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症候学②「胸痛・胸部苦悶」

前回、ドクトルとルシフェルが議論して、症候学で大事な症状は、以下の五つの症状、つまり、


1.意識障害

2.胸痛・胸部苦悶

3.呼吸障害

4.腹痛・腹部膨満

5.発熱


で大まかにまとめうる、そして、意識障害の病態と、鑑別疾患、治療の総論的なことを書いた.


今回は、「胸痛・胸部苦悶」について.


前回と同じく、朝倉書店、内科学(第11版)の記載から.


「ほお、これは病態とか総論よりも、鑑別疾患を中心にまとめてありますね」とドクトル.

「おめえ、偉い先生が書いた本、ちょっと上から評論してねえか・・・」とルシフェル.

「あ、すみません・・・」


胸痛ないし胸部圧迫感を訴える患者は多い.日常診療上大事な症状である.

この症状をきたす疾患は、原因別に以下のように分けられる.


心臓:狭心症、急性心筋梗塞、心嚢炎、大動脈狭窄症


大血管:大動脈解離、肺動脈血栓・塞栓症、肺高血圧症


呼吸器:胸膜炎、肺炎・気管支炎、気胸


消化器:逆流性食道炎、胃・十二指腸潰瘍、胆石・胆嚢炎、急性膵炎


筋骨格系:肋軟骨炎(何科で見るのだろう)、椎間板疾患(胸椎の椎間板ヘルニア、診断は難しいと思う)、外傷(とはこれはまた大まかな・・)


その他:(実は一番、難しいと思う.上記以外、で大事な病気ということだから・・)帯状疱疹(胸部腹部の皮膚を見たら大体診断つきそうだが・・・)

不安神経症(意外と多いかも、何度も胸部レントゲンや、心電図を撮っても異常がないという患者、時々見かけるかも.次のパニック障害と同様、精神科、心療内科の先生に丸投げしがちなのだが・・・)

パニック障害(となると、もう、内科やら外科にはわからない、ことが多い、しかしいかんせん、精神科の先生には器質的疾患の知識があまりないし、精神科、心療内科のクリニック、あまりないか?患者が医療難民化してしまうことが多いかも・・・)


心臓、大血管、呼吸器疾患で、胸部痛、胸部苦悶をきたす場合は注意が必要である、というのは、時に声明に関わりうる病気であることが多いからだ.


心筋梗塞であるかどうかは、かなりわかるようになっているのではないかと思う.来院時の採血、でトロポニンが検査できるようになったのはいつからだろう?心電図では、典型的な例では、S T -Tの上昇やら、異常Q 派の出現やらでなんとなくわかる気がする.


初診で肺高血圧?これは心臓内科の先生以外にはかなりハードルの高い、診断なのではないかと思う.膠原病とか、肺動脈高血圧をきたしうる疾患であらかじめフォローされていれば別だが・・・PSSで、肺高血圧というのはなんとなく聞いたことがある、しかし、SLEでも起こりうるというのは、先日の医学クイズで初めて学んだ.まだ内科の教科書では確認していない.折角だから今しておくか・・・


肺高血圧をきたす疾患、今回の症候の中に肺高血圧という項目はなさそうか.

原因として、家族性のものがあり、いくつかの遺伝子異常が見つかっているらしいがここでは触れない.


強皮症スペクトラム(全身性強皮症、CREST症候群、オーバーラップ症候群、混合性結合組織病)の患者は非侵襲的評価で、スクリーニングが必要であると書かれている.エコーで怪しい時は心臓カテーテル?


肺高血圧症の治療は肺血管平滑筋を弛緩させる、プロスタサイクリン、エンドセリン受容体拮抗薬、PDE5阻害薬、グアニル酸シクラーゼ刺激薬が主流、であるらしい.


「肺高血圧の治療って肺移植しかないと思っていましたけどね.肺移植のことは書いてないみたいですね.肺血管拡張薬が出る前と後で、予後が変わったみたいなこと書いてありますね・・・」

肺高血圧の診断と治療で迷った経験はこれまでにドクトルにはない、らしい.


「心筋梗塞の診断は?迷うことってあるのかい?」ルシフェルの疑問である.

