戰の神である.知恵の神である菩薩を、仏法の守護者たる四天王が固めている.
負けるはずのない布陣、すでにオールスター軍勢の趣がある.フィクションならではの醍醐味かもしれない.さらにギガントマキアの戦記のようなものは当然残っていないわけだから、これはもう想像のし放題ということか.
「アテナ、もうきたのかい?」ヘパの親方は少し驚いた.
まさか、半刻でエトナ火山を制圧して、さらにイタリア半島を北上して、数刻のうちにポンペイまで全軍で進軍してくるとは!
「まさに神速!」キュクロプスも驚いていた.
アテナと四天王が揃ったところで、改めて軍議が開かれた.
ヴェスビオスは後世の噴火により、ポンペイが壊滅したことから見るように、火砕流、噴煙は、南東のポンペイ方面に流れることが分かっている.風向きによるのだろうが、
「南東の正面から、火口近くミマースに対峙することは得策ではない.」アテナは口を開く.
「四天王はそれぞれの受け持ちの方角から、火口を攻めるべし」軍の大将の半ば命令の提案である.
すなわち、
北から、多聞天玄武
東は、持国天青龍
南は、増長天朱雀
西からは広目天白虎
上空からはヘパイストスが、待ち構え、ミマースを火口の下に叩き込む役割である.
火砕流と、火山礫が飛んでくるポンペイ方面からはアテナが空から接近して、アイギスのストームとゴルゴン・メデューサの頭を使い、これらを制圧する.
「我、電雷もて、ミマースを弱らせまいらせる間、その方ども、四方よりあのものを鋼の如くに槌にて打ち据えよ.しかるのちに、ヘパイストス、とどめ仕るべし!」
アテナは、ヘパイストスとキュクロプスの鍛えた、「電雷」を打ち込み、敵の勢いを弱める.本来父であるゼウスの武器である、電雷を特別にアテナは使用することを許された.
軍議で決まった通りの戦術で、火口付近で、ミマースの動きを止めた.
四天王が四方から、鍛冶場の槌で、ミマースを順に殴りつける.刀を鍛える如くにである.身体中をつちで打ち据えられた、ミマース.まるで袋叩きだ、「かわいそう」などというなかれ、彼は大地から生まれた禍々しき、ギガースである.赤く熱した、鋼を槌で打ち据えても誰も、鋼を可哀想とは思うまい.頭上からはパイストスがとどめの鉄槌を下して、火口の奥底にこのギガースを落とし込んだ.
火口を護摩に見立てた、東西南北を囲んだ、四天王が、怨霊退散、ギガース調伏の読経を行なった.
「こうしてヴェスビオスの火口は封じられた.しかし地の底で呻く炎は、数千年ののち、再び甦り、ローマが皇帝と呼ばれるものたちに支配される時代、麓のポンペイの街を全て呑み込むことになる.」




