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越後の雪山にて②「ペンション、最高!」

あまり暗くならないうちにペンションに戻ろう、という約束だったので、4時頃には皆ペンションに戻っていた.


愛ちゃんと、健ちゃんは初めてのスキーで興奮している.

海丸くんも、どんな練習をいたかを、ルシフェルたちに話している.


アテナは少し元気がない.あちこち痛そうにしている.


「これからみんなで大浴場にいきましょう!」はるながいう.

「そう、ここのペンションっていうか、この辺のスキー場、温泉が出るんですよ」静香の地元案内である.


みんなで浴衣に着替えて大浴場に.愛ちゃんは、海丸くんやお兄ちゃんと一緒に入りたがったが、今日のところは女性陣と一緒に、ということになった.


広い、浴室.洗面用の鏡と蛇口がいくつも並んでいる.お客はあまりいない.多少混んでもまだまだ入れそうな感じだ.少し硫黄の匂いがするから本格的な温泉だ.


「以前にね、温泉に入ってそれが忘れられなくて、入浴剤買ったんですよ、家でお風呂に入れてみたら、さあ大変、硫黄の匂いぷんぷんで、温泉気分どころではなかったですね」


温泉町のお土産の入浴剤は気をつけたほうがいいらしい.営業の妨害をしているわけでは決してなくて、そのつもりで買ったほうがいいよ、という話です.


男風呂は、ドクトル、海丸くん、キューピー、アポロン、ルシフェル、オトシャンが入る.

向こうの洗面台の鏡のついた壁は上が空いている.その向こうが女湯だから、話し声が皆聞こえる.


「あ、アテナ、あんた、おっぱいちょっとでかくなったんじゃない?」愛染の母ちゃんである.

「ほお、いつの間にか、あんたも大人になったもんだね、ついこの間、まで子供だと思ってたよ」デメテルである.彼女もまだ小さい時のアテナのことを知っている.

「ほんと、アテナさん、の裸、すごいですね、男が見たら失明するんでしょ」はるなが聞く.

「私たち見ても、なんともないみたいだけど、いいの、一緒に入っても?」静香らしい疑問である.


そういえば、この前、海丸くんとキューピーが覗こうといて、ルシフェルに止められたことがあった.


「ええ、女同士なら、大丈夫みたいなんですよね.私の裸は見たら失明するし、アルテミスの裸見たら、鹿になるしって言われてるけど.でも、処女神見て、おかしなことになるのは皆、男らしいよ、だから女が見ても大丈夫.でね、処女神って言うと、ヘスティアおばさんもじゃないですか、おばさんの裸、男が見ると、体が燃え始めるみたいよ」元気になったアテナの処女神論である.

しかし、逸話の少ない、ヘスティアおばさんの裸を見て燃えたと言う男の話は神話には残っていない.


「きゃー!愛染の母ちゃん、まだ、全然いけますね」静香が、いう.

「何言ってるのさー私なんか、もうお腹たるんできたし、おっぱい垂れかかってきたし・・・」


この会話が、隣の男湯で皆まるき声だから、男たちは、皆下を向いて赤い顔をしている.他のお客のグループもいるのだが、聞こえてくるのは、皆自分らの身内ばかりである.


「ねえ、海丸!こっちくる?」愛染の母ちゃんである.

「あんた、だめだろ、鼻血出るだろ」デメテルの母ちゃんも旅先では解放的かもしれない.

「じゃ、キューピーあんた、お母さんと一緒に入るかーい!」


「ははは」女たちの笑い声が浴室中に響き渡る.


「うみターン、あいちゃんと一緒にお風呂入る?」


うみ丸くんは、女湯からの声かけに反応することが最初から終わりまでできなかった.


男湯の面々は、皆下向いて、黙って温泉に浸かるだけだった・・・・


大浴場から出て、部屋に戻ると、ドクトルのところに店の人が来て、

「奥さんがいらしてますよ」

「とうとう来たか・・・」ドクトルはなんか身構える.


「え、いつみさんきた?ほれみんなお出迎え、お出迎え・・・・」ルシフェルが急にソワソワし始めた.


玄関の方に行くと、「よ!」とドクトルに向けて手を挙げる.

ドクトルの奥さんいつみさんである.愛ちゃん、健ちゃん、ママが駆け寄って抱きつく.


「おばちゃん!」と子供達.

「いつみさーん」とママもハグした.


「今日はね、お土産持ってきたよ、ほら、万代太鼓、笹団子と、サラダホープ、缶入りの柿の種もあるよ!」


「おおー!」と歓声が上がった.

「愛ちゃんと健ちゃん、万代太鼓好きだもんね、あ、海丸くん久しぶり、はるなさんと、静香さんとデメテルさんもお久しぶり、おや、アテナさんは元気ないですね、どうかしたんですか?」


「それが、スキー上手くなくて、転んでばっかりで・・・・」とドクトルが説明すると、「ドクトルは余計なこと言わなくていい!」とアテナが少しイラッとしているようだった.


「おや、あなたが、海丸くんのお父さん・・・・ほんとおっきいですね.私ドクトルの女房のいつみです・・・・」


おやおや、と愛染の母ちゃんやら四天王、キューピーや、アポロンにも挨拶をして回る.そもそも社交的な人である.


「もう夕ご飯でしょ、お土産のお菓子は後からにして、みんなで食堂にいきましょうか・・・・」静香の誘導で、夕食会場に行った.


朝、夕のご飯はビュッフェ方式で、皆が好きなおかずを好きなだけ取って食べる形式である.


若い今風の娘さんの3人ずれが、アポロンの方を見て、ニコニコして手を振っている.さっきスキー場で知り合った子達らしい.その連れの若い男が3、4人いるが、なんか怖い顔でアポロンの方を睨みつけている.


「あ、なんか喧嘩になりそうな感じだね・・・」と愛染の母ちゃんが、アテナを連れてその男たちの方に行く.「あーらお兄さんたち、どちらから?」という感じで、話しかけると、若者たちは自分たちの連れの可愛い子たちをそっちのけで、アテナと、愛染母ちゃんとずっと話し込んでいた.


四天王は、いつも通り.いくらでも出てくる料理は、彼らのためにあるかのように食べまくるが、彼らの作法は.

 こぼさず

 とりすぎず

 残さず

である.まさにビュッフェで食べるときの基本エチケットは、生まれついての品格で教えられなくとも厳守できるらしい.


アポロンは、女の子たちに色々、とってあげたり、ジュースをくみに行ってあげたり世話をする.あの男、不器用なのは、オリンポスのクロノスの子供とさらにその子供の男たちに共通の性質らしい.健気の女の子たちの世話を焼いてやる.


うみ丸くんと、愛ちゃん、健ちゃん、ママと、いつみさんとはるなと静香は、自然体の食事である.大人たちのドロドロは無縁である.


ルシフェルとポセイドン、兄弟、とデメテルの母さん、喧嘩もするが、基本仲がいい、3人で何か話しながら静かに食事をしているようだ.


いつみさんはそれとなく、ドクトルの世話を焼いている.

ドクトルがソースをズボンにこぼしたところ「ああ、ああ、ああ・・・」と言って、お手拭きを出して、ズボンを拭いてやっていた.


昼間は、晴れていたが、夕方から雪が降り始めた.しんしんと静かな雪は一晩中降り続いたらしい.


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