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学ぶことは多い、しかし苦痛ではない②「夢を持って学べ!ノーベル賞週間始まる」



 暑かった夏が終わり、9月も半ば過ぎまで暑い日が続いたが、9月末頃からようやく、秋らしくなってきた.10月の最初の日曜日である.


はるなのお父さんの書斎、今や、「別館、図書室」となった、一室に皆が集まり、思い思いの時間を過ごしている.


子供たち、海丸君、キューピー、健ちゃん、愛ちゃんは、皆キッズルームにいる.男の子たちは、初めはごっこをしていたが、今はおとなしく本を読んだり、勉強中である.愛ちゃんはママに絵本を読み聞かせてもらっている.「牛若丸と弁慶」、らしい. 

そのほかに、

 山姥のにしき

 彦一ばなし

 笠こ地蔵

 ヘレンケラー

 キューリー夫人

 タツノコ太郎

と言った本を棚から持ってきて順に聞かせてもらう予定である.


 別館図書室のキッズルームは防音設備が完備しているから、勉強スペース、閲覧スペースの大人たちの読書やら勉強の邪魔にはならない様になっている.だから親御さんたちは安心して読む聞かせができるというわけである.

 視聴覚設備も完備されているから、いろんなビデオやDVD、テレビを見たり、楽器や、歌の練習もできうる.しかし、ピアノは置いてない.誰も弾く人がいないからだ.ヤマハのクラビノーバが隅っこにあるが埃をかぶっている.クラビノーバ(Clavinova)とは、ラテン語で「鍵盤楽器」を意味する "Clavier" と「新しい」を意味する "nova" を組み合わせた造語であり、最新技術を結集させた「新しい鍵盤楽器」という意味合いをもたせている、のだそうな.はるなは昔ピアノを習っていたことがあるそうだが、すぐに辞めてしまったそうだ.


「あれ、キューピー、八幡様の修行の後、大人になったんじゃ?立派な青年になってお母さんの事業の手伝いをしているはずでは・・・・」


「嫌なこと追求してくるね、お客さん.そりゃ、俺は、キューピーがいっぱしの大人になったって言ったよ、でもよ、海丸君とともダチってのは設定どうしろっつうんだよ」

なんかクレームを言いに行ったら逆ギレした、危ない会社の人みたいな作者になってきた.もうちょっと抑えて.

「いえいえ、失礼いたしました.海丸君もキューピー君も、神様のお子さんということにはご納得いただけてますでしょうね.」

「はあ、まあ、私もちゃんと読んでますからそれはわかっているつもりです」

「神様は、時間と空間を自由自在に動き回れるということも」

「はい承知しております」

「なーら、話は早い.キューピー君も神様、しかもアレスさんとアフロディーテさんをご両親に持つ、言わばオリンポスの中でもセレブのお子様です.だから、子供のカッコ、大人の格好は自由に決めていいのでございます」

「はあ、そんなもんでしょうか」

「はい左様でございます」とクレーマー読者をなんとか納得させたところで、物語を続けよう.


 ポセイドンはいない.北太平洋の漁に出かけている.今年は秋刀魚が、結構豊漁らしい.


 ハーデスもいない.夏が暑かったということは冥界もおそらく忙しかったのだろう.あちこちで戦争もあるし、自然災害もこの頃は激甚であるので.


 ルシフェルは相変わらず.しかし彼は、何やらむづかしそうな本を読んでいる.

「精霊医学」の本だったりするとそれはむづかしそうに見えるだろう.はるなはちょっと読める様になったのだっけ?ドクトルはいまだに、地獄の書籍については読解することはできないらしい.


 はるなはネットを見たり、本を読んだりしてしばらく図書室を出て行った.

珍しく、ヘスティアおばさんもきている.はるなと時々何やらひそひそと相談している.その話に愛ちゃんと健ちゃんのママも加わって何やら相談している.


 ところで、この頃愛ちゃん健ちゃんのママ、どうやら精霊の声が聞こている様である.「大人になってからは珍しいみたいですけどね、でも外国語も大人になってから勉強すればできる様になりますしね」ドクトルはなんで愛ちゃんのママが精霊の言葉が聞こえる様になったのかはよくわからない.子供達に影響を受けて親も成長する、ということなのかもしれない.

 このママ、覚えていらっしゃる方もいるかと思うが、アフロディーテの学会の時、もうそこそこ大きくなった、健ちゃんと愛ちゃんを、ひょいと小脇に抱えて、テーブルを乗り越えて、走って会場を出て行った、あの女性である.あの時会場のスタッフやら参加者は、あっけに取られて見ているだけであった.まあ只者ではない人ではあるのでしょう.


