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「行くぜ、クレタ統一!」

ゼウスは幼くしてその雷電の力で、母が飼っているライオンのクレタを黙らせた.決して喧嘩三昧というわけではないゼウスは、いつの間にか、クレーテスという、どいつもこいつも一癖も二癖もある島の荒くれ悪童達の、リーダーになっていた.


のちに、クノッソス宮殿のミノス王の元に統一された、クレタ島の勢力は、ギリシャからの移民等で、多くのポリスを形成していたという.正体不明の海の民の侵攻により、ミケーネ、クレタの政治勢力は行方がわからなくなった、らしい.


文字による記録が一切残らない、いわゆる、「暗黒時代」に突入したからである.


紀元前12世紀から.8世紀の間のことである.この間に青銅器文明から鉄器文明に移行したらしいが、それも詳細はよくわからないらしい.しかしこれらのことは、トロイ戦争の遥か後世のことらしい.あるいはソロモンの王様がイスラエルにその名を轟かせたのは、紀元前10世紀のことだから、その前の出来事だろう.


そうそう、いずれゼウスの勢力が、クロノスを打ち負かすときに、キーとなったのが、ヘカトンケイルや、キュプロプスといった、特殊技能集団で、それが、小アジアから、ギリシャの方面に勢力を伸ばしたのも、だいたい、暗黒時代の前期の頃であると考えられる.


しかし、何が先で、どの事件が後で、ということをとやかく言わないのが神話を語るときの約束である.だから、紀元前何年ということは例によって不問である.


少年ゼウスが、クレタで悪童どもを束ね挙げたのは、その前の時代ということになろうか.


しかし、何度も触れたように、人の時間の流れと、神々の時間の流れは、本質的に全く違う.生まれてからどのように成長して、そして大人になったかということはわからないし、何年かけて大人になるか、ということすら不明なのが神々の生涯である.


それはさておいて、


ゼウスは不思議な少年である.


どおみても、英雄豪傑には見えないし、それを束ねる器にも見えない.ニヘラニヘラと笑って、女の子の尻を追っかけ回して、その親父さんには怒鳴られて、追い返される.一旦は引き下がるのだが、ヘラヘラ笑って、性懲りもなくまた次に日もやってくる.


「おめえ、またきたか!くるなといったろ!このクッソがきめ」

今度は石を投げられる.ひどいときには肥溜め突き落とされそうになる.


「ええ、だって、可愛いんだもん・・・」


親父達に石を投げつけられて逃げていくときにも、「じゃ、またね、明日またくるよ・・・」と手を振りながら、逃げていくのである


「うもお!くるな、この悪ガキ!!」と親父はいい、「もお、母さん、玄関に塩撒いときなさい」というくらいなのだが.


その都度、村の人たちに謝りにまわるのが、母親のレア様であり乳人のアマルテイア

なのだが、高貴なはずのこの女性たち、一向に偉ぶる様子がなく、ゼウスの不始末を詫びて回る.


言い寄られた、女の子は、ゼウスのことが、決して嫌いではない.いつも、「のほほん」としていて、話が面白く、そして子供達の中では不思議な人望がある.ニコッとした顔が、とても可愛らしい.あまりあくせくしないのも魅力で、生活の苦しさを忘れさせてくれる何かが、彼には確かにある.そして、彼はものすごく物知りなのだ.


神々の子弟だというから、それとなく高貴な雰囲気があるのも事実である.

しかも、ゼウス、母親の飼っているライオンを、一瞬で手懐けたことがあるらしい.あくまでも噂であるが.


レアとゼウスの隠れ家の洞窟は、いつしか、島の子供達の溜まり場となった.


ゼウスは物惜しみしない、気前のいい性格.さらに彼の隠れ家の洞窟に行ったとき、乳人のアマルテイアが出してくれる、神の食事、これをアンブロシアというらしい.


子供達か、彼の隠れ家に集まってくる理由の核心はどおやら、「アンブロシア」らしい.蜂蜜をベースにした、なんとも言えない美味しい、食べ物が出てくることだ.しかもこのアンブロシア、栄養満点で、絶えず飢えに苦しんでいる、島の子供にはまたとない栄養源である.しかも、それは、ゼウスを子供の頃に育てた山羊のツノ(コルヌコビア)から、いくらでも溢れて出てくるらしい.だから彼の家に行くと、思う存分、その美食にありつけるということである.


