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巫(かんなぎ)、精霊と人との仲介者⑤「和解、そして、大天使みたび!」

かんなぎ、精霊と人との仲介者⑤「和解、そして、大天使みたび!」




 公園の中で比較的広い場所に立った、ルシフェルは例によって、孔雀明王の真言を唱える.星空は曇り、あたりのいろんな方向から風が吹いてくる.風は渦を巻き、大地からは、七色の光と、雪割草の精霊が、一斉に飛び出してくる.しかし今日は様子がおかしい.雪たちの元気がないような気がする.あと、まばらにしか出てこない.

「わーい!!!」と言う感じがない

「ほーい・・・」と精霊がめんどくさそうである.


七色の光、渦を巻き、精霊たちを一緒に巻き込み、白色光になるところまではいいのだが、光の渦巻き、これもいまひとつ元気がない、ルシフェルの体も一緒に光の渦が包み、次第に彼の体は巨大化していき、羽も生えてくるのだが、なんか様子がおかしい.七色の光、白色光になったあたりから、次第に暗くなり、大きくなりかかったルシフェル体は再び萎み始める.生えかけた羽、2枚、揃う前にしぼみ始めている.左右不揃いの羽ができかかったところで、「わーい!」と言う、精霊たちの声は低調となりやがて聞こえなくなった.


ルシフェルは再びとの姿に戻っている.ただし、着ていた服は皆、裂けて落ちてしまったから、新しいジャージを投げて渡してある.


「は?」静香は何が何だかわからない.

「あんな、精霊たちと喧嘩してるな」

ルシフェルにはお見通しである.

「あんたの精霊たち、あまりに元気がなさすぎるからな.」


あんたの家にある雪割草の鉢植えは全部でいくつだ?5つほどでしょうか?じゃそれみんな持って、新潟の山に行くぜ?仲間との再会だ!

ルシフェルのいう意味がわかったのは、アテナだけである.アテナは「おう!」と拳を振り揚げて、「ヤッホー!」と歓喜の声をあげている.他の皆は訳がわからない.


翌朝早速、新潟に旅をすることが決まった.


ルシフェルと、静香、同行するのは、はるなに、アテナに四天王、そして健ちゃんと愛ちゃんとママに海丸君、さらになんと、デメテルのお母さんである.結構な団体旅行になってしまった.ドクトルは仕事だから行かない.いや、いけない.ウィークデイにはなかなか休めない.


それぞれに思惑がある.

静香は手元に残した雪たちと、山野に戻した子供達との仲直りを

ルシフェルとはるなはそれを見届ける役割.


アテナと四天王は、上越新幹線沿線、新潟の食べ物が目当てである.彼らは新潟が初めてである.上越新幹線、いろいろ調べた.いきの新幹線で食べる弁当、なんとかして、高崎駅のダルマ弁当を買う作戦を立てている.新潟県内に入ると、幻のあられ、「サラダホープ」が買える.さらに元祖浪速屋の柿の種、なんとピーナッツの入っていない柿の種が缶に入って売られているというのだ.あと気になっているのは、「笹団子」である.ドクトルも新潟県は長いので、よく知っている.彼らのミッション、皆、ドクトルの示唆によるものの可能性もある.


健ちゃん、愛ちゃんの兄妹、新幹線が初めてである.ママはもちろん、海丸君も兄妹のお兄ちゃん役・子守役である.


そして、デメテルのお母さん.新潟平野に広がる、黄金色の田圃を「視察」が名目である.いつもドクトルが、「上越新幹線、時速300km/時の高速で、黄金色の新潟平野を駆け抜けるときに日本人として生まれたことを誇りに思う」その意味を確かめにいくというのが本当の目的かもしれない.