 デメテル母さんは、外と家の中を行ったり来たり.作業着を着ている.


 アテナと四天王も大人しく読書をしている.


 静香は、半導体関係の本を自宅から持ってきて読んでいる.別館の図書室にもドクトルの蔵書にもあまり、電子関係、工業関係の本はない.弱点かもしれない.それを補うということで彼女の仲間に加わった意味はは大きい.


 ドクトルは、はるなのお父さんの勉強机で、糖尿病の勉強をしている.なんでも、1型糖尿病が、感冒等の感染をきっかけに起こる.自己免疫機序で、膵臓ランゲルハンス島のβ細胞破壊が起こり、インスリン不足になるらしい.そのことが刺さり、詳しく勉強をしようと机に向かっているということらしい.朝倉の内科学、が一番最初に見る本だが、この頃は脳外科医といえども最新の内科的知識も必要と、 Harrisonのinternal medicineをなるべく読む様にしている.(今あるのは、21st.edition.もうすぐ22版が出るらしい.買おうかな、どうしようかな・・・)英語は結構苦手なのだがそれでも読解にかかる時間は短くなってはきているのかもしれない.

 

 おや、インスリンのこと、そういえば、ベストとバンティング、ノーベル賞取ったのは1921年でしたっけ、もうすぐ今年の受賞者の発表、「ノーベル週間か・・・」


「はーい、皆さん、おやつの時間ですよ」と、はるなと、ママとヘスティアのおばさんが、ホットケーキと紅茶を持って入ってきた.

「みなさん、手を洗ってきてください」はるながいうと、子供達は、皆「はーい」と手を洗いに行った.ルシフェルと、ドクトルは、手を洗わずにテーブルのところにやってきた.

「ダメダメ、だめ、め!」とヘスティアおばさんに叱られた.左手を腰に、右手人差し指で指さされるかっこ.

「ダメダメ、だめ、め!」と、同じ格好をした愛ちゃんにまで、いわれてしまった.

二人のおじさん、しぶしぶ手を洗いにいった.


 皆がテーブルに集まる.もちろんデメテル特製の小麦粉を使って作った.小麦粉はデメテルが倉庫から出してきた.それで母さん、作業着きていたのか.


「ねえ、ねえ、ドクトル、ノーベル賞って何?」海丸君が聞く.


「ノーベル賞というのは、ダイナマイトを発明したアルフレット・ノーベルという人の遺言で創設された賞です.ノーベルはダイナマイトで莫大な財産を築きました.具体的にいくら遺産を残したのか、とか、そういうことは分かりません.ダイナマイト、戦争にも使われたでしょう、それによって命を失った人もおおいことでしょう.ノーベルには、罪滅ぼしの意味があったのでしょうね、この莫大な遺産を人類に貢献した人に賞金として与えたいということで、


医学生理学賞

物理学賞

化学賞

文学賞

平和賞

を与えるということになったのです.


1960年代になって、ノーベル経済学賞というのも創設されたみたいですが、これは、ノーベル財団的には、「ノーベル賞ではない」ということみたいなのですが、その辺の事情はわかりません.」


「ドクトルの知り合いにいんのか?賞金もらった人とかよ」

四天王の玄武が聞いてきた.

「いえいえ、まさか、この賞ができてからもう、100年以上になりますけど、受賞した人の業績というのは、ものすごいのばかりです.中には歴史的に検証されて、あまり意味はなかった受賞ですねというのもあるのは事実でしょうけどね.一度もらったら取り消しはないのではないのでしょうかね.あと亡くなった人には授与されないみたいですよ」


「へーどんなことしたらもらえんの?」アテナの質問である.彼女はもしや自分も狙えるのではと思っているかもしれない.

「レントゲン、って知ってるでしょ?X線発見した人.」

「うんうん」

「1901年の物理学賞の受賞です、医学賞ではなかったのですね」

ホットケーキを食べながら、皆が話を聞く.特に子供たちの目が輝いている.

「うんうん」と海丸君

「ほうほう」とキューピー.

「なるほどなるほど」とちょっとお兄さんになった健ちゃんも.愛ちゃんは例によってニコニコしながらお兄ちゃんたちの話に加わろうとする.


