少年ゼウス「クレタの思いで・・・」
「ねえ、ねえ、おばば様、おじさんの子供の頃ってどんなだったか教えて・・・」
海丸くんは、別館に来ていたおばば様に聞いてみた.
おじさんである最高神、ゼウス=ルシフェルの研究が海丸くんにとっては、大きなテーマである.以前におじさんに関する小論文を学校に提出して、高い評価を受けたのだ.普段のおじさんのことは海丸くん自身が、詳細に研究しているからある程度のことはわかる.しかし昔はどうだったか?おじさん自身と、神話に残る、ゼウスはかなり、歪んだ伝えられ方をしている可能性があるから.
その点、おばば様は数少ない、生きた証人である.(ちなみにおばば様も古い神なので死なない.つまり、この世に生まれてこの方、死んだことがないのだ!)
ティタンの王であるクロノスは、「お前もいずれ自分の子供によって、権力を奪われて、囚われの身となろう・・・」というウラノスの予言により、夜も眠れず.悩んだ末に、生まれた子供を次々に飲み込んだ.
ちょうど、ゼウスも孕っている時、レア様は、この子だけはなんとか、助けたいと思い、一計を案じた.
「お腹の子供、生まれたことにしといて、この石ころに産衣を着せて、クロノスに飲ませて・・・・」
計画のあらましを整理して、最新の子供を、ウラノスのところに持っていった.
「はい、あんた、今度生まれた子.なかなか重くて脳みそいっぱい詰まってうまそうだよ・・・」
マザコンのウラノスは、なんとなく雰囲気が年上っぽいレアのことも大好きだったから
「レア、俺のこと思ってそんな気を遣ってくれて・・・」と柄にもなく涙ぐんだしたかどうかは記録にはない.
しかし世の中の母親の多くと同じく、レアの価値観も断然子供が大事で亭主は、たくさんいる子供のさらにその次の次くらいの重要度で、まあ言ってみればどうでもいい存在で、そんな奴のことを思って、なんかするということは全くない女性だった.
当然、いいようにダマスことのみを考えた.子供に偽装した、石を亭主に飲み込ませた.
「いや、こいつ、石をなんも疑わずに飲み込んだよ・・・馬鹿なのか、人を信じやすいのか・・・それ考えるとまあ悪いやつではないのかも・・・」と
自分を好いてくれる亭主を騙したことに対して少しだけ良心の呵責を感じた.
そんでもって、私は、クレタ島にトンズラして、そこで隠れて、この子を、産んでしばらく潜伏生活をして過ごそう、という計画である.
ローマの人喰い巨人の神、サートゥルヌスは後世の絵画では、子供を食いちぎって食べたことになっている.しかしそうであれば、計画が露見する.石ころを噛んだら、カチンと、クロノスの歯が折れてしまうだろうから.
しかし、抜け目のない、レア様は、彼が生まれた子供を咀嚼もしないで、丸ごと飲み込んでしまうことを知っていた.
実際は、生まれた子供をその都度、飲み込んだというのはものの例えで、大きくなるまで、「クロノス帝国政治犯収容施設」みたいなところに収容して、外部との接触を避けて、洗脳教育を施して間違っても父に反旗を翻すような子供に育たないようにしようということだったのだと思う.
とにかく、産着に包んだ身代わりの石ころをまんまと新しく生まれた子供と偽装する
ことに成功したレア様は、クレタ島に無事に到着した.
クレタ島のディクテー山の洞窟で、ゼウスは、アマルテイアーというニンペーに育てられたらしい.ヤギの乳を与えられて、アンブロシアが食事だったらしい.蜂蜜たっぷりりの栄養食である.
ヤギの名前がアマルテイアーという名前だったという説もあるが、牛や山羊を育ててその乳を飲み、時には神々の犠牲に捧げ、自分たちもその肉を食べるヨーロッパの人たちは飼っている山羊に名前をつけるだろうか?という疑問がある.アンブロシアまで、山羊にもらって育つことはあるまいということで、アマルテイアーはヤギを買っているニンペーの名前とした.
元気の良い赤ん坊のゼウス、夜な夜ななく声が大きい.アマルテイアはギョッとする.
鳴き声をクロノス様が聞きつけたりしたら、赤子が見つかってしまう・・・
島に住む元気な若者に、ゼウスの鳴き声と張り合うように、大きな声で叫ばせて、盾と矛を大音声で打ち叩いた.




