精霊の声を聞け!②おばさんたちの「井戸端会議」は、精霊の詩の朗読会
ドクトルが、数人のおばさんに詰め寄られている.どうしたのだろう?
はるなの声が聞こえる.
「誰がおばさんだって!」
「なんとか言いなさいよ.」これは静香の声か.
「あんな、ちょっと調子に乗ってんじゃないの」おやおや、これは愛染の母ちゃんか.
「そうですはよ.おばさんって、私まだ、32ですわよ」おや、けんちゃんとあいちゃんのママは、まだそんな歳だったか.でも珍しく御立腹の様子である.
一人だけ、おばさんと呼ばれてもまあしょうがない、デメテル母さんもなんか怒っている.
「まったくだよ、ドクトル、あんたはそういうところがダメなんだ.調子乗ってるんじゃないよ.女の子はね、おばさんって言われると、傷つくもんなんだよ!わたしゃ、こんなデリカシーのない奴にはいつも言ってやるんだけどね『お前なんか飢え死にしてしまえ!』てね.まあそこまで攻めるわけではないけどね」
「あちゃ、またドクトル、おばさんたちの餌食だは、でもあいつももうちょっと上手く立ち回れないものかね・・・」
様子を見ていたのは、ヘルメスである.ハーデスの兜をかぶって、彼は姿を消しているからみんなには見えない.
図書室の入り口のところで覗き込むように、海丸くんと、キューピーと健ちゃんが、震えながら様子を見ている.愛ちゃんもお兄ちゃんの後ろにピッタリくっついているのだが、彼女だけはいつもの通りニコニコしている.ルシフェルは、そそくさと部屋から出て行ってしまった.おおかた、居間でテレビでもみてるのだろう.
「あの、その、おばさんの、というところ、二重線とか、ばつ印で、訂正処理しようと思ったのですが、ワードではできても、カクヨムのタイトルのところにコピペすると、二重線消えてしまうので、しょうがなく・・・」
ドクトル、おめえ、それ釈明になってないぞ・・・・
「じゃ、なんで、その言葉、全部削除しないの!おばさんの、ってとこよ」はるなである.
「そうよ、そうよ、私、35歳だから、健ちゃんのママに言わせるとおばさんじゃない!なんでおばさんのっていうのを消さないで残すのよ・・・」
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これから語る、内容.
この話を書いて早速、皆さんにお見せした.感想を聴くためだ.タイトルを見た、おばさま方が御立腹されたということらしい.作者のドクトルこと、独取警一詰め寄られているということである.
しかし、最初、ここには和やかな空気が流れていたのである.時間を遡ってみよう.
夕方、ご飯の支度にはまだ少し、早い.
別館の図書室、健ちゃんと愛ちゃんのママが、子供達から聞き取った、雪割草たちのささやきをメモに書いたのを皆に見せている.
はるな、静香、愛染の母さん、ルシフェルもいる.海丸くんとキューピーは勉強中.学校の宿題したり、本読んだり.健ちゃんと愛ちゃんは、絵本を見ている.
これなんですけど、どれどれ、大人たちが、皆で覗き込んで、読む.
「その昔、ミカエルの謀り(たばかり)にて・・・」
「彼はユダヤの王を謀った・・・」
「ダビテの御子なる、ソロモン王を謀った・・・・」
「精霊を味方にせよとの、その指輪・・・・」
「ソロモンはその指輪を、正しからざることに用いた・・・」
「精霊から、知れる限りの神の言葉を聞き出して・・・」
「精霊から、知れる限りの神の秘密を盗み見て・・・」
「精霊を、苛烈なる、苦役に用いて、神のご機嫌を伺った・・・」
「その果てに、精霊の心と魂を踏み躙り・・・・・」
「そして、彼はその指輪を捨て去った・・・・」
「精霊の王は破れ去り・・・・」
「この世はミカエルのものとなった・・・・・」
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「いやー、大したもんだわ、これは、なんか有名な詩人の作品だね、もはや・・・」静香が感心する.続けていうには、
「愛ちゃんと、健ちゃん、雪割たちが言ってること聞いて、ちゃんと覚えてるってことだよね・・・」
「確かに」はるなも同意である.