「あくまでも脳外科の立場、あるいは救急外来を担当する当直医の経験ですけど、急性心筋梗塞、胸が痛いって訴えられる方、心電図とって、ST-Tの上昇あると、わかりやすいんですけどね」


「脳卒中の患者さん、たとえば、喫煙者で、ラクナ梗塞を繰り返している方、リハビリ入院の形でしたけど、生活指導とか一切受け入れる気がなくて、面談の時も反抗ばっかり、絶対タバコをやめない、なんて宣言をされている方が、ある時、胸が苦しい、痛い、と訴えて、青い顔して、なんとかしてくれって訴える、、12誘導の心電図、確か、四肢誘導で、II、III誘導と、aVL(aVF?)でSTの上昇があり、心筋梗塞間違いなしというので(下壁梗塞?)で近くの市立病院に転送した例があった.カテーテル検査で、右の冠動脈閉塞だったらしい.PCIして、ステント入れてもらって、元気になって帰ってきても相変わらず、悪態ばっかりついていたが」


「循環器科と心臓外科と脳外科の小さい病院で当直している時だった.地域では、脳と、循環器の病気はほとんどそこに搬送されることになっていた.胸部痛の患者が来た.60代くらい?顔をゆばめて胸を痛がっている.それこそ胸を服の上から掻きむしるように苦しがっている.急いでモニターをつけると、明らかにS T-T上昇がある.ニトロール舌下したり、バイアスピリンを飲ませる間も無く、心室細動になって、あっという間に亡くなった例は印象的だったが・・・・」


どうしてもドクトルの経験談になってしまう.


「肺塞栓症の患者、入院中で亡くなった方、3人いるのです・・・みなさん印象的でしたが・・・」


一人はくも膜下出血の術後、左麻痺があった方.排便後に意識消失、心肺停止になり、蘇生処置をしたが、心拍の再開がなく、死後に取った、胸部CTでは、肺塞栓の診断だった.排便後に下腹部の熱が変わって血栓が肺動脈い流れ込んだということか?


もう一人は、グリオーマの術後、術後軽い左麻痺があった.病棟で診察していた.なんか症状があったか、それは忘れた.土曜の夕方だったが、なぜかその方の近くには脳外科の医者が3人いた.立ち上がったところ、「あー」と弱々しい声をあげて、そのまま心停止に至ったという人がいた.その方は蘇生が成功したが、寝たきりになり、その後亡くなった.病理解剖をすると、下肢静脈血栓が見られた.大腿静脈に静脈カテーテルを入れていたこともあったからそのせいかもしれない.


さらにもう一人は、脳出血で、左麻痺があり、リハビリ中.突然死された.すぐに心臓マッサージ、挿管等の処置をしたが、蘇生はしなかった.肺塞栓の診断だった.


「私の経験した、肺塞栓の死亡例、皆、左麻痺なんですよね.色々調べたけど、あまりちゃんと書かれていない・・・」とドクトル.


「ほお・・・」と珍しく、ルシフェルが興味を示す.「で結局、どういう理屈で・・・」


「心臓血管外科の先生にそれとなく聞いてみたのです、なんで、左麻痺に肺塞栓が多いのでしょうか?と」


心臓血管外科の先生は、「それはiliac compressionがあるからでしょうと.つまり、左の大腿静脈は、大腿動脈が上を跨いで圧迫される形になっていて鬱血しやすいからだとのことでした.解剖の本を見ると、左の大腿静脈は、少し角度をつけて、下大静脈に流れるから鬱血しやすいのでしょうかと聞いてみたら、そのことについてはコメントがありませんでした.下肢の深部静脈血栓症・肺塞栓症、左麻痺が多いという記載があった教科書は、どこかの病院で当直の時に見た、外科の古い教科書だけでした.本の名前は忘れましたが・・・」


胸痛をきたす疾患で重要とはいうが、肺動脈高血圧はあまり見たことがないからわからないし、肺塞栓も、みなさん胸が痛い、などと訴える前に心停止に至っているから、本当に共通をきたす疾患として鑑別が問題になることはあまりなさそうな感じである.


「結局、どんな病気で、元の症状がどんなだったか、ってこと、になるのかな・・」とルシフェル.


「私は、麻痺のある方、特に、左麻痺のある方は特に注意して、リハビリを始める前には必ず、下肢静脈エコーで、血栓の評価をするようにしています.膝窩より下、抹消の血栓なら肺塞栓が重症になることはないから心配ないでしょうし、それなりに大きな血栓は抗凝固薬をやったりを検討しますからね.或いは下大静脈フィルター入れれる施設だったら、循環器科にお願いというように.血栓の評価には、Dダイマー等の凝固線溶のマーカーは役に立ちますね」


胸痛の鑑別診断、長くなってしまった.続きはまた今度.


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