おばば様の、「やっぱりわたしゃ・・・」
動物園に行った後、おばば様の様子が少しおかしい.
ご飯の時にはみんなと一緒にニコニコと楽しそうに話をするのだが、
ご飯が終わると、部屋に篭ったきりで出てこない.
ご飯の時も、時々黙り込んで、「ふー」とため息をついていることを海丸くんは気がついている.
普段なら、皆が書斎でお茶の時間、今日は、部屋にはおばば様とルシフェルと、はるなしかいない.
「ゼウスとはるなさん、お話があります」
「なんだい、おばば様、改まって・・・」
「やっぱりわたしゃ、オリンポスに帰ろうと思う.」
「おばば様、やっぱりライオンのこと・・・」はるなはなんとなくそんな予感がしていたのかもしれない
おばば様は黙って頷いた.
「ここはすごく居心地がいい.息子や娘たち、孫もいるし、はるなや静香、みんな親切にしてくれる.大体のことはオリンポスより、こっちの生活が私にとってはいいと思う.愛ちゃんも健ちゃんともせっかく仲良くなったばかりだけど、一つだけ、オリンポスにあって、ここにないものがある、それが・・・・」
「ライオンたち、ってことだな、おばば様」ルシフェルがいうと
「あんた、変なところで物分かりがいいねえ、でもその通りさ.猛獣、飼えなくもないのだろうけどね、やっぱり危険だしね、私はもう長くいきたし、いつ猛獣に食い殺されても文句はないのだけど、若い人たち、後、周りの住民の人たちはそう言うわけにはいかない」
はるなはすでに目が真っ赤である.泣き出しそうな顔になっている.
「せっかくいい部屋をよういしてくれて、お詫びのしようがないのだけどね・・」
「おばば様、お部屋、ずっとそのまま置いておきますから、いつでも帰ってきてください、週に一回くらい、無理なら、月一回でもいいから・・・・」
(うるうるうる・・・)
「ぶ、ぶ、ぶウェーーーーー」とはるなの号泣が始まった.
まずいことに皆がびっくりして、書斎に集まってきてしまった.
健ちゃんと、愛ちゃんも来てしまった.
「おばば様、オリンポスに帰っちゃうの?いやだいやだ、せっかく仲良しになったのに・・・」健ちゃんまでうるうるし始めた.
隣で愛ちゃんはニコニコしている.
「おばばしゃま、いないと、ライオンさんたち、かわいそうかもね・・・」
愛ちゃんが言うと今度はおばば様がうるうるし始めた.
「おばばしゃま、また、あいちゃんに会いに来てくれる?ライオンさんがいいって言った時・・・・・はるなのおうち、これる?」
おばば様の(うるうるうる・・・・)
「ぶ、ぶ、ぶウェーーーーー」
これはおばば様の号泣である.どれくらい続いただろうか、号泣の伝染の後、ちょっと落ち着いたところで、
「まあ、おばば様にとっちゃあ、ライオンたちも、子供みたいなもんだしな、奴らと触れ合ったからこれまでボケなかったとも言えるし.俺たちと一緒に暮らした途端にボケたら、シャレになんねえ・・・・」ルシフェルはなんでこんなにスパッと割り切れるのか.
「ヘルメスに頼んで、週に一回くらい別館に連れてきてもらう、そしておばば様の留守の間は、ライオンたちの世話はオリンポスに残った奴らでなんとかする、それでいいわけだな!」
「あっしはそれでいいすよ」
スーとカブトを脱いで、姿をあわらしたのはヘルメスである.
「ライオンの餌の世話なら、私が、猪とか鹿をとってくるから任せて」
なんだ、アルテミスもいたのか.
「オリンポスにいる間は私がおばば様の面倒を見る!まあ、これまでもそうだったけどね」
「あ、後、ヘラクレスにだけはライオンの世話まかすんじゃねえぞ、あいつすぐにライオン絞め殺そうとするからな!」ルシフェルの警告はもはやブラックジョークでしかない.
泣き止んだ、はるなが涙を拭きながら、
「じゃ、お別れ会しましょう.それで、来週またおばば様の歓迎会ね」
「あ、おばば様、これ持ってて、オリンポス工業の最新作、おばば見守りフォン、
オリンポスと現代日本で通話できる、まあ言ってみればスマートフォンかな」
アテナがいきなり会社の製品の宣伝を始めた.
ほら、写真も撮れるし、電話で話もできるよ、もちろんメールもできる.別館にも一つ置いとくから、時々電話してよ・・・」
「ほお、すごいもんがあんだね、なになに・・・・」
(パシリ)
「ほお、写真が撮れんのかい」
「こうするとね、みんなの写真撮れるから、あ、帰ったらライオンの写真送ってよ.そんで、なんかあったら連絡してよ、私たちすぐに行くから」アテナの製品説明?
「ありがとよ、孫からのプレゼント、大事に使わせてもらうよ」
おばば様は「オリンポスおばば見守りフォン」を大事そうに両手に抱え、胸に押し当てた.
海丸くんがみんなと写した写真を待ち受け画面にしてくれた.
「これならいつもみんなと一緒だね・・・・・」
皆でお別れパーティーののち、おばば様をオリンポスに送り出した.
考えてみれば、アテナも、四天王も、ヘルメスも、しょっちゅう、オリンポスと、別館を行ったきりきたりしていたのだった.
頻度は少ないが、ヘスティアのおばさんもこの頃はしょっちゅう、オリンポスの厨房を開けて別館の手伝いに来てくれるのだ.
そして、僅か1週間後にまたおばば様の歓迎会が同じ場所で行われていた.
引き続き、おばば様は「別館の仲間」であった.




