症候学⑤「発熱」
いよいよ、症候学の「華」(?)発熱について学ぶ時が来た.
「実を言うと発熱のこと、系統的に学んだことがないから、曖昧なところが多いのです」とはドクトルの正直な感想である.
「今日は内科の教科書から基礎から発熱を学び直したいと思います・・・」と言うことで、症候学の最初に記載されている、「発熱」の項を詳しく読んでみる.これは意識障害に関する、中田力先生の半ページの記述よりは多くて、2ページと数行に及ぶ記載である.かなり、理解しやすいまとまった記載だと思った.
順に読んでいく.
人体の体温は、熱産生と熱放散(輻射、伝導、対流、蒸発)により、だいたい、35〜37℃に保たれる.
生理的には、早朝の2時から4時が最低で、16時から18時が最高である.
体温の日内変動は、0.5 ℃以下が正常で、1℃以上は異常である.
早朝37.2 ℃以上、夕方37.7℃以上は発熱、低体温は、35℃以下である.
女性は排卵から月経までに0.6℃の上昇がある.
小児は成人よりおおむね、0.5 ℃高い.
測定部位によっても体温は変化する
大体は、腋窩温・鼓膜温<口腔温<直腸温ということになっており、
それぞれの温度差は、 0.2℃、0.6℃とされる.
℃(摂氏度)と°F(華氏度)の換算式は以下のようになっている.
°F = (°C × 9/5) + 32
体温の調節部位は間脳の視索前野・前視床下部で、体温中枢と呼ばれる.
急性発熱の期間は2週間以内で、
37.1〜38.0℃は、微熱
38.1〜38.5℃は、軽度発熱
38.6〜39.0℃は、中等度発熱
39.1℃以上は高熱とされている.
(37.5℃以上は色々と精査していたが、微熱だったら様子みてもいいと言うことなのだろうか?しかし、新型コロナの頃は、37.5℃以上の熱があると、強制的にPCR検査させられたり、出勤の制限がかかったり、飲食店に入れないとかいうことがあった気がしたぞ・・・)
特徴的な熱型に以下がある.
稽留熱:1日の体温差が1℃以内で持続.
(大葉性肺炎、腸チフス、ブルセラ症、粟粒結核)
弛張熱:1日の体温差が1℃以上で、最低体温が37℃以上.
(敗血症、膿瘍、膠原病、成人 Still病)
間欠熱:高熱期と無熱期の差が1℃以上で最低体温が37℃以下
(マラリア、敗血症、Felty症候群)
回帰熱:1日ないし、数日の正常体温期の間に短期間の有熱期間
(ボレリア感染、Hodgkin リンパ腫)
周期熱:規則的な周期を持つ
(マラリア3日熱、4日熱)
波状熱:有熱期と無熱期が規則的に交互に現れる.
(ブルセラ症)
「これはなんとなく習ったことがある気がします.Hodgkinリンパ腫で、Pel-Ebstein型の発熱があるとか、マラリアの三日熱とか四日熱とか・・・・」
ドクトルは「しかし・・・」と続けて、
「チフスとかブルセラとか、マラリアなんて正直患者さんを見たことがないのですよね、見ていてもそうと認識できる環境ではなかった・・・」
病態生理
内因性物質として、マクロファージ、単球、リンパ球から分泌される、
IL-1α、IL-6、インターフェオンα、-β、TNF-αなどのサイトカイン.
外因性のものとして、エンドトキシン、その他の細菌、ウイルス、真菌由来の物質がある
第三脳室前腹壁にある終板器官の血管内皮細胞は、発熱物質である、プロスタグランディンE2を産生しEP-3受容体を介して、視床下部のグリア細胞からcAMPを放出して、体温調節を刺激する.
朝倉出版、内科学 第11版の記載である.
診断の手順の記載が続く.
発熱をきたす疾患
感染症
細菌
ウイルス
寄生虫
真菌
手元に「不明熱の診断学」という本がある.かなり前に買った本だ.
(文光堂出版、2014年 第1版、第9刷)
不明熱
古典的な不明熱の定義は
1.38.3℃の熱が
2.1週間の入院精査でも原因不明で、
2.3週間以上続き
Petersdorf とBeeson(1961年)の定義が冒頭で触れた、三項目らしい.最近の定義では、3日間の精査でわからない時となっているらしい.誰の定義だろうか?
2週間ほど精査しても原因がわからない病気を不明熱というが、それに含まれる病気にはどのようなものがあるか?
わかりにくい感染性疾患と、膠原病、悪性腫瘍
というふうに教えられた.
