パレスチナを後に・・・
ソロモンが建設中の神殿は、工期が大幅に遅れたが、彼がその指輪で、72柱の悪鬼を酷使することによって、瞬く間に完成を見せたという.
その間、悪鬼たちと、神の使い、そして、異国の神々のちょっとしたいざこざが、あったらしいのだが・・・・
「それは昔話のこととして、記録には残っておりません・・・」と作者のドクトルは、頰被りである.しかも物語はほぼ神話的な話である.
「考古学的な考察もありません.ましてや、若き日のゼウスが、鉄の短刀をエルサレムに持ち込んで、政治犯として、神殿建設の強制労働に従事した・・・」
しかし、書いてみると、実際にあったのではないか、という気はしないだろうか.
そして、のちにオリンポスの最高神となるゼウス、父の追及から逃れて、クレタ島から抜け出して、エルサレム、それも絶頂と言われる、ソロモン王の時代、そこで、彼が指輪の力でこき使う、精霊の親玉たちと、友情を育んで、彼らの霊力で、光り輝く、大天使、ルシフェルとなった・・・・・
これまでのストーリーになんとか整合性を持たせようと口から出まかせを続けて、まさに「嘘の上塗り」のようなことになってはいるのだが・・・
しかし、ギリシャ人のミケーネ、クレタ島の文化圏と、それほど離れていない、地中海、東の果て、シリア、レバノン、パレスチナの小さな地域のそして、どちらかというと、強い勢力の神々にいじめられた神々が出てきて、仲間になっていく.
少年漫画的な、胸躍る話、のような気がしませんか?
ソロモンの建築現場、ミカエルと、72柱の悪霊たち、そして、ギリシャからきた若い神様.
ソロモン王が、その指輪を飲み込むことによって、72柱の悪霊たちはその、魔力を封じられた.
すると、ミカエルも即座にその武装を解除して、しれっと、侍従長の職務に戻って、王様に色々と、政治上のアドバイスをしている.
ゼウスは、若者の姿に戻った、ベルゼバルたちと別れを惜しんでいる.
ヨベルは、顔中、涙と、鼻水と土と埃でぐちゃぐちゃになっている.彼も強制労働から解放されて晴れて自由のみになっている.
「で、ゼウスはこれからどうするんだ?旅を続けるのかい?」ベルゼブルは尋ねる.
「うーん、どうしようか、ちょっと迷ってるんだよね、クレタ島に残した、母さんとか仲間のこともちょっと心配だけど.まだ、世界のこと、みてみたいかな、って気持ちも、ある」
「そうかい、じゃ、あんたはもっと旅を続けるべきだとあたしゃ思うね.」アシュタルテは、いう.
「うーん、どっちに進むのがいいかな?南のエジプトから、ナイル川をずっと遡って、アフリカの漆黒の人々に合うか、北の方角、シリア、メソポタミアを経由して、そのままペルシャ、インドと旅するか・・・」
「おめえ、そういうところ、直した方がいい.この前の乱闘騒ぎの時もなんかどっちつかずだったぞ!」ベリアルが小言を言ってくる.
「だって、みんなとは仲間だけど、ソロモンの王様、そんなに悪い奴には見えなかったんだよね.それにミカエルと本気で戦争ってなると、王様困るだろうから・・・・」
「まあ、そのおかげで、俺らを王様に縛り付けておく指輪はどっかに紛失してなくなったから、俺らは晴れて自由のみだ!まあ良かったと思おうぜ」ベルゼブルはまるでガキ大将だ.
「よし、私は、これからペルシャを通って、インド、そして、東の果てのオケアヌスの入り口に浮かぶ、極東の国を目指すことにする!」
「お前、口先だけで、まだ精霊の力、使いこなせてないみたいだからな、極東の島国は、八百万の神々が支配する精霊たちの国だ、そこで、奴らの力、どうやって分けてもらって、使いこなすか、そこんとこちゃんと勉強してこい!」
「途中のインドでも色々修行してくるといいかもな」
ゼウスは2頭のラクダを伴い、最初にエルサレムを目指した道を、そのまま、ベイルートに向かい、そこからは、シリア、からペルシャの方に向かうことにした.
エルサレムの高台から、友たちがいつまでも手を振って見送った.
その頃宮殿の一室では、死海に向かう谷沿いの小道を遠く眺めているソロモンがいた.
二頭のラクダのくつわを引きながら、「えっさ、ほいさ・・・」と元気よく谷を降って行く若者の姿があった.
「ゼウス、ヘラスの神の子、今度会うとき、どれだけ成長していることか、楽しみに待っておる・・・」




