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精霊と兄妹①「精霊の囁き、それは、時に悪魔の囁き」



「囁くのは、精霊?それとも・・・」


雪割草たちの花が終わって、新しい葉が育つ頃.ルシフェルとアテナの親子、はるなとドクトル四人でお茶を飲みながら、陽の光を浴びる雪割草の会話を聞いている.


遠くで風の囁き、鈴の音、耳を澄ますと子供の声が聞こえる.

「ルシフェルのお父さん」「お父さん」「お父さん」

「うーなんだ?」

「お父さんはうんちするの」

「おお、するぜ、今日もたくさん出してきたぜ、お父さんたくさん食べるからうんちもたくさん出るんだ」

「お父さん、えらい」「お父さんはやっぱり偉いな」「お父さん偉い」皆が褒めてくれる

「ま、お父さんくらい偉いとな、うんちもたくさん出るってもんよ」妙な威張り方である.

「お父さんえらーい」「お父さん、えらーい」


今度はドクトルに質問があびせられる


「ドクトルはうんちするの」

「はい、しますよ」

「ドクトルすごーい」

「雪たちもうんちしたーい」「うんちしたーい」また合唱である

「雪たち、大きくなったらうんちできるかな」「できるかな」「できるかな」「大きくなってうんちしたーい」

ドクトルが真面目に答える

「動物は大きくならなくてもうんちをするらしいですよ.人間の子供はお母さんのお腹の中でもうんちが溜まります.生まれてすぐにうんちをします.胎便と言います.「小さくてもうんちできるなんてすごーい」「すごーい」

「雪もうんちしたいな」「したいな」「大きくなくてもできるなんてすごーい」「ドクトルすごーい」

「でもね、雪たちみたいに根っこで水と養分吸収して、葉っぱの緑で光合成をして栄養作るから口から食べなくていいでしょ、ある意味うんちをしないというのもいいのではないでしょうかね」と大真面目で付き合っている.


はるなとアテナは互いに目くばせした.どうやら質問は順番にやって来るらしい(次は私か、はるなか?)アテナは身構えた.

「アテナー、」「アテナー」(きたー!)

「アテナ、なんでもできるね、アテナ、お勉強も、お裁縫も、喧嘩も・・なんでもできる・・・」

「アテナ、すごーい、アテナはなんでもできる」「アテナ、なんでもできる」

「(おや?話題が変わったかな?)」


「アテナはなんでもできる」「アテナ、なんでもできる」

「アテナはうんちもできる?」

アテナはぶー、と口の中のお茶を吹き出して、ルシフェルにかけた.

「え、あ、まあ、できる、ちゃ、できるわよ」

「えー、アテナもうんち、するの?可愛いのに、女神なのに」「アテナ、うんち、する、女神、なのに・・・」

「アテナもうんち、する、アテナがうんち」

「アテナすごーい、アテナなんでもできるんだね、アテナすごーい」

「アテナなんでもできてすごいね」「アテナすごーい」

「みんな、聞いて、アテナはね、うんちができるんだよ」

「アテナすごーい、みんな聞いて、アテナうんちできるんだよ、すごいね、アテナなんでもできるんだね」

変なことで褒められるのがこんなに恥ずかしいとはアテナは初めて知った.


(いよいよ私に容赦のない質問が飛んでくる・・・)

「みんなー、これから何して遊ぶー」「何して遊ぶー」

「あそぼあそぼ」

やれやれ話題が変わったか、と思ったら、

「ねえみんな、これからうんちごっこしよう、」「わーい」

「うんちごっこ、うんちごっこ、みんなでうんちをしよ!」わーい」

「え?なに?」

「これからはるなのうんちごっこしまーす」聞いてはるなはお茶を吐き出した.全部ドクトルの顔にかかった.

「どーくーとーる、これから一緒にうんちしーまーしょ」

「はーるなさーん、これから一緒にうんちしーまーしょ」

「うーんち、しーまーしょ」「わーい、」「うんち出たー」「うんち出たー」


大合唱である.人の子供が、こんな「ごっこ」をしているのを見たことがない.精霊の無邪気、発想の豊かさ、こだわりのなさ、ということか?


「お父さんと、アテナは仲間外れか?うーん」とルシフェルは、はるなのほうを見てニヤリとした.

はるなはルシフェルを睨みつける.ドクトルは平気な顔でお茶を飲んでいる.アテナは外人の女の人のように、「わおー」と両手をあげて、首を傾げる.そう、アテナは外人の女の人なのだ.

顔を真っ赤にした、はるなはそのままトイレに駆け込んだ.「もう意地悪なんだから、ドクトルのいるところで変な話しないでよ」と.まだ顔の火照りは収まらない.


精霊の無邪気は時として、残酷である.無邪気な声は、悪魔の囁きよりも容赦がない.


「健ちゃんと雪割草」


 別の日、近所の健ちゃんが遊びに来ている.山田さんだか、中村さんだか、親御さんの名前はわからない.時々はるなの家に遊びにくる.お母さんも一緒に来る.健ちゃんは、「ママ」、みんなは、「お母さん」としか呼ばないから、お母さんの名前も結局「健ちゃんのお母さん」か「けんちゃんママ」である.だから名前を知らない.友達のお母さん、苗字知らないことって結構ない?


本題に入る.

なんとこの健ちゃん、雪割草たちの話が聞こえるらしい.いつも遊びに来た時、縁側で、話し込んでいる.

今日はうんちの話をしている.雪たちの声はお母さんには聞こえない.だからちょっと不思議な感じ、かもしれない.お茶を飲みながら、息子の様子を見ている.

「けんちゃん、今日、うんちしてきた」

雪割草は風に揺れて、健ちゃんの言葉に反応するように見える.(ゆら、ゆら、ゆら)

「ママに褒められた」

また風に揺れる.(ゆらゆら)

「けんちゃんもうすぐお兄ちゃんになるから、うんちできるんだ」

(ゆらゆらゆらゆら)

「へへ」健ちゃんは誇らしげである.


はるなには子供たちのやりとりが聞こえる.

「けんちゃん、今日、うんちしてきた」

「けんちゃんすごーい」「けんちゃんすごーい」

「ママに褒められた」

「けんちゃんえらーい」「けんちゃんえらーい」「雪たちまだうんちできないんだ」「できないんだ」

「けんちゃんもうすぐお兄ちゃんになるから、うんちできるんだ」

「けんちゃん、お兄ちゃんだから、うんちできるんだね、すごい」「けんちゃんもうすぐお兄ちゃん」

「へへ」

(へー、けんちゃんもうすぐお兄ちゃんか)お母さんのお腹をみると確かに少し大きくなっていた.

「いつですか?」はるなはお母さんに聞いてみた「7月頃・・・」お母さんはちょっと恥ずかしそうに答える.

(健ちゃんのお母さん、がんば!私もいつかお母さんに.でもいつになることやら・・・・)

春の日差しはほんわかと暖かい.



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