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巫(かんなぎ)、精霊と人との仲介者③「雪割草と静香」



 この頃、訳のわからん事件が多すぎる.殺人や強盗といった凶悪事件、別に恨みはない、生活が困窮しているわけでもない、もちろん政治的・思想的な背景はない.

 

「じゃ、なんで?」静香には理解不可能な事件がこの頃多い.自分が被害者にならないように気をつけなければと思う.もちろん加害者になる可能性は、ないと自分を信じているのだが・・・


 結婚相談所を出て、夜道を歩いて静香は家に帰った.結構散らかっているが、ゴミ屋敷ではない.本来は寝室とか、クローゼットとかそういう目的の部屋はスッキリと片付いている.床には鉢植えの草がある.雪割草である.からになった鉢が、いくつも置いてある.鉢の底に入れる小石やら、鹿沼土、赤玉小石が未開封のまま袋ごと置かれている.小さいジョロがあるが、使われた形跡がない.棚の上の方に雑に放置されている形だから.植木鉢の水やりは、300mlくらいの水差しでやるらしい.


 「ただいま」静香が挨拶をするが、皆は何も言わない.

「ただいま!」もう一度、強く大きめの声で言うが、やはり返事がない.

「ただいま!!」さらに声を強めていうとやっと、サワサワと風がそよく気配がして、チリンと風鈴の音、囁くような声、一人ではない.何人かの子供の声.


「わ、静香だ、静香が帰ってきた、ひそひそヒソ」

「なんだもう帰ってきたのか、どうする、あのことまたいう?」

「でも、あの女、また、しょうがないでしょ、って逆ギレするかもよ、」

「なんかそれも腹立つしな・・・」


(サワサワさわ)

「あ、水だったわね、ごめんごめん・・・」

雪たちは何も言わない.


雪割の精霊たちと、静香の間には何か事情がありそうである.

雪たちにしてみれば、まだ静香のことをちょっと許し難い.

静かにしてみれば、あれはあれでしょうがなかったのだと思う.なかなかお互いに事情を話して、その事情をわかるまでに話し合えていないのだ.


「いい加減、みんな機嫌なおしてくれないかな・・・」

雪たちは「シーーん」相変わらず無視である.無視でないにしても、冷淡な対応である.この物語で雪割草にこのような態度をされる人は、初めてだ.

 

 水差しで鉢ごとに少しずつ水をやる.ちょっと機嫌をなおしたみたいで、

「静香、水、ありがと」

「ごちそうさま.喉乾いてたんだ」

「ありがと、でもアレとこれは別だからね」


静香は思う.アレはほんとにしょうがなかったんだって、と思うがなかなか理解してもらえないようである.


・・・・・・

 東京に越してきてからしばらくしてからのことである.朝、いつものように挨拶すると、いくつかの鉢植えの雪割草の葉っぱに、白い斑点が見られる.斑点が見られる子とそうでない子のがある.なんだろ、朝の忙しい時間なのでその日はそれきりになっていた.仕事が終わって、帰宅してから、じっくり見てみた.雪割草の育て方の本を見たが、よくわからない.そもそも人間の病気ですら、訳がわからないのに、草花の病気のことなどわかる訳がない.

本屋とか図書館に行き、片っ端から調べてみた.写真のついた本を見てみた.同じような葉っぱの白斑・・・・

「あ・・、やっぱりわからない、どうすれがいいのよ」

病院に行って相談することではない.獣医でもない.樹木のお医者さん、そんな看板の病院なんか見たことがない.稀にテレビで公園なんかに専属の樹木医がいるらしいのだが、どこの誰がそうなのかなんかわかる訳がない.農学部に行った同級生もいない.新潟なら、知ってる人いるのだろうか・・・・

しかし、ほとんど夜逃げ同然に新潟を後にしてきたから、中学、高校、仕事の友達先輩には聞きにくい.それに以外かもしれないが、新潟でも雪割草を育てている人はあまりいなかった.時々、青空市みたいなところで売られていることはあった.あまり皆は関心を示さない.このお花にかわいい花ですね、「なんていう花?」と、新潟でも雪割草のことを知らない人がほとんどだったのだ.地味だからかな?育てるの面倒だからかな?


「とにかく、雪割草の葉っぱの病気、これをなんとかしなければ・・・」

しばらく、本屋と図書館通いが続いた.夜の仕事は休みにしていた.


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