海丸列伝③「別館は日々勉強の場所(漫画を読むのも勉強のうち・・・)」
子供神様と、日本の漫画、ということで話をしよう.
はるなのお父さんも、おじいさんもえらいお医者さんだったらしい.ドクトルも偉くないけど一応お医者さんである.はるなの家にもドクトルの家にも大量の漫画の本がある.
「え、お医者さん、漫画読むの?」
答えは、「読みます」
「むしろ好きです」という人が多いのではないだろうが.もちろん入学試験で色々勉強して、大学に入って、医学の勉強も大変でしょ、
「漫画読む暇ありますー?」というのが質問の趣旨らしい.
「時間は自分で作るもの」もしくは、「漫画読む時間は勉強とは別枠です」
ということになるのだろうか?
ただし、試験の前には漫画はなるべく読まないほうがいいらしい.試験の勉強は実際にできなくなるだろうから.はるなの家にあった本に加えて、この頃はドクトルが家から持ってくる.ブラックジャック、全巻(1から24巻.マガジン連載分のコミック、不思議なことに手塚治虫が亡くなってからそれ以後が出ているらしいが仕組みがよくわからない.仮面ライダーも石ノ森章太郎が亡くなっても新しい仮面ライダーが何十人も出ている.これはテレビの話であるが)、手塚治虫のブッダ全巻、火の鳥.作者は忘れた、へうげもの、これは最近ネットで買った、進撃の巨人全巻、働く細胞、ブラックでないほう、ドラゴンボール全巻、これは背表紙の絵が全部つながって一つの絵になっているのだ、竜が飛んでいる絵になる、北斗の拳は一部のみ、修羅の国とかになるとついていけなくて買わくなった、蒼天の拳全巻、花の慶次、スパイファミリー途中まで、と言ったところか.まあこれくらいだったら、あってもいいか.はるなの家にはもっとたくさんの漫画があった、ドクトルは読んだことのない本も結構あったのだった.Dr.コトー診療所、ドクトルの家にあったと思ったが、誰かにあげちゃったかな.あ、そうそう、ドクトルが家から持ってきたのに、「孔雀王」があった.昭和の終わり頃、ヤングジャンプというのに連載されたらしい.それによると、孔雀明王はルシフェルと同じだという説をとっている.本宮ひろ志「夢幻の如し」という本は織田信長が本能寺で死ななくて、その後、日本をまとめて、朝鮮から大陸に進軍して、ジンギス・カーンの生まれ変わり、後継者としてヨーロッパまでを制圧するという壮大なドラマだった.同時代がすごい人がいっぱい.イワン雷帝やら、エリザベス1世とか、フェリペ二世とか.ほかにはヌルハチ、ホンタイジの親子は信長親子(息子が服部半蔵の孫でむぼうまるというらしい)の盟友だった.
海丸、キューピーははるなの家「別館」にいる時は漫画を読むことが多い.ポセイドンもたまにくると、子供たちと一緒に漫画を読む.ペルセポネのお迎えできた、魔道の旦那も冥界に帰る前の時間潰しに、漫画を読んで過ごす.奥さんが着ていく服を選んだり、身支度とか、お化粧とかする、5、6時間、暇つぶしのつもりがあっという間に時間が過ぎるからなかなかいい具合である.きりのいいところで呼びにきたら尚いいのだが.「あなた、支度が整いました」というときに「え、これから新しい巻読もうと思っていたのに」となると、魔道さん、次に地上に来るのは4か月以上先、どうかすると1年後の話だから、「うーもーちょっと」となるかもしれない.ちなみにはるなの家の本は持ち出し禁止である.皆それぞれに好みがあるそうだから後でどんな漫画を読んで感想はどうか聞いてみるといいかもしれない.
「ねえねえ、父上、このカサンドラの門番、ライガ、フウガって、風神雷神じゃないよね」
「うー?何だ〜」海丸君はお父さんのポセイドンを「父上」、とよぶ.
「ほらこの門番、どうみても、仁王さんで、阿形と吽形にしか見えないんだけど」
「うーまあ、インドの神様みたいなヒラヒラしたのきてねえからいいじゃねえの」 お父さんである海の神は、自分が読んでいるのに夢中で、息子の質問に対する返事はいい加減である.
父上は花の慶次を読んでいる.養父の前田利久がもう今にも亡くなりそうなときである.痩せて小さなお爺さんである.今際の際で彼は息子を待っている
「慶次はまだか」おつきのものと看病をしている、お松様がそわそわしている、「慶次どのは何をしておいでなのじゃ」と.すると外で笛や太鼓、三味線のどんちゃん騒ぎの音が聞こえてくる.外はヒラヒラと雪が舞う.慶次が店の女の子と、おふうを引き連れて、雪の中で舞っている.扇で桜の花びらのように、舞う雪を受け止めるように見上げて、パラパラと仰いで、花びらを舞い散らすような、そんな舞である.
「父上、お茶でもどうですか」利久は、よろよろと庭に出て、皆はソワソワ、止めようとするが止められない、利久は慶次のたてたお茶を飲む.
「よき茶であった」
「父上、あの世でも、お元気で」
「こやつ、どこまでも歌舞伎おるは、ふふ」と言って慶次に抱き抱えられて利久は亡くなった.大変なのはそこからで、大男の海の男のポセイドン、例の目から鼻から大量の涙を流して「ぶえー」とお馴染みの大号泣である.海丸くんにそのシーンを見せて、
「なあ海坊、俺が死ぬときもこうやって抱きかかえてくれよな、おい、頼むよ、なあ」と自分が死んだときもこうやって抱えてくれよなと無理なこと言う.
