はるな、ルシフェルと出会う
物語は数日前に遡る・・・
病院の外来の受付事務員をしている、はるなは仕事が終わって帰宅途中である.
足取りがいつも軽い.
今日も、何か歌っている.
「ふんふんふん、るんるんるん・・」と歌詞はわからないが、楽しそうである.
でも、一体彼女は何がそんなに楽しいのかと人は皆、思う.スキップしそうな勢いである.道端に花が咲いていると、くるりと振り返り、下を向き、花たちに語りかける.
「あら、お花さん、かわいい、あなたの名前はなんていうの、ご機嫌いかが?」という感じである.
風がそよぐと、遠くで鈴の音、耳を澄ますとどうやら話し声のようである.
「私はレンゲ、よろしくね」
「たんぽぽよ、かわいいでしょ」
「私たちが、チューリップ」
ひときわ強い風が吹くと、空から花びらが大量に舞ってくる
「ほほほ・・・私が桜、でももうすぐお別れよ・・・」上を見上げると、満開のさくらである.今年はもう散り始めるらしい.
明るく、優しく、あたり構わず褒めて回る.
「あなたは誰?」
「私は梅の花、花は似てても桜みたいに派手じゃないでしょ」
「いえいえ、あなたもすごく可愛いわよ」
「あら、お上手」
それに加えて、見た目が、わかりやすく表現すると、「まあまあ」、可愛い、という感じである.
年の頃はわからない、18歳から45歳の間くらい?50歳には届いていない、と思うが、女の人の年齢はわからない.そういうと、設定としてなんと大雑把なという声が聞こえてきそうである.
彼女は花に名前を聞いて「ああ、あなたがすみれさん」と花の名前をすぐに口にする.周りの人はすぐに「え?」と思う.この人は、花と会話しているのか?それとも知っていて惚けて、知らないふりをして、あえて名前を聞いて、花からその名前を教えてもらってるのよ、という体裁を取っているのかもしれない.
ある日の夕方、通る道のお花の名前はみんな聞いたことがある.前に花が教えてくれたから.でも、はるなは忘れっぽい人らしい.
「あら、あなた、また会ったわね、えっと、この前お名前聞いたけど、ごめんなさい忘れちゃったは、ははは」という感じである.忘れたらまた聞けばいいだけである.
「あなたのお名前なんだっけ」と.
「ふんふんふん、るんるんるん・・」とスキップするが如くに家路を辿る.
ふと、空を見る. 「まあ、あんなところに明るいお星様.」西の空に太陽が沈んだ後、ひときわ明るい星が輝いている.宵の明星も明けの明星もどちらも金星のことを呼ぶらしい.
「あの星は、金星?」
とはるなはお星様と自分自身に問いかけてずっと空を眺めていた.もちろん答えはない.お星様とまでは話はできないらしい.
するとその星はみるみる大きくなり、近づいてきた.まるで、はるなを目掛けて飛んでくるようだった、「え、何?」と思った時にはあたりが一瞬、閃光に包まれた.そして、ドーンとちょっと大きめの音がした.すぐに夕暮れ時の薄暗さに戻った.
「痛たた、またしくじっちまったい、おや、いったいここはどこだ?」
少し離れたところに、白髪の老人?というほどではないが初老くらいの男が倒れていた.しりもちをついたような格好である.
服装は、ギリシャか、ローマのような格好である.神話に出てきそうな感じである.この前漫画でテルマエロマエで見た.
ヒゲぼうぼうの髪はボサボサ.痛そうにしているので、はるなは病院勤めをしているものの職業倫理としてとりあえず声をかけた.
「あのー、大丈夫ですか?」
「う?俺か、俺は大丈夫」
「何をされているのですか?」
「うー俺か?俺は、今、腰を痛がっているんだ」
「いえいえ、私が聞いているのは、なんで腰が痛くなるようなことをここでされているのですか?そもそもなんで腰が痛くなったのですか?」
「あ、下界の様子を見ていたらな、あんたが花と話しているのを見てな、お、こいつ俺たちと同じ精霊と話できるやつなんだ、と思ってみてた.
すると、おめえは、せっかく教えて貰った花の名前忘れたっていうじゃないか、なんかずっこけてしまって、着地に失敗したってことさ」
「じゃ、私がみていたお星様?明けの明星でしたっけ」
「まあ夕方だから宵の明星かな、どっちも金星のことで、ルシフェル、って皆には呼ばれているな、俺の名前はルシフェル」
「うーん、よく理解できないのですけど、あなたはお星様のルシフェルさん?それとも金星さん?」
「まあ、どっちもだな.でもあまり金星さん、って呼ばれたことねえ」
二人は、公園の遊具に向かい合って座っている.円盤状の水平方向にのクルクル回るやつだ.ただし自動では回らないから、回転には誰かもう一人必要だが.子供が怪我をしたら大変ということで、この頃はテープとか貼り紙とか、ロープで緊縛してあったりとかで使えないことが多い.しかし撤去はしない.この時は使えた、あるいはルシフェルが使用禁止の張り紙を剥がしたのかもしれない.




