別館・レトの会
海丸君がルシフェルと、どっしんのおとシャンと一緒に話をしながら、別館の図書室に向かっている.何かの勉強をする予定らしい.
その方角から、年配の女性の声が複数聞こえる.
「はて?おばば様、近所にお茶飲み友達でも作ったかな?」ルシフェルがいうと、
「いや、ナンボなんでも、まだ日本語もちゃんとできねえのに、オババ、友達なんかできるかね?」息子のポセイドンは、ルシフェルのいうことに賛成しかねるという声でいう.
「おばば様と、レト様の声は分かるのですが、あとは、知らない人でしょうか・・・・」
3人して、ちょっとドアの外から皆で中の様子を伺うのに、耳を当ててみた.
「ええうちの人なんか、なんかあると、すぐ日本に来たがるんだよね・・・
春はカツオだ、あきは秋刀魚だ、鮭だ、冬はブリだ、カニだ、ふぐだ、大間のマグロだ、なんて、うちになんてほとんどいないんだよ」
「それは大変ね・・・」消え入るような声は、レト様である.
「え?女房?」ポセイドンはちょっと身構えた.
「海丸くんは、あ、ほんとだ、義母上だ!」と嬉しそうである.そう、聞き慣れない声の主は、アンピトリテ、ポセイドンの奥方にして海底宮殿の女王である.レト様とアンピトリテは幼馴染で仲が良い.
「すると、後の、2、3人は・・・・」まだ3人は中に入れないでいる.
「げ、やべ、テミスのおばさんと、ディオーネだ!」
あと一人、一際大きな声でのべつまくなしに喋りまくっているのはおばば様だ.
「おめえから先に入れよ・・・」
「いやこれは歳の順に・・・・・」
ポセイドンと、ルシフェルは変なところで譲り合いの精神を発揮する.
「本じゃ、僕が入りまーす」
海丸くんが、部屋の中に入っていくと、おばさま方の歓声が起こる
「まあ、海丸、しばらくみないうちに立派になって、学問は進んでいますか?」
アンピトリテとは久し振りに再会である.
「ほおほお、海丸ってのは、あのポセイドンの息子のかい?日本の山神が生んだとかいう・・・・」テミスおばさんである.
「海丸一学です.新潟に行くときは雪之丞と言います」
「ほお、名前を使い分けるのかい?それもいいねえ、お前のお母さんのアイディアかい、なかなか洒落た、母さんだね・・」おばば様である.
「いやいや、おばば様にはこの前にこられた時とか動物園に行った時なんかに何度かお話ししたかと思いますけど・・・・」
「ほや、そうだったかね・・・歳とると、忘れっぽくてね・・・一回じゃ話覚えられないんだよ、ははは」
「姉さん、まだそんな歳じゃないだろう、ははは」一応おばば様、人間の世界では97歳ということになっているから、そんな歳じゃないだろうどころではないおとしであるという設定である.
声の主は、ディオーネおばさんである.彼女は実はアフロディーテのお母さんという説もあるが、よくわからない.しかしアフロティーテすなわち愛染の母ちゃんが、トロイアの戦争で、ディオメデスという豪傑に怪我をさせられたときに、彼女のことを慰めて傷の手当てをしてをしてあげたらしい.なかなかの人格者で優しいおばあさんである.
「あの子たちは?ゼウスとポセイドン・・・甥っ子の極道ども、こそこそ隠れてないで、出ておいで!」
ドアの向こうに、隠れて、なかなか早に入ってこない、ルシフェルとポセイドンに向かって、テミスのおばさんが声をかける.
掟の女神、ティタンの一人であるが、ティタノマキアの時もその地位が揺るがなかった唯一の神と言って良い.掟の神で、つまりはおばば様に言わせると、「裁判官で、堅物」
だから、ちゃらんボランで遊び人、時に法を犯すことも、ままある、ルシフェルと、ポセイドンはこのおばさんが苦手なのである.
「あなた、入ってらしたら、楽しいですわよ・・・・」
相変わらず、言葉の最後の方が消え入りそうな話し方をするのは、レト様である.
しぶしぶというか、海丸くんに引き摺り込まれる感じで、書斎に入ったルシフェルとポセイドンは、中に、はるなと静香、愛ちゃん健ちゃんのママがいることに気がついた.彼女たちですら、このおばさんたちと同席すると、口を挟む暇がないということか・・・・・・
「で、レト、皆で楽しそうに何を話していたんだい?」ルシフェルがレトに話す話し方で、静かに話すと、
「あんた!そういうところがよくない!あたしたちと、レトで話し方が全然違う!異議を申し立てます.ここで、職権を発動して、ルシフェルは、レトと話す時も私らおばさんと話すようにすることを命じます!」
「ははは、堅物、テミスの職権発動出たね!」
「でもね、テミスの職権発動、ステュクスに誓うほどの拘束力は神々にはないんだよね.」おばば様がいうと、
「なんだ、姉さん知ってたのか、この極道だったら、ちょっと、裁判所の権威振りかざせば、大人しくすると思ってな、はははは」
「おばさま、今度、ぜひお願いいたしますは、なかなかこの人、この頃は私のいうことも聞いてくれなくなりましたのよ・・・・」レト様はルシフェルにこれでもかというほど優しくされるのだが、まだ不満らしい
「で、おばさんたち、今日はなんのようで、うちの母ちゃんまで・・・」
ポセイドンがきく.どういう会なのか?
「いや何ね、おばば様と、レトが、人間の世界に神々が集まるところがあって結構いろんなやつがいて面白いっていうからきてみたんさ、ねえ、姉さん!」
「そう、私が来てからレトが来て、レトも此処のこと気に入ったみたいでね、そんじゃ、デロス島でアポロン産んだ時みたいにみんなで集まりましょうかってことになったのさ」
全く影が薄いというか、アルテミスとアポロンも部屋の中にいた.今気がついた.それだけ残りの面々が個性的だということか・・・・
「あ、静香さんにはるなさん、ママさんも、ごめんなさいね、後で片付けお手伝いしますね・・・」
レトさんは優しく、静香とはるなとママに気遣いを見せる.
彼女たちもなぜが、ポート顔が赤くなってしまった.
アルテミスとアポロンがあれだけ、母親のことを大事にする理由はこれだ、と思った瞬間である.
この会は、「レトの会である」定期的に別館で催されることになった.
「予定が決まったら、おばば様、教えてくれますか、なるべくその時、用事入れて、別館にはいないようにしますんで」ルシフェルがいい、ポセイドンがうなずいている.
「あんたたち、また私の職権発動しようか!」
「いやいやおばさん、堪忍してください・・・」
おばさま方は、極道者を肴に楽しいお茶会をしました.
2週間から、月に一回くらい、このような会が、「別館」で行われることになった.




