越後の雪山にて③「母と子の再会」
朝食のビュッフェ、いろいろご馳走が並んでいて、目移りしそうだが・・・・
しかし、あまりお腹いっぱいになっても、運動できないからと、朝ごはんは皆やや軽めに済ました.
スキー二日目.
一晩、雪が降ったが、朝には晴れて、少し温かいかもしれない.絶好のスキー日和か.
子供達が、ボーゲンで、ゆっくり斜面を降りてくる.曲がり方も教わったので、ジグザクに滑れるようになっている.海丸くん、愛ちゃんと健ちゃんの後ろからアテナもついてくる.初日ほどには転ばなくなった.しかし曲がり方は子供達ほどには滑らかではないかもしれない.
隣をママと、はるなと静香が交代で見守る.
ドクトルは?ドクトルは、全くの初心者のデメテル母さんと、ルシフェルと、3人で、中級コースをマイペースで滑っている.
四天王も初心者というか、皆初めてスキーを履いたはずなのに、すでに上級コースを平気で滑っている.モーグルの凸凹コースに挑戦しているのは、多聞天玄武である.
増長天朱雀に至っては、なんと、簡易のジャンプ台から、飛んで、30mほど中を舞っている.
「あ、気をつけないと、着地に失敗すると、股関節外したりするんだよね」ドクトルは、ハラハラしながら若い人の滑りをみる.
アポロンは、相変わらず、例の3人娘と一緒であるが、いい加減飽きてきたみたいである.彼は追いかけることには熱心だが、簡単に靡いてくる女やら、よってくる女にはあまり食指をそそられないタイプである.
愛染の母ちゃんも同様で、女の子たちの連れの男の子たちと一緒に滑っていたが、いい加減飽きてきたみたいである.この頃は仲介業中心で人の相手を探す仕事が面白くて、自分の相手を探すのもういいかな、と思い始めた頃である.
昼ごはんは、スキー場にあるロッジでめいめいが勝手に食べるような感じ.しばらく昼休みの後、午後の滑りを始めたしばらくした頃.
日差しが強い.少し熱いくらいである.
「もう一滑りしますか」
午前中と同じように、それぞれが、滑っていた時.
遠くで、ゴロゴロと地鳴りのような音?
「あれ、雷?でも晴れてるけどね・・・」
「こんなに晴れてても雷なることあるの?」はるなが静香に聞いた
「いいえ、こんなに晴れてて、雷ってまずないね・・・」
またゴロゴロと音?しかし空ではなくて足元から聞こえてくるようである.
するとスキー場のサイレンがなり、
「雪崩警報、雪崩警報、みなさん、スキー場の脇に逃げてくださ・・・」
アナウンスが終わる前に、どーと、大きな音がした.
ゲレンデの上の方から、雪が流れ落ちてくる・・・・・・・・
「雪崩だ!」
子供たちは皆、先の地響きと揺れの時にその場に倒れ込んでしまっていた.子供たちの後ろから、滑っていた、海丸くんもその場に座り込んでしまった.
崩れてくる雪の塊の中央部に、逃げ遅れた人が10人ほどいる、脇には、数人が、今まさに雪崩に巻き込まれそうになった時である.
地響きを聞きつけた、ポセイドンが、それまで雪かきをしていたスコップを投げ捨てて、ゲレンデの雪崩を見下ろして、
「海丸!いくぜ・・・」雪崩の地響きよりも大きな声で、息子に呼びかける.
「リバイアサン、リバイアサン、リバイアサン!」
足元の雪の間から、水柱が立ち、やがて渦を巻いて海丸くんの体を覆った.
銀色の竜が出現した.目の光は、青い.
そして今回はいつもと違うところ、なんと、北野天満宮のお守りが、梅の御紋の形ををした、1尺四方の鎧として、逆鱗を覆い隠している!
アテナの側には、いつの間にか四天王、
「お嬢、アイギス!」広目天白虎が、アテナに向けてアイギスを投げる.
みるみる、2畳ほどの、板に変わったアイギスの盾は、雪上に落ちて、雪崩に先行して斜面を滑り出した!
アテナは翼の生えた女神の姿でその上に舞い降り、まるでスノーボードに乗るように、華麗に滑り始める.
四つの手綱をアテナが持ち、そのそれぞれは四天王に繋がっている.
彼らが、ボードに乗ったアテナを安全な場所に導く.
逃げ遅れた、人たちをアイギスの上に回収して、雪崩を左に避けて、避難する.
愛ちゃんと、健ちゃん、静香とはるなが逃げ遅れた!
少し離れたところにドクトルもいる!
その時、白い影が二つ、雪崩の両脇から、逃げ遅れた人たちに向かって動く.隼が、獲物にぶつかり、倒すように、その正体は見えない.
