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アテナと四天王①「21世紀、日本の首都・東京、人の波・・・」



 パリスの審判という美人コンテストをご存知だろうか.エントリーはルシフェルの奥さん、女王の女神のヘラと、美の女神、アフロディーテと、アテナである.訳のわからんコンテストではあった.結果はみなさんご存知の通り、年増で色っぽい系が好きなパリスは、アフロディーテを選んだのだが、終わってからのアテナの荒れ方がすごかった.

「なんなのあのパリスとか言うヘタレ男、あんな年増ババアのどこがいいのよ、ちょっとおっぱいがでかいだけじゃあないのよ、私は、おっぱいの大きさだったら負けるけど、まだ、処女よ、あんな経産婦と一緒にしないでほしいわぷんぷん」と言う感じで、ふいごはの火をひっくり返す、鍛えている途中の刀を振り回すは弟子たちに投げつけるはで大変だった.一通り暴れるとまた例の無理な注文が入る.

今日は、「フランス料理が食べたい.」と言い出した.

一同、「はあ?」「フランス?」「なんだそれ・・」と言う感じでポカっとしていた.そこに珍しくルシフェルの来訪だった.

「あ、お父さん」

「おう、今日は残念だったな」

「うん、そんでねアテナ、あんまり悔しいからヘパにフランス料理食べたいって言ったの、でもみんな知らないって言うのよ、サイテー」なんだ、そんなことか、じゃこれから食いに行くかね.皆もどうだい.そう、ルシフェルとその一味は、時間と場所を自由自在に行き来できる.じゃあま、21世紀の東京にするか.あそこが一番うまいものが多いって言うからな.驚くほどあっさり決まった.ルシフェルと、アテナと、ヘパイストスと四人の弟子の時間旅行が始まった.

 産まれる前、アテナは父の頭痛の原因たねだった.その辺の話は前に何度かしたことがある、と思う.だが今は、目の中に入れてもおそらく痛くないのではないかと思うほど、ルシフェルはアテナを溺愛している.その様子は他の子供たちが嫉妬するほどであったという.だからこの親父は、わがままな娘の無理難題は、だいたい聞き入れる.


「お父さん、ほうちゃんどうしようか?」アテナはフクロウを飼っている.「ほうちゃん」という.おい、ほうよ、おめえも一緒に来るか?ほうは行きたいと、体をすぼめた.

「フクロウのあの、丸いのからげそっと痩せるみたいなのは一体なんなのかね」などと、ルシフェルとヘパおじさんは話しながら、時空の渦の中に身を投じた.フクロウのほうちゃんはアテナの肩に乗ったままだ.流石にレストランに入る時にはほうちゃんは入れないのだろうな.まあ東京はネズミが多いというし、ほうちゃんは別行動か.

 ちなみにアテナのローマ神話での呼び名はミネルバという.かの大哲学者、ヘーゲルが宵闇に飛び立つと言った、ミネルバの梟とは、このほうちゃんのことである.

 東京はいろんな食べ物屋が多いが、それに入りきらないくらい、人も多い.日本人の十人に一人が、国土面積の僅か、180分の1の領域に押し合いへし合い住んでいるのである.なんでも、2025年に人口の減った都道府県は46府県で一つだけ増えたのは東京都だけだそうだ.ただでさえ、需要に供給が追いつかないであろう、外食産業である(本当かどうかは各自調べてみてください).フランス料理なんて、「予約」とか言う人間独特のシステムを使わないと店にさえ入れてもらえない.

「へえそんなもんなんすかね」とヘパがいう.

「さあ、問題はどこでどの店に入るかだが、東京駅の近くとか、ダメそうだな、うー、新宿に渋谷、ダメだどこもいっぱいそうだな、そうか上野の西洋軒ならこんだけ人数いても大丈夫かもな、え、何?、今日休み、そっかー、残念.」思案にくれたルシフェルははるなに相談する.はるなは快く頼みを聞いてくれた.そして、いともあっさりと、立川駅の近くの「17(ディス・セット)」という店の予約を取ってくれた.なんでもドクトルとよくデートできた店だそうな.なかなかいい感じの店ですよ、と言っていた.