朝、早めの時間、平日の上越新幹線、東京からの場合は自由席でも大体座れる.以前は、MAXという、二階建て新幹線が主流だったのだが、その車両は数年前に廃止になってしまった.ドクトルと、静香は非常に残念な気持ちのようだ.自由席、階段から遠い、1両目から5両目くらいまであるから、新潟行きは1号車が最後尾で、4両目あたりから乗って、車内を前の方に移動すれば、座れないことはない.ヒトの波を避けたりしないとダメということもない.東京駅では改札の前が人が多いかもしれない.皆が無事に座れた.MAXの時には、ドアの近くに引き出し式の椅子があったのだが、それはないらしい.ドクトルが教えてくれた、上越新幹線の乗り方.正月とかお盆休みは上越新幹線とはいえ混むので、最初から座席に座ることを諦めて、入り口の引き出し座席に座ることが多かった.二階建ての車両の時は、必ず2階に座った.1階だと、ホームよりもさらに低いところに窓があるから外の景色を見ることは絶望的だったから.


「新幹線、わーい」健ちゃんも新幹線は初めてである.

「はやーい」と愛ちゃんははしゃいでいるのだが、隣では埼京線の電車に追い越されていく.大宮に着くまでは高速走行はない.高速走行でなくても、大好きなお兄ちゃんとか海ちゃんがいるから、愛ちゃんはワクワクしている.


車内販売は今どうなんだろう?東海道新幹線、少なくともこだまはもうない.上越新幹線はどうなのだろう?以前にはダルマ弁当を車内販売で売りに来ることあったのだが.

今回は高崎駅でどうやって、弁当を買うかということ問題だったが、四天王のコンビネーションプレイで、無事人数分の弁当を買ってきた.たくさん買ったから駅の売店のおばちゃんには喜ばれたらしい.アテナと四天王、他のみんなも喜んで食べたのはいうまでもない.赤いプラスチックの容器、何かに使うことはまずあり得ないとは思うのだが、なんとなく捨てられない.家に持って帰ることにした.高崎を過ぎて、上毛高原は通過するだけ.越後湯沢に着いた.湯沢駅から、ガーラ湯沢行きという新幹線がある.最も短い区間らしい.スキー場直通らしい.アテナと四天王は興味津々である.

「今度あたしがスキー教えてあげるよ」静香が言ってくれる.上毛高原の前後から、トンネルが多い.越後湯沢を出発して次の浦佐には止まらない..間も無く、長岡についた.


 長岡駅から、車で自生地に行く.少し林に踏み入ったところに、静香が植えた雪割草たちがいた.皆青々とした葉っぱ、ひっそりと、しかし元気に暮らしていた.


「みんな久しぶりだね」静香が語りかける.

「静香?静香が来てくれた?」

「静香、きてくれた、ひさしぶりだね」

「静香、久しぶり、元気だった?兄妹たちはみんな元気かな?」

「元気かな?」


「みんな会いたいだろうと思って連れてきた.ほら」

「兄妹たち、皆懐かしいね」

「兄妹、仲間たち、皆元気でよかった、あえてよかった」

「静香ありがとう」


手元に残した、子達も「静香、ありがとう、ほんとは一番辛いの静香だったものね、ごめんね」

「静香ごめんね・・・」

ここに仲直りが成立した.


「で、これからお前たちどうするんだ?」

「ルシフェルのお父さん」

「お父さんも来たの、わーい、ルシフェルの父さんだ」

「ルシフェルのお父さんも来た」

「ここに引き続きいるか、静香についていくか?どうするかね?」

「皆、ここで暮らす方がいいみたい」

「いいみたい」

「兄妹たちはどうするかな?」

「皆と一緒にいたい気もするけど・・」

「やっぱり静香と一緒に暮らしたいよ、だからまた帰るね」

「寂しいね」「寂しいね、でもいつも一緒だよ」

「いつも一緒だよ」「・・・・」


自生地組は引き続き新潟にとどまり、静香の家のくみのものはまた東京に戻ることになった.長岡駅から今度は新潟行きの新幹線に乗り、燕三条で降りた.弥彦線という在来線に乗り、弥彦山の麓まで.