「ええ、お父さんなんか抱えられないでしょ、そんな大男」
「そんなこと言わないで頼むよ、なあ」
「それにお父さん、死なないでしょ.偉い神様なんだから今で一体何年生きてるの、10000年?」
「あ、そうか、」と、自分が不老不死であることを思い出したのか、すぐに泣き止んだ.こんな調子で、今の海丸くんは小さいから、これからどんな大男になるか楽しみなのだが、しかしポセイドンを抱き抱えて包み込むほどの大男になるのは、大変だろう.
弟の大号泣を見て、冥界の王たる、ハーデス・魔道さんも同じところを読んだ.
「ほお、どれどれ・・・」しばらくして、
「ぶえー」魔道さんまで例の顔で大号泣である.
「おい、海坊みてみろよ、あの世でもお元気で、って慶次のやろう、洒落たこと抜かすじゃないか」と弟とは違った切り口で感動しているのだった.
海丸くんはやれやれという顔であるが、大人たちのこの反応、嫌いではない.
ドラゴンボールはあまり参考にならない.神々、皆空を飛べるし、時間も超えられるから.センズは一粒だけで何年分かのカロリーというのは味気ない、それに、もう少し食事を楽しまなきゃ、ヘスティアおばさんの苦労をなんだと思ってる、とか個人の格闘技を重視で集団の戦術を軽視しているとか、ルシフェルもポセイドンもハーデスもカメハメ波みたいな技、気を集めて、「ハー」と手の先から放射して山を吹き飛ばすことくらい、毎日やっているし、威力は数段落ちるが、、それしきのことは海丸くんでもできる.キューピーくんに至っては、この頃やっと当たるようになったとはいえ、人の恋愛をコントロールする弓矢を使える、こういう話は出てきこない.ポイポイカプセルみたいなの、結局アテナやヘパイストスは何もないところからいろんなもの作れるし、小さく畳んでポケットにしまわなくても不自由はしない.
働く細胞は人体というミクロコスモスの細胞たちを擬人化して表す、まさに汎神論を文学として表現した、近年稀に見る傑作であると、大人神様たちは仕切りに感心している.
はるなのお父さんの書斎は、漫画を読む神様たちで、いつもカオス状態である.しかし神々は皆さん、片付けをきちんとしてくれるからその点ははるなは助かっている.
デスノートを読んだハーデスは怒り心頭である.「ハー・デスノートにはそんな条文はない.冥界入国審査管理法に違反の疑いだ.このノートを作ったやつを即刻捕らえよ!」と命令を下したくらいである.冥界に入国を決めるのは私の専権事項であると.
「お、魔道さんと海丸の親父、きてたんかい」ルシフェルの兄弟たちはいい加減漫画には飽きたところのようである.
「じゃ、漫画じゃない本読んだらどうです?むしろそっちの方がたくさんありますよ」 何とルシフェルが漫画以外の本を兄弟に勧めている.
「おめえ、どうしたんだ?」とハーデスが心配そうに聞く.ポセイドンも「にいちゃん、あんまり悪さしすぎで、心入れ替えたか?それともおかしくなったか?泣かせた女の怨霊に取り憑かれたか?」
ルシフェルに対する兄弟の評価は思いのほか厳しい.
「俺も本当は勉強してるんだけどよ」と彼はブツクサ言っている.
「資本論」
「ローマ人の物語」、「ギリシャ人の物語」
「昭和天皇実録」
海音寺潮五郎の「武将列伝」「悪人列伝」 「吉宗と宗春」
司馬遼太郎の「坂の上の雲」「火神」「項羽と劉邦」・・・
捨て童子松平忠輝、影武者徳川家康、花と火の帝、 花の慶次の原作は「一無庵風流記」だ.漫画じゃないのどんなかな、あ、でも本の下にあって取り出すの面倒だから漫画でいいや.
「太平記」岩波文庫の黄色表紙だ.
「折たく柴の記」に「西洋記聞」 アントニー・ビーバー「第二次世界大戦」
辻邦夫「背教者ユリアヌス」お、なかなかいい本持ってるね、
J.フロイド「モーセと一神教」
「失楽園」岩波文庫の赤表紙「イリアス」に「オデッセイア」、ヘシオドス「神統記」、
「古代ユダヤ教」はマクスウェーバーの本だ.
「存在と時間」 「法の精神」 表紙がボロボロの「エミール」
「数学を作った人々」
「ファインマンさんご冗談でしょ」
渡辺淳一は、失楽園以前の作品か、
ポールボネ「不思議の国にっぽん」 池上彰さんの本は結構ある.佐藤優さんの本時々.「国家の謀略」とか、「国家の罠」とか.
捨てずに取ってある「脳神経外科」「脳卒中」「脳卒中の外科」・・・・ 「クリニカルニューロサイエンス」あ、これ私全部持ってます、お父さんも定期購読されていたんですね.去年休刊になったのですよ. 「
「あーでもなんか細かい字多いからな、この頃俺老眼で・・・」と冥界の王はいう. 「俺も漫画くらいなら読めるけど、日本の難しい本はちょっと」海丸くんのお父さん、もう少し息子さんを見習ったらどうでしょうか?
いつの間にかドクトルとはるなもいて、神様たちの読書風景を楽しそうに見ていた.




