ヘスティア列伝②「かまどの女神は、台所仕事の改善に余念がない」
作者は一つ、疑問なのですが、ヘスティアという女神は、オリンポスのロイヤル・ファミリーの言ってみればお姫様なのですが、このように高貴なお方を、「列伝」で扱ってもよろしいのでしょうか?皇女の記述は、「本紀」でしょうか?
ご存知の方は教えてください.
さて、本題に入ります.
その晩、アテナはおばさん――ヘスティアの家に泊まりに来ていた.
冬の夜、カマドの火はやわらかく部屋を暖め、湯気と一緒に甘い匂いを運んでくる.
布団はすでに二組、並べて敷かれている.
火のはぜる音と、外の風の唸りだけが静かに耳に入った。
「ねえ、おばさん」
「なに、アテナ」
「おばさん、なんで結婚しないの?」
ヘスティアは薪をくべる手を止めず、ふっと笑った.
「なんでって……結婚って、めんどくさくないかい」
「そうかなあ、おばさん優しいし、ご飯おいしいし、お裁縫も上手だし……いいお母さんになりそうなのに.なんでかな、もったいないなって思うんだよね」
「ふふ、ありがと.でもね、周りの男にろくでもないのが多くてさ.自分の親父もそうだったし、弟たちも見なよ、あんなのばっかり.うちに遊びに来るくらいで十分だと思っちゃうんだよね」
「じゃあ……お父さんたちの面倒見るために、お嫁に行かないの?」
薪を押し込みながら、ヘスティアは大きく吹き出した.
「ははは!なんであたしが、あんな極道連中のために、自分の幸せ犠牲にしなきゃなんないんだい.よしとくれよ、冗談じゃないよ」
その言い方は軽かったが、どこか筋が通っている気がした.
アテナは湯呑を両手で包みながら、火越しにおばさんを見つめる.
たしかに、おばさんは結婚していない.けれど、極道者たちや、ヘパイストスのおじさん、そして弟子たちや自分にまで、きちんとご飯を作ってくれる.
その笑顔は、きっとおばさんなりの「平和で幸せ」の形なのだろう――とアテナは思った.
外は風が強くなり、窓の紙がかすかに鳴った。
二人は布団に潜り、火の名残りの温もりの中で、やがて静かに眠りに落ちていった.
世の中の女には二種類ある.ヘパイストスが嫌いな女と、ヘパイストスが大丈夫な女である.ヘスティアはヘパイストスを嫌いではない、というかむしろ買っている、信頼していると言って良い.技術的なアドバイスをしてくれるからだ.台所のいろんな技術もヘパイストスが整備してくれた.ヘパイストスが嫌いな女のことをヘスティアはだいたい、嫌いである.だからヘラとか、アフロディーテとヘスティアの嫌ヘパ派の女とはあまり仲がよろしくない.ヘパのことが好きなアテナのことはヘスティアおばさんも大好きだということである.
「ヘパの親方、薪を燃やすと煤と煙がすごくて、台所仕事の支障があるんだけど、なんとかなんないかね?例えば煤の出ないマキとか、ないもんかね?」
ヘパイストスも鍛冶場で薪を燃やすと発生する煤やら煙には困っていた.
「そうですね、実は鍛冶場の煤やら煙はなんとかしなきゃなんねえなとは思っていたんでさあ、ちょっと考えてみます.」数日後にヘパイストスは薪の形をした黒い塊を持ってきた.
「なんだい、これは?」
「炭とでも言いましょうかね、薪を蒸して、水蒸気と煤を除いたのを作ってみたんですは、火力はいいですし、しかも煙と煤は少ないみたいです、アテナも手伝ってくれました」
一緒についてきたアテナの鼻の頭には黒い炭がついていた「えっへん」と得意げに鼻を擦った.こういう時には、トレードマークの鎧ではなくてヘパの親方とお揃いの作務衣を着ているから、服の煤汚れは目立たない.ヘパイストスが新しい技術を開発する時な大体決まってアテナもプロジェクトに参画することになっている.この前の電離放射線の装置は結構むづかしかったが、今回の問題は結構簡単だった.数日で木炭が完成したというわけである.
「ただし、ですね、おばさん、この炭は十分な酸素がないと、毒ガスを出すんです.人だと死にますから、窓はずっと開けて風通しをよくしてくだせえ.決して、しめっ切った部屋で使わないでこと!これが掟ですかね」
「ありがとね、早速使わせてもらうとするかね」炭で火を起こしてみた
「おやほんとに煤も煙も全然出ないじゃないか、これまたいいのを作ったね、いつもありがとう、助かるよ」カマドに炭をくべてご飯を炊いてくれた.皆でいただいたのはいうまでもない.真っ黒な炭でたいた真っ白なご飯、其のコントラストがアテナはなんか好きだった.ヘパの親方とヘスティアおばさんが色々話している間、アテナは一心不乱に炊き立てのご飯を食べていた.ギリシャのはずなのに・・・・




