アテナと四天王⑤「神の楯、アイギス」
アイギスは神の持つ楯である.猛烈な暴風を意味する.元々は最高神(ゼウス、ここではルシフェル)の持ち物である.彼はそれを娘のアテナに貸し与えた.
ありとあらゆる、邪悪と災厄を振り払う魔除けの楯である.ヘパイストスの発明とされる.楯であるとされる神話や、胸当てであるという話など、諸説、色々あるが、現場に急行する、アテナが時々、持ってくるのを忘れる、という.それなら鎧の胸当てよりは、楯である方が適当ではないかと思う.最高神がその頭から生まれた、娘にだけ貸し与えたという事実が、彼の娘に対する溺愛ぶりの証拠の一つであろう.
これはキューピーの弓がまだ、ちゃんと当たらない頃の話である.焦った、キューピー、そこらに放つ弓矢はちゃんと当たらない.その結果、不幸な恋愛=ストーカー事件だけでなく、わけのわからん凶悪事件が頻発したことがあった.
アテナはたまたま時間旅行で現代、21世紀の東京に四天王と遊びに来ていた時である.もちろんほーちゃんも一緒である.
友達になった大学生と、飲み会の帰り、アテナは、女性の悲鳴と、数人の男の低い声を聞いた.どうやら若い娘は、数人の男に同時に邪な愛され方をして、朝な夕なに追いかけられる、というのが今回の事件の真相らしい.
「キャー」
「へへへ、大人しくゆうこと聞きな」
暗めの服を着ている男たちは皆屈強なようである.顔はよく見えないが、皆それなりに整った顔をしているようだ.「そんな乱暴しなくても」アテナは思う.
「さあ、こっちへ・・・」アテナは女の子を庇って後ろに逃がし、男たちの前に立ちはだかった.
「なんで正々堂々と口説かないかな」
「うるせえ」この女から先にやっちまえ、と男たちはならず者のお決まりのセリフと、動作で殴りかかってくる.なぜか悪党の拳は正義の味方に当たらないのもお決まりである.当たらない拳であるが、まあ一応、それを右に左に避けて、蹴り飛ばして、当身を喰らわせ、腕もつかんでねじ伏せる.「なんとか捜査官」とか女性刑事のような動きである.アテナは、都市国家アテネの守護神だから、当然その立法、行政の要であり、治安維持、防衛の責任者である.そして警察組織の実働部隊でもあるので、武器も持たない、なまくら現代の若者など敵ではない.しかし、彼らの背後にはひときわ大柄で、しかも銃やら、ナイフを持った一団が控えている.危ない、斬りかかってきたやつ一人は何とか避けた.さらに一人、拳銃をこちらに向けたやつがいる、今まさに発砲されそうな時、高く飛んだアテナは叫ぶ.
「アイギース」
すかさず、四天王の一人が、アイギスを投げてアテナに渡す.受け取った瞬間に、カキン、と音がした、銃弾がアイギスにあったった音である.
「アイギスシステム、ストーム作動、ファイヤー!」
一陣の風というには強すぎる暴風が、一団を吹き飛ばし、薙ぎ倒した.
一人、暴風くらいで怯まない、その一団のリーダーと思しき男が斬りかかってきた.
「ゴルゴンシステム、ロック解除、メデューサビーム照射」
アイギスの扉が、パカんと開き、メデューサの頭が露出された.そこから放射されるビームで、男はたちまちに石になり、「今だかかれ!」アテナの一声で飛びかかった四天王に取り押さえられた.皆ぐるぐるに縛られて、警察署の前にまとめて置かれた.「ほうほう・・・」梟のほうちゃんは、これにて一件落ちゃーく、とでも言っているのだろうか.ほうちゃんの言葉は実は、誰にもわからない.ただ、いただけなのかもしれない.せっかく連れてきた手前である.人間の警察が後の処置をしてくれるだろうから.石になったやつは数時間で元に戻る、そういう照射の仕方をアテナはしたのだ.
「なんかこの頃悪たちが、まとめて警察署の前に置いてあるんだけど、ご丁寧に縛ってあるから助かるんだよ、なんなんだろね」お巡りさん、ちょっと能天気すぎやしませんか?
実際この頃、凶悪事件が激減している.検挙率が上がっているからだ.アテナと四天王たちの活躍は、精霊の声の聞こえない警察官たちに知る由もなかった.
アイギスを英語で言うと、イージスである.最高の防衛.攻撃装備を備えたアメリカ海軍の戦艦を「イージス艦」という.本家はこのアテナの楯であることは言うまでもない.




