デメテル列伝④「秋の収穫祭」
稲の刈り取りが終わりで重量をはかると50トンの玄米があった.予定通りの収穫である.一部を精米して、今年のお米を皆で食べた.デメテル母さんが改良と工夫とその豊穣の神としての経験の知識と力を結集した、新種米、「神々の夕映」皆の評判は上々だった.もちろんヘスティアおばさんがかまどの釜で、炊いてくれた.近所の子供達、その親御さん、もちろん、仲間の神々もおよばれした.これから豊作感謝のお祭りである.
今年は、日本の農林水産大臣も招かれて、試食をした.「うん、これはいける、名前がいい、神々の夕映、私はこう言うの好きです」コメントがまともだった.
「しん次郎、おめえ、もうちょっと気の利いたこと言えねえのか、おう.思いっきりボケるとかよ」ルシフェルが言った.
「そうそう、もっとあんたらしい感想いいなよ、まともじゃおもしろくないじゃん」アテナもいつの間にか大臣とタメ口で話す仲である.「そうだそうだ」と四天王も声を揃えて非難する.
ポセイドンは黙々と炊き立てのご飯を食べる.食事の合間に店をやる.ただし、お代はいただかない.おかずはヘスティアおばさんの厨房からいくらでも出てくる.そして今日はなんとディス・セットのシェフまで厨房を手伝いに来てくれている.彼はアテナとその四天王にとってはまさにヒーローである.その手からなる料理もたくさん並べられた.海の神ポセイドンが大量に魚を運び込んできた.秋刀魚にマグロにひらめにあじ、戻り鰹も旬だそうな.ぶりにはまだちょっと早い季節か、あとはイワシにいかにタコ、ヘスティアおばさんがちょっと困った、あんたこんだけ大量の魚、どうやって捌くのさ.次から次に焼いて焼いて焼きまくる.ヘスティアおばさんご自慢の木炭が大量にある.刺身にするのははるなの仕事、ヘスティアおばさんもはるなに教えてもらって魚を捌けるようになっている.タイの刺身に、塩焼き、シャフの作ったムニエル、ソテー、ポワレ.ヘスティアと、はるなもシェフに教えてもらうことは多い.魚の焼き方、フランス料理、いろいろあんだね、とヘスティアは感心している.秋刀魚の塩焼き、これはあみでやく.もちろんヘパのすみを使う.川を登ってきたばかりの鮭の塩焼き.アワビやら、サザエ、ホタテにうに、これらは皆、オリオンが、海に潜ってとってきた.彼はポセイドンの息子だから、海丸君にとってはお兄さんだ.あれ、アポロンの陰謀で死んだのでは?うー、この際だから、死ななかったことにしちゃいましょう.彼がいると物語の彩りが豊かになりそうだし.それに神の子であの屈強の男が弓矢が当たったくらいで死にはしないだろ.頭皮の怪我だ、怪我.オリオンは死ななかったことにしちゃいましょう.
ここで最もらしい、ドクトルが逸話を開陳する.
「私ね、20年くらい前、傘が頭に刺さった子供の手術したことあるんですよ.開業の先生から、『頭に傘が刺さった子供を見てほしい』てね.最初はね、傘をさした子かと思ったのですよ.意味がよくわからなかったのです.来てみてびっくり、頭蓋骨の単純レントゲン写真見ると、柄のところではなくて、放射状に出てる骨のところ、頭蓋骨を貫いて傘の骨が刺さっているのですよ.一体どうやって?と思うかもしれません.傘を思いっきり蹴飛ばして遊んでいたらそれが跳ねて、頭に刺さったそうでね、CT見ると、脳の方にまで入り込んでいるんですね.でもね幸いだったのは脳の表面の大事な血管は一切損傷していないし、脳挫傷も見られなかった.手術で取りましたよ.元気に退院していきました.私が考えるに、オリンポスの神々につながるものが、矢が当たったくらいで死ぬはずはない、と言う見解になりました.」乱暴なルシフェルとポセイドンは、
「そんなもん、引っこ抜いちゃったらいいじゃねえ」
「いやそれがね、手術の難しいところは、傘の骨が曲がっているところあるでしょ、それが折り返しになって、抜こうとすると引っかかるんですよ.あれをそのまま引っこ抜いたら、周りの血管破いて大出血でしたでしょうね.ピンセットで、傘が曲がらないように途中を押さえて、ゆっくりぬいたらうまくいきました」のだそうな.皆の歓声が上がる「おおー」と言う感じである.ドクトルはちょっとだけ得意になった.死ななかった当のオリオン、アルテミスとの関係も続いているが、処女神との恋は永遠にプラトニックである.そのアルテミスがとってきた、鹿やら、猪.皆で山で集めてきたキノコ、椎茸、しめじになめ茸、何と松茸もあるギリシャの人は最初びっくりしたみたいであるが、慣れると彼らにも臭いと、味は好みらしい.
「松茸、どこからとってきましたか?」買うと高いでしょドクトルは現実的な心配をする.