「キューリー夫人とか、彼女は2回取ったそうですよ.あとほら、みんな知ってるアインシュタイン、相対性理論で有名でしょ、でも彼の受賞理由は、光電効果の発見らしいですよね、他には、皆知ってるかどうかだけど、エガス・モニスていうポルトガルでしたっけね、脳外科の先生なんです.ロボトミーという手術を開発したということで、受賞してますね.何年でしたっけ?1949年か.それに異色の受賞者として、ほらこの前に勉強した、動物と話ができる、ローレンツ先生、「ソロモンの指輪」の先生、あの先生は動物行動学でノーベル医学賞取ったのですよ」


「じゃ、健ちゃんも愛ちゃんも草花と話できるから、ノーベル賞取れるの?」

「え、へん」と健ちゃんがなんか自慢げである.愛ちゃんも「えっへん」である.なんでもお兄ちゃんの真似をする.


ドクトルが続ける.子供達はうんうんと聞く


「日本は戦後初めて、湯川秀樹先生が物理学賞を受賞したのです.その後は、物理学書の受賞が多くて、時々化学賞とか文学賞、平和賞を受賞して、1987年に初めて利根川進先生が、医学生理学賞を取りました.私が医学生の頃です.なんか先を越された、みたいな感じでした.今から思うとなんで先を越された、と思ったのかよくわかりませんけどね.2000年以降は、毎年の様に日本人の受賞者が出たのはニュースで知ってますよね.」


静香の質問は、「トランジスターも、発明した人、ノーベル賞取ったんでしょ?」

「お、詳しいですね、トランジスタの点接触型トランジスタの発見とその後の実用的なトランジスタの考案という功績により、ウィリアム・ショックレー、ジョン・バーディーン、ウォルター・ブラッテンの3名が1956年にノーベル物理学賞を受賞しました.」


青色発光ダイオードも、発明に関わった人はノーベル賞取ったんです.

「日本人が3人ですよ.すごいでしょ」何故かドクトルが威張る.

「あんたが取ったわけじゃ、ないよね」アテナがすかさずツッコミを入れる.

「そうでした」少し申し訳なさそうにしてドクトルが続ける.


「発光ダイオード、青い色の光を出すには、窒化ガリウムを結晶化するのが困難で不可能だと言われていたそうですよ.窒化ガリウムを用いた高輝度の青色LED開発に関して、1986年に、赤﨑勇、天野浩らが高品質、高純度のGaN結晶の結晶生成に成功し、天野浩は不可能とされていた「PN接合」が可能だと初めて証明した、1993年に中村修二が、世界に先駆け高輝度青色LEDを発明し、実用化したとありますね.この発明によって中村修二が2014年に赤﨑勇、天野浩とともにノーベル物理学賞を受賞したそうですよ.」


健ちゃん、日本人と聞いてまた「えっへん」だ


「最近ではノーベル医学賞、山中伸弥先生とか本庶佑先生もとったでしょ.」

お、はるなもちゃんとニュース見てるね.


「そう、2018年の、大阪であった脳神経外科コングレスっていう大きな学会で、本庶先生の特別公演があったのですよ.腫瘍の免疫反応にブレーキをかける、PD -1ていう、受容体なんですが、その発見で、抗体薬を作って、がんの免疫治療を進歩させたんですね.私はというと、学会場から抜け出して遊びに行っていた.時間になったら会場に戻ろかな、どうしよかな、と思っていたけど、結局行かなかった、講演聞き逃したのですね、そしたら、なんとその年医学生理学賞、本庶佑先生だった!」


「ドクトル、あんた、何やっての?やる気あんの」アテナに喝を入れられた.

「全くだね、おめえ何やってんだ、おおかた悪い遊びでもしてたんだろ、う?」

とルシフェル.しかし、あんたにだけは言われたくはない.


ホットケーキはヘスティアおばさんと、はるなとママの特性である.バターと、ホイップクリームと、いちごのジャムと、メイプルシロップが置いてある.お好みをかけてくださいということだが、子供も大人も、ホットケーキには断然メープルシロップである.


皆が「うまいうまい」と喜んだのはいうまでもない.


おやつはもちろんだが、ノーベル賞の話を聞いた、子供たち、の目はキラッキラである.

「僕、ノーベル賞、取る」海丸君は、いう.「もっと勉強する!」


「僕もノーベル賞取りたい.海丸君と競走する!」健ちゃんがいうと

「あいたんもノーベルちょー、とりたーい」またお兄ちゃんの真似である.

「よーし、僕は大金持ちになって、キューピー賞作るから、みんな頑張って、色々研究してくれ、みんなが最初にとったら友達として、誇りだ」事業が、いい方向に乗ってきキューピー君だ.今は子供の格好はしているが.会社に行くときは立派な副社長になるのだ.


子供たちはみんなで「おお!」というとそれぞれの勉強に戻っていった.


先人の功績には、子供の夢を膨らませる働きがあると思う.今年のノーベル賞は、誰が取るのでしょうか?






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