女とは、装いによって気持ちが変わるもの・・・
女とは、装いによって気持ちが変わるもの
って、知らんけど・・・・
レト様が来られたと聞いて、ママが急いで挨拶に来た.
愛ちゃんを出産する時にアルテミスには随分と世話になった、というか、あれだけ楽な、お産があるだろうか、というくらい楽なお産、だったから.
「アルテミスさん、みんなお母さんが教えてくれた、って言ってましたよ・・・」
「それは・・・違います・・・・」
レトさんは、ボソボソと小さい声で話す.
「あの子、私に気を遣ってそう言ってくれますが・・・本当は、私がアポロンを産む時、あの子が取り上げてくれたから、私もすごく楽をさせてもらったのです・・・」
消え入るような声である.アルテミスの助産術は、彼女の天性のものらしい.
いつの間にか、アルテミスとアポロンも客間に来て、レト様の隣でお茶を飲んでいる.
「まあ、あなたたち、いつの間に・・・・・」
「今日は、お母様を人間の世界にご案内しようと思いまして・・・」アルテミスもいつもボソボソ話すが、お母さんと同じ、ようなさらに小声でひそひそと話をする.
「お父さん、一緒に行きますか?」アルテミスが一応父親も誘ってみた.
「いいですよ・・・・」ルシフェル?
あの男がこんな話し方をするのは初めてきいた.
「ああ、この子、レトと話するときは、こんな感じなんだよ」おばば様によるとそうらしい.
「それでは、どうしましょう?原宿というおしゃれな街にでも行ってみましょうか?」アポロンである.
「賛成ですは・・・」アルテミス
「皆で出かけるのは久しぶりだね・・・ねえ、母さん」ルシフェルである.
なんか、こお、お上品で仲のいい家族みたいで、もうなんか訳がわからん.
とにかく、レト様は、家族、全員を優しく包み、話し方まで自分と同じように変えてしまう、
そんな女性なのである.
結局、愛ちゃんと、健ちゃん、ママ、レト様に、アポロンとアルテミス、おばば様とルシフェル、はるなと、静香で、表参道から、原宿を散歩しましょうということになった.
珍しい顔ぶれである.ドクトルはちょっと遠慮した.おしゃれな場所は私は場違いですという感じだろうか?
山手線で、渋谷まで行った.薬剤師会館の前を通って、青山大学の前を通って、青山通りに出た.子供の城は、閉館したらしい.
愛ちゃんと健ちゃんは、「なーんだ、残念!」
閉館は2015年だからかなり前か.ドクトルは青山通り通った時にまだあったらしい.
表参道をずっと歩いて、原宿駅近くの、おしゃれなカフェが並ぶ通り.
外に椅子とテーブルが並んでいるお店に入って、皆でお茶を飲んだり、甘いものを食べた後、ブティックに入ってみた.
「あなた、この服どうかしら・・・」レト様がルシフェルに聞いてみる.
「うん、お母さんが着るとなんでも似合うよ・・・」デレデレのゼウス=ルシフェルである.
「あ、でも白い服は・・・」アルテミスが、何やら心配している.
「ゼウスのやつ、何にも知らないみたいだね・・・」おばば様は半ば諦めた感じで囁く.
真っ黒の装いを、真っ白な、装いに変えた、レト様は試着室から出てきた.
明るい日差しが、店の中に差し込んだその時である.
彼女の体は、白い服本来の白さ以上に、明るい光をはなちだした
「おーほほほ!」
いきなりレト様が試着の服を着て、踊り出しそうになった!
「あ、まずい!」アルテミスと、アポロンが、慌てて、レト様を暗い店内に、連れ戻して、元の黒い服を着せた.
レト様は黒い服に戻ると、またいつものボソボソと小声の話し方に戻った.
しばらく何軒か洋服屋を梯子して、原宿駅の近くに来たとき、
何やら騒ぎが起こっているようである.
乱暴ものの若い男が、女の子をいじめているようである.やれやれ、とアポロンとルシフェルと、アルテミスが男を抑えに向かおうとした時.レト様に、そういうことで、あのならず者を制圧に参りますが、と言おうとして、振り向いたら、レト様はもういない、あれ、とまた道路の方を見ると、なんとレト様がゆっくり、乱暴者の方に近づいている.
「あ、やばい!母さん、やめて・・」アポロンとアルテミスが叫ぶ
「レト、やめな!」おばば様も鋭い声を上げた.
黒衣のレトは若い男に少しずつ近づいていく.
男は何事かと思う.黒い服のおばさんが近づいてくる.最初は下を見ていたおばさん、だんだんと顔を上げて、こちらを睨みつけてきた.
黒の服がだんだん明るい色に変わってきたように見えた.
そして、白い明るいドレスが、光を放ち始めた、と思うと
「おめえな!いいわけーもんが、女子をいじめるたあ、何事だ!」
あれ、誰の声?
大声の主はレト様だった.
ほんの数秒のうちに彼女はその大男の乱暴ものを殴り倒して、後ろ手に腕をねじり上げていた.
(レト様がアポロンを出産するとき、ヘラは、光が当たらない場所で、と厳命した意味が、分かった気がした・・・・)
おばば様は「あちゃー」という顔で空を見上げている
愛ちゃんと健ちゃんとママはあっけに取られている
ルシフェルも何が何だかわからない.
そのうちに警察の人が来て、その男をどっかに連れて行った.
原宿駅の向こうには、
右手に、神宮の森が、全ての光を吸い込むように鬱蒼とたたずみ、そして、
その左手には、現代の権力を象徴する、国立放送の建物が、全ての光を放散するように聳え立っていた.