「それは、私のしりあいの山でとれました、とでも言っておきましょうか」はるなが言う.松茸、今年はどうなんだろう?高いのかな?ヘルメスが、ちょっと恥ずかしそうに、牛肉のステーキもありますぜ、
「え、お前どうしてそんなのあるんだよ、またアポロンのとこから盗んできたんか?あいつ怒るぜ」
「そんなアポロン兄さんのとこの牛じゃありませんぜ、今日のは和牛でさあ、ちょっと3頭ほど、しっけいー・・・・」
「ダメー」はるながさけんだ.
「冗談だよ」
「それは、私の差し入れです.知り合いの畜産業の人から頂き物です.お口にあいますかどうか」A5ランクの和牛のステーキは農林水産大臣から差し入れだった.実りの秋、皆で堪能した夜だった.そういえば、キューピーとアフロディーテは?愛染親子はこの頃ビジネスが順調らしい、結婚相談所である.キューピーの弓の腕が上がったから、本格的にビジネスを拡張中だそうである.八幡さまのおかげである.デメテルとペルセポネのお祭りの時は、この親子最初は小さくなっている.デメテルが声かけた、あんたたち、なんでそんな隅っこいいるのさ、「もう怒ってなんかいないから、早くこっちにおいでよ」ペルセポネとハーデスの一件、キューピーのしくじりに関しては両家ともとうの昔に仲直りをしていた.
楽しいお祭り、豊作の感謝のお祭りだから、人も神々も分け隔てなく楽しんだ.ルシフェルはお好み焼きと焼きそばを焼き、アポロンと、ヘルメスとディス・セットのシェフは牛肉の串焼きとかステーキを振る舞う.ポセイドンはイカ焼きとたこ焼きお店ばん、オリオンと海丸君の兄弟は、鮑とかホタテ、サザエ、焼きウニの番をする.子供達にも評判だった.
舞台の真ん中では、アルテミスとアテナが舞を披露する.そして赤と白の巫女の格好をした女性がもう一人いる.あれは誰だ?皆よく見ると、なな、何と、「ヘスティアおばさん?!」アテナとアルテミスと並んでもなんら遜色がない.ギリシャの皇女3人の舞は観客を魅了した.雅楽の音楽プロデューサーはアポロンが担当し、太鼓は四天王が叩く.ご飯余っちゃうかもね、と、お櫃に入れたご飯が余りそうだから、ヘスティアおばさんは、はるなに教わった、おにぎりを大量に握った.アテナも手伝う.こう言う形のご飯、戦場に持っていくにはいいかも、と考えながら.近所の子供とか会社帰りのサラリーマンも、手伝ってくれる.塩を振っただけのもあれば、鮭切り身、たらこ、梅干し、貝の佃煮、鰹節、海苔の佃煮、すじこにめんたい、中の具は握る人の好みで色々である.焼き鳥のおにぎりってどう?キューピーが海丸君に相談する.おにぎりはやっぱり鮭でしょ.
「鮑のおにぎりなんて結構いけるのではないかと、ずぶんは思うんだども」、とオリオンがいうと、
海丸くんが言う.「にいちゃんそれはねちょっと高級すぎないかな.・・」海丸はこの無骨ででかいにいちゃんが大好きなのだ.生きていてよかった.
「それもそだな.鮑はやっぱす、バター焼きだな」
デメテルは、夏に取れたのと、秋に撮れたの、ジャガイモをむして比べてみた.皆に感想を聞く、子供たちはじゃがバターを食べて「どっちもおいしー」ポテトのフライも好評だった.子供たち、その親たち、神様たち、皆でワイワイガヤガヤ、未婚の若い男女もたくさん来る.お祭りは出会いの場である.「それ息子よ、逃すな、」とばかりに愛染親子はちゃっかり商売を始める.ここでできたカップルの成婚率はものすごい.前にも触れたが、99.9%らしい.そもそも彼らが祭りに来る目的が出会いを求めて、なのだから.
ヘスティアおばちゃん、炊いたお米、余るかしらと、心配したお米、おにぎりにした分も皆で綺麗に食べてしまった.皆のお腹がいっぱいになるのと、ご飯とおかずがなくなるのが、大体、同時くらい.食材は余さず、不足せずで、よくこんなことができたのが不思議だ.片付けは皆で協力して行い.神も人も、大人も子供も、男も女もである.屋台のテントやら、テーブル、釜のレンガは力のある男たちが運ぶ頃が多い.薄暗くなりかかっている時、虫の声も小さくなってくる季節である.お腹いっぱいで眠くなる子が、はるなの家の居間で寝てしまう.神々と親たちが談笑する.寝た子供たち、一人一人に、ドクトルとアテナと愛染親子と、アルテミスとヘルメスが毛布をかけて回る.起こさないように、親たちが順次、子供を抱えたり背負ったりして帰っていく.片付けが終わる頃には、お客様たちは家路を辿っていた.残ったのは、神々と、神々の声が普段から聞ける、はるなとドクトルだけ.二人きりで話すことは意外と珍しい.
「美味しかったです」
「ええ、そしてすごく楽しかった」
「そうですね、毎年こんなだといいですね」ルシフェル一党も口には出さないが、そう思った、だろう.