感染性では
結核
感染性心内膜炎
膠原病・リュウマチ性疾患、自己免疫疾患、血管炎症候群、(昔、習ったところのWegenerの肉芽腫性血管炎みたいな病気?この病気、ポリクリで担当の先生にコテンパンにやられたトラウマがある!そして、ハリソンには、Wegener’s granulomatosisという病名はなく、granulomatosis with polyangiitis、GPAという病名で載っている.)
悪性リンパ腫等の悪性腫瘍
固形癌では、腎癌が結構熱が出ることが多いらしい.しかし腎癌の診断と治療に脳外科が関わることは、転移性脳腫瘍を多く見る医者でなければあまりないかもしれない.
深部静脈血栓症でも熱が出るというわれるが、血管内の凝固が起こると熱が出るのだろうか?それとも熱で血液の正常が変化して、血液が凝固するのだろうか?その辺の記載もあまりちゃんと勉強しないと教科書からは読み取れないが、とにかく発熱の鑑別診断には静脈血栓は大体載っているようだ.
インフルエンザや、新型コロナウイルス感染症では、流行が手がかりになるし、
海外渡航歴から、マラリアや、出血熱の診断の糸口が得られることがあるだそう.
膠原病、悪性腫瘍、結核、になると、内科の先生がいないと、お手上げである.
「不明熱、そもそも、不明でない熱性疾患すらおぼつかないのに、基本がなっていないのに、原因がわからないというのも、烏滸がましい気がしますね.不明なのは、私自身の不明による・・・恥ずかしい話です」ドクトルが少ししょげると、
「まあ専門を外れると、そういうこともあるだろうさ」ルシフェルは慰めのつもりだろうか・・・・・
内科の教科書には不明熱に続いて、比較的徐脈をきたす熱性疾患について記載があった.
発熱する時には脈が速くなることが多いが、相対的に、脈がゆっくりな発熱をきたす疾患として、
感染症
マイコプラズマ肺炎
レジオネラ肺炎
腸チフス、パラチフス
Q熱 (コクシエラ症)
オウム病(クラミジア肺炎)
ブルセラ症
野兎病 (ツラレミア)
黄熱病、デング熱などの一部のウイルス性出血熱
(黄熱病は野口英世の話でしか正直知らない、デング熱は、ドクターコトーの後輩のなんとか先生が亡くなったということでしか知らない、あ、何年か前に代々木公園で何例か見つかったのはデング熱だっけ・・・)
マラリア(一部の種)
ワイル病(レプトスピラ症)
ライム病(心炎を合併した場合)
非感染性疾患
薬剤熱(特にベータ遮断薬など特定の薬剤によるもの)
中枢神経系疾患(脳腫瘍、脳出血など)
悪性リンパ腫
成人スチル病 (Adult-onset Still disease: AOSD)
これらの疾患では、通常の発熱時に見られる心拍数の増加(リーバーマイスターの法則Liebermeister’s rule)が当てはまらず、診断の手がかりとなる、か.特に、マイコプラズマやレジオネラなど細胞内寄生性のグラム陰性菌による感染症で多く見られる傾向があります.
LQQTSFA・・・
場所、性質、程度、いつ起こるか、原因、要員、随伴症状をまとめたらしいが、この標語もハリソンには乗っていない.朝倉内科には堂々と書かれていたが、どうだろうかという気もする.
「Liebermeister’s ruleは、ハリソンの索引に出ていません.この教科書の特徴でしょうか、個人名の兆候をあえて書かない的な?」ドクトルの疑問である.
「まあ、偉い先生たち、皆そんなの知ってるわい、的な、あるいは、俺の方が先に知ってたよ的な、競争心があるんじゃないの?他にどんな例があるかな・・・」とは、ルシフェルの意見である.
「パーキンソン病とか、シャルコー・マリー・トゥース病なんて言う病名で言うと、あ、Hodgkin病もそうですね.個人の名前つけますね.でもその症状、発熱パタンの、Pel-Ebstein feverていうのは・・・・あ、載ってた」手元にある、ハリソンですぐに調べたら、これは載っていた.
熱の原因、不明熱も含めて、
感染
膠原病、血管炎症候群、自己免疫疾患
悪性腫瘍
これらの病気の他に熱が出る病気として、
悪性症候群
悪性過高熱
薬剤性
と言った記載がある.
熱が出たときにはこれらの鑑別をしろとは、気が遠くなりそうな、ことである.
脳外科を選んでよかったのか、悪かったのか・・・・
「内科の勉強、学生時代に疎かにしてきた、ツケがこんな形で現れるとは、こんなことならもう少し真面目に勉強しておくべきでした」ドクトルは反省ばかりしている.
「なあ、ドクトル、皆、年取ってからそれを言うんだよな、自分の努力で、それをできる人がこの世界、偉い人ということになるんだろうね」




