学ぶことは多い、しかし苦痛ではない⑤「アフロディーテ論」
今日は、ある学会が開催される.市民公開シンポジウムも同時に行われる.
シンポジウムとは、そもそもオリンポスの神々が定期的に会合して、いろんな問題を議論することであった.ネクタルという神のお酒をのみ、アンブロシア(神の食べ物)を食べてワイワイガヤガヤ話をすることである.元々の意味はto drink together、一緒に酒を飲む、であるらしい.
一昨日、やっとプログラムや抄録集が出来上がった.郵送は間に合わないので会場で参加受付の時に、配布するしかない.まあ、会員でない人が、わざわざ、3000円払って買うほどのものではないと思うが、念のため、販売用を100部用意してある.所属学会員は結構な数で、1200人いる.学会事務局は、はるなと、アテナと、新しく仲間に加わった静香が担当する.彼女はネットやら、電子機器、スライド用のPCのことについてはヘパの親方やらアテナに勝るとも劣らない、知識と技術を持っている.それを知って皆は驚いたのだが.
学会の名前、「第58回日本アフロディーテ学会総会」
会長はルシフェル(堕天使会 ルシフェル診療所所長)
副会長は、なんと、
独取警一(天使会 セント・ミカエル病院 脳神経外科)
ヘパイストス(オリンポス工業株式会社 代表取締役)(オリンパスではないからあらかじめ)
一人の女のことを論じるのに、58回、年次総会を行ったということは俄かに信じ難いが、
「実際にそうなのだから、黙って聞け、文句があるなら参加するな」と受付で、参加者に喧嘩を売っているのはアテナの四天王の一人、増長天朱雀である.
渋々、プログラム、「え、3000円もするの?たったの20ページくらいでしょ.」
「ナニー、お客さんいちいち絡むね」と言って、参加希望者に絡むのも朱雀である.
スタッフのまとめ役のアテナが慌てて割って入る.
「あ、すみません、うちのバイトが失礼しました、あ、参加登録とプログラムですね、全部で、18000円です.」参加希望者は、なぜかアテナの視線に殺気を感じた.大人しく支払った.
「20000円でお釣りいただけますか?」
「えー釣り?ちゃんとちょうどで支払って欲しいんだけど」と今度はアテナが、ブツクサ言い始めた.見ていたはるなが慌てて間に入って、お釣りの2000円を渡した.
同じようなことか10回くらい繰り返された.それだけ会は盛況だということか.
「あれほど言ったでしょ、お釣り、用意しといてねって.」
「はーい.でも、今時、ネットでオンライン参加登録しない学会なんて信じられねえ」
「ほんとよね、大体会長の親父が、アナログ過ぎんだ」アテナが愚痴ると
「ですよね」と朱雀も応じる.
どれどれ、どんな演題が、あるのかな.そのできたばかりのプログラムを見てみる.
結構、盛り沢山な演題だ.
「市民公開シンポジウム」か.でも市民に公開してもいい内容だろうかと皆思うが、面白そうなので続きを読む.
テーマ:「アフロディーテ学の、過去、現在、未来」
座長は、
会長のルシフェル先生、
ドクトル、そして、
「パリスの審判」で、アフロディーテを一押しにしたその人である.
パリス.彼の肩書は、”Prince of Troy”である.つまり、トロイの王子様、だ.
会長のルシフェルの基調講演の後、
シンポジストと演題は以下の通りである.
パリス:「三美神の比較.私はなぜアフロディーテを選んだか」
ヘパイストス:「報酬としてのアフロディーテ、そして破局」
アレス:「不倫相手としてのアフロディーテ.そしてオリンポス中の晒し者」
アレス先生はシンポジムに二演題登録しているのは異例、特例である
「娘のハルモニアとその子供達は、なぜ不幸になったか?」
キューピー:「母としてのアフロディーテ」
ヘルメス:演題取り下げ.なんでも子供さんのことを、発表しようとしたらしいが、急遽取りやめたらしい.
アフロディーテの現在については、居候先で、事務所をタダで貸している、
楠本はるな:「家賃未払いのテナントをいかに扱うか?」
ペルセポネ:「アフロディーテ、あなたは最強の、強敵だった.アドニスをめぐる戦いを通して.」
「強敵」と書いて無理やり「とも」と読むことができるのは、40代後半から、60代くらいまでのおじさんたちだろう.あの漫画に毒された世代である.
アフロディーテ学の将来は
アンテロス:「愛染結婚相談所の、未来」
彼のことを知らない人がいるかもしれないが、彼が、キューピーの弟として生まれたアフロディーテの息子である.
一般演題も募集した.審査で落とすと演題がなくなるからほぼ登録演題は全て採用とした.
なになに・・・
「夜の街のアフロディーテ」
「アフロディーテの男性遍歴」ヘパイストス、アレス、ヘルメス、アポロン・・・大体は関係を持ったらしいのだが、肝心のゼウスとの関係は伝わっていない.後、最初の亭主のヘパイストスとは夜の関係はどうやらなかったらしい.