車座に座った少年たちの真ん中には、いつも楽しそうに笑っているゼウスがいた.


「なあ、ゼウス、また面白い話してくれよ・・・」子供達にせがまれたゼウスが話をする.


「うーん、じゃ、みんなで自分の夢を語ろうか・・・」


「お、なんだなんだ、ゼウスの夢って、また世界中の可愛い女の子と結婚したい、なんてことじゃないんか?うん?」仲良しのガキ大将の一人、名前はなんといったか、わからない.


「お、あたりー、なかなか鋭い.」とゼウスは頭をカキカキまた笑う.


「じゃ、ゼウス、ここでは誰が一番好きなの?」そう聞く、女の子の名前もわからない.

「え、そんなこと言ったら、みんなで喧嘩するじゃない、だから言えないよ・・・」


「ははは、みんながみんな、あんたが好きなわけではないからね、ははは・・・」


という感じである.なんか別館で楽しく話をしている、ルシフェルそのままの感じ、なのかもしれない.


「それには、僕は、世界中を旅して、いろんなもの、人、場所、ものをみてきたい・・・そこで好きになった子と暮らして、子供をたくさん作って、みんなで仲良く暮らしたい・・・」そんな感じかな・・・


「家族みんな、仲良く・・・」それが実はゼウスの切実でかつ最も実現困難な夢だったのかもしれない.その後の彼の行動は、この夢の実現に向けて行われたと言っても過言ではない.


「でもいく先々でみんな仲良くしてくれるとは限らないべ」少し、理屈っぽい村の、悪童の一人がいう.

「実際、昨日はうちの妹追っかけ回して、おめえ、肥溜めに落とされそうになってたろ」


ゼウスの悪戯は、皆よくみている.どういうお仕置きをされたかということまで.


「あとはね、僕は、美味しいご馳走たくさん食べて・・・」

「うんうん、ご馳走食べて・・・・」


「たくさん勉強して、世界のことを知りたい.世界はね、オケアノスの他に北の外れには、エウクセイノスがあると言われている・・・・」


エウクセイノスとは今で言う黒海のことである.


「クレタの海のオケアノスの他に、海があるのか?そんなの信じられないな・・・」

男の子達は、皆ゼウスの最新知識に対しては懐疑的だ.


「そして、クレタの南の海の向こうには、リビアという砂漠の大地があるっていう.草木が生えない土地を、砂漠っていうんだ.雨が降らない、何ヶ月も、年々も・・そこに暮らす神々はごくわずかで、人にはとても暮らせない、そんな土地」


「・・・・・」クレタ島の少年たちにとっては、もはや想像の域を超えていた


「そして西に行くと、天空の柱の向こうにはまたさらに巨大なオケアノスが広がっているらしい・・・」


「地の果てを超えても、まだ、オケアノスが広がっている!そんなのは私たちには想像もできないね・・・」


「そう、そしてね、クレタから東の方角、太陽が登る方角にどんどん進むと、シリアにつく.あるいは、その北に行くと、アナトリアと呼ばれる土地だ.ここでは鉄という硬い金具を作ることができるらしい.ここまでが我々の想像の限界だと思うだろうけど、さらに東に行くと、ペルシャにインド、天に届く世界の屋根があって、その山の向こう、いくつもの砂漠を越えると、大地の果てにこの世で最も広大なオケアノスがあるという・・・」


その東の外れのオケアノスの入り口に、小さな国だが、我々と同じような、神々の住まう国があるというのさ、そういうところを旅してみたい・・・」


ゼウスの目が遠く、見る.恍惚とした表情である.


「それには、クレタで、こそこそ隠れて暮らす生活、なんとかしないとな、ゼウス、おめえ、親父さんから逃げ回ってんだろ?」


「そこなんだよね・・・兄弟達皆捕まって、親父の暗黒帝国に洗脳されそうになっている.それをなんとかしないことには、世界の果てなんか見に行けっこない」


「ゼウス、俺たち、いつもおめえの味方だぜ、クレタから、おめえの親父の悪の帝国、潰しにいこうじゃないか」


車座の若者達は、皆それぞれに固く手を握り合った.ゼウスを中心とした、青年クレタ同盟のようなものがいつしか生まれていた・・・・




















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