 伊夜日子大神という弥彦山の神様が、ルシフェルと、デメテル、アテナのところに挨拶に来た.ルシフェルの戦友の一人でもある.彼の案内もあり、そこで自生した雪割草を見た.燕三条の駅には、地元の産業である、洋食器が展示してある.ナイフにフォーク、先の割れたスプンやら、果ては手術用のハサミやら、ピンセットまで駅前に展示してある.アテナの四天王は、鍛冶屋のヘパイストスの弟子でもある.精巧な洋食器とかハサミにしばし見惚れた.せっかくだから、と新潟まで足を伸ばす.

 

 途中の新潟平野の田んぼをデメテルは感慨ぶかげに眺めていた.

「はるなの庭の田んぼよりもずっと広いね、どんだけ、米が取れるのだろう・・・」  

 豊穣の女神は思う.


 子供達は疲れたのか皆眠ってしまっていた.

アテナと四天王は、新潟駅で、笹団子と元祖難波屋の柿の種、サラダホープを買い込んだ.帰りは新潟駅から、東京まで途中下車なしである.特に何事もなく、東京に着いた.改札入ってすぐの売店のお土産やさん.おや、とアテナが一つのお菓子を見つけた.

「万代太鼓?」アテナが、静香に聞いた.「これは、どんなお菓子?」

「それね、新潟の隠れた銘菓、と私は思うね.私の生まれ育った上越にはあまりないけど、新潟来た時、買って帰ること多いよ.」

彼女の説明によるとこうだ.「バウムクーヘン、っていうのじゃないかもしれないけど、しっとり、ケーキの中にたっぷりの生クリームが入っているの」

アテナと四天王、愛ちゃんと健ちゃん、二人のママまで、興味津々である.何箱かかった.ドクトルにもお土産で買って言ってあげましょう、と静香も毒とるように二箱ほど買った.

 帰りの新幹線は、自由席、東京に向かう自由席は一番前の車両だ.自由席でも座れないことはない.みんなでまとまって座ることができた.帰りは途中下車はなしだ.

お土産のつもりで買ったお菓子、新幹線の中で半分ほど食べてしまった.

・・・・・・・・・・・・

例の公園に、ルシフェル、静香にはるな、アテナ、デメテルの母さんがいる.仕事終わりのドクトルも合流した.皆、遊具には座っていない.皆立っている.遊具は使用禁止なのだから.貼り紙は新しいのが貼ってあった.


少し広い場所に立ったルシフェルは、孔雀明王の真言を唱える.

空は曇り、あちこちから風が吹いて、ルシフェルの周りで渦を巻く.地面からは七色の光と、一斉に雪割草の精霊が飛び出してきた.今回は皆元気よく「わー!!」と飛び出してきた.精霊も七色の光も渦を巻きながら、合わさり、白色光となり、ルシフェルの体を包む.彼の体はみるみる大きくなる.光の渦は何周もぐるぐるとルシフェルの体を駆け回る.巨大化したルシフェルには、孔雀の翼が生え、七色に輝いていた.今回は翼は左右対称だった.


喜色満面、静香の顔は少し紅潮しているように見えた.そして呟いた.

「くわっこいい!」


「まあな!」

ルシフェルはしばらく空を見上げて、そのままの格好でいた.


「あれ、今日は疲れたって言わないね」とアテナ.

「ほんとだね、いつもは数秒で疲れた、なのに、あんたも少しは修行したのかね」と姉であるデメテルがいう.

「そうですね、長旅で疲れたりしていないのですか?」ドクトルがお医者さんらしく心配する.


突然はるなが叫ぶ、「あー、着替え持ってくるの忘れた!!」


「じゃそろそろ、元の姿に・・・」

「ダメー」はるなの悲鳴が近隣に響いた.

「みんな、ありがとう」小さな声で静香は言った.


ドクトルがきていたジャンパーをルシフェルの腰に巻いて帰ったらしい.他の人にはみられなかったということである.


この日から静香も「別館」の仲間となった.


 



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