クレタの波音は、優しい母の子守唄・・・
「誰だい、こんな題つけたのは・・・そんなのないない.」
大体、ゼウスと、クレーテスの屈強の若者の、鳴き声やら、喚き声やら、盾と棍棒やら槍やらをガンガン叩く、ドラを叩く、ラッパを吹き鳴らす・・・・
「あの島にいる間、波の音が聞こえるほど静かだった夜なんで一回もなかったよ.わたしゃ寝不足で、頭が変になりそうだったよ」
おばば様は回想する.しかし、なんとなく遠い目をしたおばば様は懐かしそうである.
「喋れるようになると、ゼウスは、まあ、それは生意気なこと、母上なんか嫌いだーみたいな.私がお尻ぺんぺんしようとしたら、アマルテイアの後ろに隠れて、なんて言ったと思う?」
「さあ・・・」海丸くんには見当もつかない・
「母上なんか、僕のお母さんじゃない!僕のお母さんは、アマルテイアだ!」っていうんだよ.
「乳母のアマルテイアはそれはそれはできた女だったから」
「若、なんということを母上に言われるか・・・若をそのように育て申し上げた覚えはございません、なんと嘆かわしい、乳母は悲しうございます(オヨヨオヨヨ・・)」ってね.まるで狂言である.
アマルテイアは嘘泣きだったんだけど
乳母がなくと、ゼウスは悲しかったらしい
「めのとよ、なくでない、若が悪かった、そなたを悲しませるようなことを申して、すまぬ.母にももうしわけないことを言ったと思う.反省しておる.だから、泣くのはおやめ・・・・」
幼稚園に行く前の子供がこのようなことを言うのである.おませにも程があるが、それが高貴な神々の子弟の平均的な像であったようだ.
「女の涙に弱いのはモテる男の条件だからね・・・」おばば様の持論である.
よく言われる、ゼウスはモテなくて女を追いかけ回すだけと言う人は多いが、女を追いかけ回すことを許されるのは、モテる男であるのが必要条件であるのを世の中に人々はあまりしらないらしい.
「ある時なんかね、あんまりゼウスのやつがいうこと聞かないもんで、あたしゃ、最後の手段を使ったよ」
「ほお、どんな・・・」
「息子の両手を後ろ手に縛り上げて、服を全部脱がせて、ライオンの檻にほうり込んでやったのさ・・・」
(海丸くんはぞぞーー_としたが、声には出さない)
「ほら、この前、私と一緒に写真映ってたろ、クレタっていうオスのライオンはこの頃から私の聖獣ってことになってるんだけど、私のいうことには絶対服従さ.」
ゼウスもごうじょっぱりだから謝らない.クレタは私が、おすわりと言うと座る.おあずけで、食いつくのをやめて、食いつけ、というと、歯は立てないけど、口の中に腕一本咥え込む・・
私の言いつけ通りさ・・・」
いい子にするかい、と優しく聞いてやってもあの息子は絶対、ハイとは言わない.
「じゃあ、ってことで、・・・」
「次はナメナメ・・・」ライオンの舌はざらざらでなめられただけで柔らかい肉は削れてしまうのだ・・・」聞いていた皆の背筋が寒くなる.
「ぞおー」である.
それでも言うことを聞かない.
「じゃ、クレタ、今日のご飯はゼウスだ!お上がり!」と私が命じると、その牙をゼウスの体に突き立てようとした時さ.
あたりがぴかっと光った感じ?
そして、同時にどかーんと言う大きな音がした.あたりには煙が立ち込めて、焦げ臭い.クレタの立髪がちょっと焼けてるのさ
「あの子の持っている力、雷電が初めて使われたのがこの時さ・・・」
ゼウスの折檻にクレタは使えなくなってしまった.ライオンがゼウスのことおっかながって、食いつこうとしなくなったからね.私と同じようにゼウスに対しては絶対服従さ.
その日からさ、荒くれのクレーテーの悪ガキどもが皆、ゼウスの子分になりたがって、うちに集まるようになったのはね
「あの子の、王たるにふさわしい威厳が備わり始めた瞬間、でもこれは親のあたしが言ったら、親バカって言われそうだけどね・・・」