 東京駅の中央線の階段、足の悪い、ヘパイストスには大変だから、エスカレーターで行くか.エレベーターにするか?と、みなは気遣うのだが、

「なーにこれしき」、ヘパイストスはビッコ引き引きあの長い階段を悠々と登っていった.弟子もそれに続く.中央線の電車で東京から立川まで.あれだけの人がいれば、多少の異形のものどもも、それほど目立たない.ただアテナだけは目立った.なんせ可愛いから.冒頭で述べた、パリスの審判というこの世で最初の美人コンテストの3人の候補に一人だ.といっても、アバズレのアフロディーテと、ババアのヘラと、まだ中学生くらいのアテナの3人だけのエントリーだが.審査員長のパリスには公然と賄賂が示される.アテナは軍略を、ヘラはアジアの支配権を、アフロディーテは、なんと世界で一番美しい女をやる?繰り返しいうが訳がわからんコンテストである.なんでも誰かの結婚式に呼ばれなかった不仲の女神が、世界で一番美しい人にと書いたリンゴを放り込んだことでこのコンテストは始まったらしい.無駄話でした.

 

 東京から乗ったのは青梅行き特別快速だったので、立川にはすぐ着いた.立川駅の南口を降りて、雨ざらしのエスカレータ(三鷹にしても立川にしてもなんで東京のエスカレーター雨ざらしなんだ?錆びたり故障したりしないのかね、鍛冶屋のヘパイストスとルシフェルの二人の爺様はそんな話をしながら)を降りて街の中を行くとビルの2階にその店はあった.ルシフェルにアテナ、ヘパイストスに弟子4人、着の身着のまま、以下の出立ちである.明らかにカジュアル未満の服装である.本来は、ドレスコードのある店で、スマートカジュアルな服装が要求される.(スマートカジュアルってなんなんだ?見窄らしくない程度、という意味か今度聞いてみてよ.)はるながオーナーと仲が良くてそこはなんとか大目に見てもらえることになった.店の中に入って、はるなの名前で予約したものですが、と案内を乞うとテーブルに案内された.そこにはなんとはるなとドクトルの姿があった.やあ、鬼丸さん久しぶり、相変わらず冴えない感じのドクトルが穏やかに笑って挨拶してきた、おや、鉄丸さんも一緒でしたか.種子島の鉄砲鍛冶をしている時にドクトルはヘパイストスとも面識があった.そこでヘパの親父は、「鉄丸」と名乗っていた.

「こちらの可愛いお嬢さんは?」

「おお、これは俺の娘のアテナ」お姫様がドレスの裾をたくし上げて、足を前後に、膝をちょこんと曲げて、ニコッとお辞儀する挨拶をアテナはした.

「こっちのむさっ苦しい、目つきの悪い奴らは、鉄の弟子たちで鍛冶屋さ、今日は皆オリンポスからきた.」

「え、」と一瞬、ドクトルは身構えた.彼らは確かに目つきを鋭くこちらを睨んでくるが、なんのことはない、その八つの目はどれも、湖のように澄んでいる.

「まあまあそれは遠いところをご苦労様、今日は私がご馳走しますから、みなさんどうぞご遠慮なく.」


 9人掛けのテーブルに、手前からはるなとドクトルが向かい合って座りその隣にアテナとルシフェルが向かい合わせに座って、その隣と隅っこに、ヘパの親方と、4人の弟子が、適当に座るような感じである.入り口に一番遠いところが一応上席という作法らしいが、他のお客がいた場合に、一行の最も外から見られたくない恥ずかしい部分を遠くに隠すという、暗黙の配慮があった.

 アテナは初めてのフランス料理にワクワクドキドキである、なんとスプンとか、フォークがいくつも並んでいる、ナイフのようなのが、右手に、スプーンは前に、フォークは左手の置かれている.ヘパも、弟子たちも興味津々である.もちろん彼らには食事をナイフとフォークなんか見たこともないし、それで食事を食べる習慣も経験もない.(これ、鍛冶屋が作るのか?それにしても綺麗な道具だな・・・)


紙に書いてあるその日のメニューは、以下の通りである.


牡蠣のポッシェ、レモンクリームと牡蠣のジュレ、キャビア添え


前菜 

エゾシカと丹波の猪のテリーヌ

ほろほろ鶏の減圧ハム、オーロラサーモンのマリネ


オマール海老のソテー


本日の鮮魚料理

真鯛のポワレとムール貝(鱈の白子) マッシュルームのソース

メインの肉料理

ニュージーランド産牛ひれ肉のステーキ フォアグラ添え マデラソース


デザート、小菓子

・・・・・・・・・

どんな料理が出てくるのやら、続きは次回までお預けということで.


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