影が動くようにも見える.
読者の皆さんは覚えておられるだろうか、親知らずの浜で遭難した、ポセイドンを助けた雪姫と、イエティである.
落ちてくる雪の塊、正面からイエティが、右から雪姫がまるで、サーフィンで高い波を横切るように、上から覆い被さってくる雪の梁の下を潜るように、取り残された人のもとに走る.
雪姫は、愛ちゃんと、健ちゃんを、静香と、はるなの背中にそれぞれ背負わせて、右の方に逃げろと指さした.静香とはるなは雪崩よりも早く、滑走して、右に避難する.
「ドクトル逃げて!」はるなが叫ぶ・・・
そこに左から流れ落ちてくる雪の塊にスノーモービルが猛スピードで接近してきた.ママといつみさんが乗っている.ママが操縦して、いつみさんが、雪の上に転がっている、ドクトルを引っ張り上げて、スノーモービルの後ろに乗せた.雪の飛沫をあげて、急旋回したスノーモービルは、雪崩の左側に逃れた.
ルシフェル、アポロン、アフロディーテ、デメテル、キューピーは天使の姿に変身して、側にいる人たちを空に逃した.
「あ、でも間に合わない、雪崩に飲まれる!」
まだ何人か人が、雪崩の進む方向に取り残されている!
その時、ポセイドンが、雪崩の正面にイエティから少し離れて立ち、三叉の鉾をふるって、巨大な雪の半分を薙ぎ払った.
さらに白いけむくじゃらの大きな生き物、イエティが、残りの雪の塊を拳で叩き割る.
「だああ、スケー!」地響きのような大音声である.
まだ、雪の塊が落ちてくる.それをリバイアサンが、水の砲弾で打ち払う.
砕けた雪の塊、残った塊が今まさに、取り残された人たちに襲い掛かろうといき・・・
「あ、危ない!」
海丸くんがとっさにとぐろを巻いて、残された人たちに覆い被さった.その直後、銀の龍は雪崩に飲み込まれた.
イエティとポセイドンが、大急ぎで雪の中から、龍とその下の人たちを救い出す.
「ああ、海坊!死ぬな、海坊・・・・」ポセイドンが必死で海丸くんの上に被さった雪の山を掘り起こす.
「だすけ!」イエティも必死で雪を掘り返す.
龍神の海丸くんの鱗の一部が出てきた
「おい、海坊!」
「だーすけ・・・・」
ポセイドンとイエティが呼びかけたところ、
龍は、ぶるぶるっと震えて、上に被った雪を振り払った.
とぐろを解くと、下にいた人たちは皆無事だった.
怪我をした人はいなかったが、低体温で少し具合の悪い人が何人かいた.
アポロンとルシフェルが指示して、手分けして、温かい場所に移動して手当てをする.
スノーモービルに乗って避難したドクトルも具合の悪い人たちの手当てに加わった.
竜神から少年の姿に戻った海丸くんの前に、藁の長靴をはいた、色の白い黒髪の女性が立っていた.顔つきがどことなく、海丸くんに似ている.
イエティが側に控えて拝跪している.
「雪之丞?」女性が、語りかける・・・
しかし、
「はあ?」海丸くんはあれ、人違いなのかな、これはどう考えてもお母さん?でも名前が違うし、僕の名前は「一学だよな・・・」
ポセイドンが、「ああ、」と大声を上げた.
「すまんすまん、海坊、言い忘れてたが、お前の母さんの雪姫と、俺で、おめえの名前を決めててな、ギリシャで俺と一緒にいる時は一学、越後の母さんに会うときの名前が雪之丞ってことになってたんだ、だから、雪之丞ってのは、おめえのことだ!そしてこの雪姫が、おめえの母さんだ!」
「お母さん?・・・お母さん!」
「雪之丞!」
母とこの久しぶりの再会である.二人は抱擁した.
「今回ね、みなさんにスキーに連れてきてもらったのだけど、本当の目的はお母さんに会うことだったんだ・・・・」
海丸くんはリュックサックの中をゴソゴソ探ってドライフラワーを出した.
「この前の母の日に、ペルセポネに分けても割った、カーネーション!ペルセポネに頼んで今日会うときのためにドライフラワーにしてもらってたんだ・・・」
「はい、お母さん、母の日おめでとう!」
別館の仲間の中には啜り泣くものもいる.離れ離れの母と子の再会であった.
その日の夕方のニュースでは、妙高高原スキー場での、雪崩事故のことが報じられていた.
「死亡者はもちろん、怪我をした人もいない模様です.逃げ遅れた人たちの救助に関与した人たちは、名前も名乗らずにその場を後にして、どこの誰かは、不明だとのことです・・・・・」




