精霊の声を聞け!①「ミカエルの陰謀、ソロモンの裏切り」
遠くで風の音、それに揺られる風鈴が鳴るような音、耳を澄ますと、子供の話し声のような聞こえる.
雪割草たちの囁き声・・・
「その昔、ミカエルの謀りにて・・・」
「彼はユダヤの王を謀った・・・」
「ダビテの御子なる、ソロモン王を謀った・・・・」
「精霊を味方にせよとの、その指輪・・・・」
「ソロモンはその指輪を、正しからざることに用いた・・・」
「精霊から、聞けるだけの神のお告げを聞き出しておいて・・・」
「果ては、精霊の心と魂を踏み躙り・・・・・」
「精霊を苛烈なる、苦役に用いて・・・」
「そして、彼はその指輪を捨て去った・・・・」
「精霊の王は破れ去り・・・・」
「この世はミカエルのものとなった・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここは、愛ちゃんと健ちゃんの家.はるなと、ドクトルにもらった鉢植えの雪割草が、いくつかある.
彼らの囁きが、愛ちゃんと健ちゃんの”目覚まし時計”である.
二人の子供は、パッと目を開け、同時に起き出して、台所のママのところに行った.
「ママ、おはよう!」子供は同時に挨拶する.
「はい、健ちゃん、愛ちゃん、おはようございます」
「ねえ、ママ、ミカエルって何?」健ちゃんの質問である.
「ミカエルって何?」同じことを、愛ちゃんがママに聞く.
「それとね、ママ、ソロモンって誰?ダビデの子供って言ってた」
「ダビデの子供だって・・・ママ、ソロモンお友達?」愛ちゃんは、首を傾げて、ママに質問する.いつものニコニコがちょっと真面目な顔である.
「さあ、聖書の話でしょうかね?ママもよく知らないから、今度ドクトル聞きに行きましょうか・・・・」
「ルシフェルがね、ミカエル大っ嫌いだって」
「ルシフェルのとおしゃん、ミカエルのことだーいきらい!」
「じゃ、一番知ってるのが、鬼丸さん、なんでしょうかね?」
すでに、健ちゃん・愛ちゃんママも.鬼丸さんがルシフェルという古い神様であることは知っている.彼女も、ポセイドンが息子の海丸くんを、竜に変身させたのを間近で目撃しているのだ.そのお兄さんという、鬼丸さんが、只者ではないことくらい、
よく?
なんとなく?
朧げながら?
わかっている.彼女もはるなやら、ドクトルに似たところがあり、この世ではありえないような超常現象をなんとなく受け入れてしまうところがなくはない.
それが幸いして、子供たちの不思議な体験にも、寛容に、耳を傾けることができるのだ.そして、その話に興味を示すのだった.いいママ、なのだろう.
「今日の夕方でも、ドクトルが別館にきた頃を見計らって、聞いてみましょう、あ、その前にはるなさんとか、静香さんなら、色々知っているかもね.あ、後、鬼丸の親父さんにも聞いてみると何かわかるかもしれないわね」
「あ、健ちゃんに愛ちゃん、雪たちがなんて言っていたか、わかる範囲でいいからママに教えてくれないかな?」
ということで、ママが断片的に聞き出した、雪割草たちの歌の内容が、冒頭の通りであった.メモ帳に書き出してみた.なんかえらい、詩人が書いたみたい.
書き出した自分になんか才能があるかも、と、ママは思った.
実際にそうなのだ.精霊の歌声を紙の上に描き出せる人のことを「詩人」と呼ぶのだから.