「それをさ、子供たちのいうこと、いい加減に聞き流さない、ママも、大したもんだね」愛染の母ちゃんも感心している.
「あたしたち、雪たちの話すこと、文字にして書いてみたら、こんな詩みたいな感じになるのだろうかね・・・」静香がいう.
「出版してみると・・・」なんかお金の匂いが、とはるなが言いかけて、
「いえいえ、子供たちが聞いたこと、無闇に人様に見せるのよくないですよね」
「皆で、お芝居みたいに順に読んでみませんか?」ママの提案である.
皆が身振り手振り、各行を、順に、声に出して読んでみる.
精霊の気持ちになって、情感をこめて読んでみる.
一通り、読み終わった頃ドクトルが入ってきた.
「ほお、素晴らしい、シェークスピアかなんかの戯曲ですか?」
「いえ、ドクトル、これ、愛ちゃんと健ちゃんが雪たちに聞いた話、ママが書き写したの、すごいでしょ」
「へえ、有名な詩人か、シェークスピアだね.もはや、巨匠だ!」
ドクトルも驚嘆している.
「おめえら、内容をよく噛み締めて読んだか?」ルシフェルが初めて口を開いた.
「精霊の王っていうのは何を隠そう、俺のことだ.雪割たち、俺のこと、思ってこんなこと、詩みたいに歌ってくれて・・・」
親孝行な子供達じゃないか、と涙ぐんでいる.
「あ、そうですね、あまりの格調の高さに、あなたのことだなんてこれぽっちも思いませんでした.内容をよく噛み締めていませんでした.
ルシフェルさん、前にこんな話してましたよね、これはソロモンの指輪の話ですよね」とドクトル.
「僕、知ってる、ソロモン王の指輪は、聖霊の話が聞けるんだ」海丸くんである.
「ルシフェルのおじさん、悪霊を使う、王様の指輪の命令で、神殿作りにこき使われたんでしょ」キューピーもそれくらいのことはわかる.
「いや、まあ、そうだがな」ルシフェルがモゴモゴし始めた.
「あ、あんたのいつも言ってた、パレスチナに亡命中に、土木作業手伝わされた、あのミカエルの工事のこと?へえ、あの話、本当だったんだね.」愛染の母ちゃんである.
「私たちは、みんなクロノスの腹の中に収まってるとき、だけどね.あんたにだけなんか苦労かけたね」おやおやいつの間に、デメテル母さんも話に加わった.
「この子はね、私たちが、クロノスのはらの中、つまりは先住民族に兄弟姉妹が皆捕まって、幽閉されていた時さ」
デメテルのお母さんもそういえば、あの大戦争の時、クロノスに飲み込まれたのだった.
「なんとか逃げ出したのは、この子だけで、一人、あちこちの王様に、クロノスを倒してくれ、わたしたちを救い出してくれって、頼んで回ってくれてね・・・
なんでもパレスチナに行った時、苦労したみたいだね.あそこは民族専属の神様だから、私たちみたいに、よそものの、しかも多神教の神とは相性が良くないのだよ」
「チャンスがあって、ギリシャに戻ってクロノスの政権を倒したとき、あの子は、パレスチナから戻ってきたのだけどね、ミカエルに追い出されたみたいに、言われたんだろうね.地獄に落ちろ、みたいな.屈辱だったろうね」
「そんな話なんですね」皆が少ししんみりした時である.
ルシフェルのことがちょっとわかったような・・・
「いい話なので、早速、新しい話を書いてみます.」ドクトルは、一話を書き上げた.皆に見てもらったところ、表題に女性の皆さんが噛み付いてきた、というわけである.
今日もいつも通りの別館の夕べであった.