「神話におけるアフロディーテ」
「アフロディーテの比較神話学的検討.イシュタル、愛染明王との比較」日本の木花咲耶姫はちょっと違うらしい.日本にはアフロディーテに相当する神がいないそうである.
「アフロディーテの親和性.ーどんな男が好きで、どんな男が嫌いかー」
「アフロディーテのリビドー吸着作用とその緩和方法」
「アフロディーテとの関係を継続するには」
「アフロディーテと雇用問題」
「アフロディーテの働き方改革」
「男女機会均等と、アフロディーテ」
「グローバリズムと、アフロディーテ」
「アフロディーテの子供たち」
「アフロディーテの子育ては、ネグレクトか?放任か?」
「アフロディーテの時間外労働」
「アフロディーテと日本の母子家庭の貧困問題」
「アフロディーテとハラスメント.女性からのセクシャルハラスメントにどう対処するか?」
「アフロディーテとウクライナ戦争」
「アメリカ大統領選挙における、アフロディーテ」
「多血症や、ヘモクロマトーシスに対するアフロディ療法.大量鼻出血による新しい瀉血法」
「ED治療の今日.PDE-5阻害薬か、アフロディーテか」
・・・・・・・
攻略方法とか、そういう演題はないのはなぜだろう?
なかなか時代にあった演題が多いかもしれない.
会場には人が集まり始めている.300人は収容可能な、階段講義室のような部屋である.はるなの家にはこんな部屋もあるのか.
「大学の講義室だな.これだと医学部の5年6年生の臨床講義、全員入れるな・・」
ルシフェルは今更ながら感心する.ドクトルも同意する.
正面、前の方に、子供が3人座っている.なんと、愛ちゃん、健ちゃん、海丸君である.
健ちゃんは、熊の絵の入ったメモ帳と色鉛筆を持って勉強する気満々である.
海丸くんと健ちゃんの間にちょこんと座った愛ちゃんも、
「あいちゃん、べんこする・・・」とニコニコしていた.
ママが、慌てて講義室に入ってきた 「健ちゃん、ダメでしょ、子供がこんなとこきちゃ」と健ちゃんと愛ちゃんをその場から強制的に排除しようとするが、健ちゃんは抵抗する
「嫌だ、嫌だ、僕も勉強したいんだ・・・」
「子供のうちに勉強しなくていいことです」
「嫌だ、勉強したい・・・」 健ちゃんはテーブルにつかまってなんとかその場に留まろうする.
ママは健ちゃんと愛ちゃんをラグビーボールのように、両脇に抱えて、受付のスタッフに「すみません、お騒がせしました・・」と謝りながら、部屋を出て行った. 部屋の外で、健ちゃんの声がする.「僕は、勉強がしたいんだ」段々とその声は遠ざかる.「愛ちゃんもね、おべんこしたーい」愛ちゃんがママに訴える声も聞こえたが、次第にその声は遠くなり聞こえなくなった.
学ぶことに大人も子供もないとは思うが、お子さんにはいまひとつピンと来ない話である、ということであろう.ピンと来ない話は聞いても身につかないだろう.
実際の教育論でも、この問題はよく論じられているらしい.
偉い先生も言っているようである.
モンテッソーリ教育では「子供が興味を示したときが学びの適期」と考える.
ルソーは「発達段階に合わない学習は空疎で有害」と言った.
一方でソクラテス的には「理解できなくても、問いや体験が後で芽吹く種になる」ととのことである.
学会につきものの、ランチョンセミナー.あれがあるから、会場から出ないで昼ごはんが食べられる.
共催オリンポス工業株式会社と、愛染結婚相談所.キッチン・ヘスティアの特製弁当とか出るそうな.
ランチョンセミナー1 大講堂
ヘパイストスの演題:浮気現場を押さえる金属製のあみ.「天網恢々」
ランチョンセミナー2 第二講義室
ヘルメスの演題;浮気現場をいち早く、町中に伝える「ヘルメス情報通報システム」
ランチョンセミナーのお弁当はタダである.ただし、ファイルの中のアンケートはちゃんと書いてあげよう.メールアドレスと所属も書いておくと、後で連絡をくれる.演者には、いろいろ、制約があるらしい.同業他社の宣伝にならない工夫があるらしい.二つの講演を聞くことはできないから注意しよう.
企業の展示ブースも盛況である.
1. オリンポス工業株式会社ブース 新製品「浮気捕獲用ナノワイヤメッシュ《天網恢々》」を実演. デモ人形を使って「不倫カップル捕獲ショー」開始.
2. 愛染結婚相談所ブース 「最新AIマッチングシステム」デモ. 参加者がスマホでQRコードを読み込むと、勝手に「おすすめのお相手」が表示される.
3. ヘルメス商会ブース 「情報通報システム」体験コーナー
4. ヘスティア厨房ブース 特製弁当の試食. 「竈で炊いた神米ご飯」「女神の愛情おにぎり」「ハート型卵焼き」.いつの間にか、参加者の列が会場の外まで伸びている.実は一番人気がヘスティアの厨房であった.
演題の内容は、ご想像にお任せするが、参加者にはさぞや、実りの多い学会であったことでしょう.




