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「神の姉たるもの・・・」

ゾロアスターは、ゼウスが姉を見る目に敏感に反応した.


「ゼウス、それはダメだ!」


最初に神の火をうっかし消してしまった時に見せた彼の怖い顔以上の形相で、ゾロアスターはゼウスを睨みつけた.


「姉さんは、これから神に仕える準備をしないとダメなのだ.男で汚されてはならん!」


「ゾロアスターよ、待て待て、落ち着け・・・・

 旅のお人よ、お見苦しいところを、申し訳ない・・」


これまで一言も発しないで、ゼウスの話をニコニコと聞いていた、ゾロアスターの父、現在の族長に当たるかたらしい.


「我らの掟はきびしゅうて・・・・・ゾロアスターには何人か姉がおりましてな、一番上のひめは、まだこの子が、赤子の時に、他の部族の妃として嫁にやり、次の姫は、神に使える、巫女として、その生涯を神の火を守るというのが定めになっておりましてな・・・そのがこの娘、二の姫なのですわい.神に使える、巫女、それがこの子の宿命ですわい」


(!)


ゼウスは母から聞いていた.まだ、会ったことのない、姉さんたちの話・・・

一番上の姉さんは、穀物の神として、異国の王のところに嫁ぎ、次の姉さんは、嫁には行かずに、竈門の火を守り通すことが定めであると・・・・・


「私にも、姉がいるそうです.まだあったことはありません.私の姉たちも神の子として宿命を背負っていると聞きます.だから、それだから、あなたのことが懐かしく感じられたのかもしれません.ゾロアスター、私には不浄悩ましい気持ちなど一切ないから安心してくれ・・・」


はっと顔を上げた、ゾロアスターの姉上は、少しゼウスの顔を見た、ように見えた.

そして、少し潤んだ目を再び、囲炉裏の中の小さくなった火の上に落とした.


祖父も、父も、母親も、娘の気持ちが理解できた.

ゾロアスターにだけは、理解し難いことだったのかもしれない.

・・・・・・・・・・・・


ところは変わって、

同じ頃、「クロノスの腹」と呼ばれる、ギリシャの政治犯収容施設の中.


「へークション!」デメテルが、大きなくしゃみをした.

「おや、姉さん、風邪でも引いたかい?」といい終わる間も無く、今度はヘスティアが大きくくしゃみをした.


「変だね、誰かが私たちの噂でもしてんだろうかね・・・」


「どっかの王様が噂してたりして、誰か嫁にもらってくれないかね、ここで暮らすのいい加減飽き飽きしてきたね・・・」デメテルが言うと、


急にヘスティアは声を潜めて言う.

「姉さん、そういえば、母さん、この前、面会に来てさ、石を身代わりにして、クレタに逃げたってあの子、なんでもあちこち旅して、私たちを助け出す、算段をしてくれてるそうなんだけどね・・・」ヘスティアが、母からの情報をこっそり姉に伝える.


遠いペルシャの高原にて、同じ頃、ゼウスがさらに大きなくしゃみをした.


クロノスは、時が自分の産んだ子供を食い尽くした、あと、報復を恐れて、日々憂鬱な暮らしをしている.

彼の背筋に一瞬冷たいものが走った、気がした.


クロノスが食い尽くしたはずの、「時」の子供は、まだ、止まったままである.

しかし、止まったままの「時」は彼の腹の中で静かに成長を続けている、のかもしれない.





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