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アテナと四天王④「ドクトルの部屋へ.その後、オリンポスへ帰還」


 もう電車がない時間だから、歩いて行きますか、と言う事になった.立川駅から5kmくらいのところにドクトルの家はあった.

 足の悪いヘパおじさんは若い衆が騎馬戦のように運んだ.「おい、おめえら、やめろ、こんな恥ずかしいだろ、おい」と言いながら、親方の顔は嬉しそうである.

 ドクトルとルシフェル、はるなが並んで歩く、アテナはほうちゃんを「またネズミとっといで」と放した後、あちこち道端のお花を見たり、「ふんふんふん、るんるんるん・・・」とスキップしたり、橋の上から川に映るお月様を見てうっとりしたりしていた.「あ、アルテミス、来てたんだ」と月に話しかけている.

 昭島駅の近くに来た.歩いてきた道は駅から少し離れていたのだが、「おー、また目高屋があるぞ」4人の弟子がさわぎはじめた.見つかってしまった.ここはけじめをつけないと、大人の貫禄を見せてやるとばかりにドクトルがちょっと頑張った.「いや、みなさん流石にもうやめときましょう、それに私のうちもうすぐそこですから」

 立川から1時間ちょっとでドクトルの部屋に着いた.「さっきも言いましたけど、くれぐれもうるさくしないでくださいね」ドクトルは念を押した.弟子の4人とアテナは、部屋にくるとすぐに寝てしまった.お腹いっぱいになって眠くなったのだろう.  

 ドクトルの案内で、ルシとヘパとはるなは本棚を見せてもらう.ヘパのおじさんは本棚の中の「岩波物理全集」に興味を示した.なんだこれ「医系の物理」そんな本があるのか.これはどっかの大学の医学部の教養課程の物理の教科書らしい、赤いのが統計力学、緑が電磁気学、紺色のカバーが力学となっている.ファインマンの物理学なんて本もある.「お恥ずかしながら全然読んでません」文庫本には「ファインマンさんご冗談でしょ」とか、「数学を作った人たち」とかブルーバックスという講談社科学新書というシリーズの本がたくさんあった.我が家の自慢はこれくらいでしょうかね.大きな本棚がいくつもあり、主に医学雑誌でその中でもドクトルの専門の脳外科の関連の雑誌が多いのだが、他に、解剖学やら生理学、手術書などが並び、さらに新書というのか小さい本に歴史とか法律の本が並んでいる.学生時代のノートというのがファイルにまとめられて、本棚の上に積み上げられている.本を捨てられないのは、自分の父と同じかな、とはるなは思った.漫画という日本文化の代表的な絵に文字を書き込んだ書物もたくさんある.へー、はるなは最初のうちは感心してみていたが、そのうちに眠くなったみたいで、アテナの隣で眠ってしまった.

 おじさん3人がしんみり話をする.

「鉄丸さん、久しぶりの日本、どうでした?」

「俺が前いたのが、戦国時代のしかも種子島だからな、全然違う.そもそも日本のハズレの種子島と東京なんかと場所も違うし、時代も違うからな.全然違うんだろうけど、変わったとしたら、人の心持ちそのものが大きく変わったかもね」

「どういうふうに?」

「丸くなったというか、優しくなったというか・・・」

(まあ戦国時代と比べたら、あの頃は人の心が一番荒んでいた時だろうから.ただ、あの時代に人は猪や、くま、猿なんかに恐れ慄く事はなかったのではないかとドクトルは思う、だってみんな刀持ってたもんな)

「どの時代のどの国見てもあんな奴らどこにもいないよ.足の悪い俺が階段降りるときも見ず知らずの人が手貸してくれるし、ドア開けて待っててくれるし.転びそうになったら支えてくれそうになるし.大丈夫ですかなんて声かけてくれるからな.他の時代、国だったらこうは行かない.弟子たちにはこの国の人たちのようになってもらいたい、と思うね俺は」

 表音文字の言葉の一つ一つにやたらしつこく母音がくっついてくる言葉を話す、世界でも稀な民族をヘパの親方は嫌いではないらしい.


 「それでは、邪魔したな、ドクトル、これから帰るは.」いつの間にかアテナと4人の弟子も起きていた.ドクトルは一向を外まで送った.フクロウのほうちゃんはアテナの肩にとまっている.どうやって帰るのだろうか?割れた地面に吸い込まれるように消えていくのだろうか、それとも月の方に向かって飛んでいくのか、時空を超越するというのは人間のドクトルには理解ができなかった.前に何回か行った時には、気がついたら場所も時代も変わっていたからどういう経路を辿るのかはわからなかった.

 いつの間にかオリンポスの一向の姿はなかった.

 

 「さて、困った事になりましたね」部屋に戻るとはるなが一人で眠っている.どうしたものか?アテナが寝ていたところ、その隣にはるなは寝ている.カーペットもたたみもない.少しくらい動かしたくらいでは起きそうにないし、起こすのも申し訳ない.  

 フローリングの上に寝かすのではあんまりだから、布団を敷いて、ごろりと転がして、上に毛布をかけて、眠らせておいた.

「もお、ドクトル、意地悪なんだから、むにゃむにゃ」一瞬ドキッとした.寝言か.

「ドクトルー」と枕を抱き寄せている.やれやれ.


 ドクトルは普段はなるべく避ける本棚の下に布団を敷いてねた.この頃は多少の地震では本が崩れてこないようにしてはいるのだが.その次の朝がどうなったかは誰も知らない.何事も起こらなかったことが、はるなには少し残念だったらしいということは後で彼女自身からルシフェルやアテナが聞かされて分かったことである.

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