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だから、アレスは嫌われる「お前の悪いところは・・・」


ホメロスの「イリアス」(岩波文庫 松平千秋訳)

第5歌である.


ギリシャの勇者、ディオメデスは例によってアテナに力を勇気をその胸に打ち込まれて、無類の豪勇ぶりを発揮する.


パンダロスをうち、

アイネイアスを傷つけ、その母である、女神アフロディーテにも傷を負わせ、

アカイア勢を悩ますアレスに腹を立てた、ヘラがゼウスの了解を得て、彼を懲らしめようとする目的で、ディオメデスをアテナに援助させて、アレスを傷つける.

アレスはディオメデスに下腹部を刺されて、何事を言いに、オリンポスに逃げ帰る.


アテナが、ディオメデスとともにアレスを攻撃するときはこんな感じだったらしい.


ディオメデスに向かって、智略の女神はこのように言った.


「真っ先にアレス目掛けて、車を走らせて、真近くからさしてやれ.乱暴者のアレスなど、憚ることはない.あれを見よ、正気の沙汰ではない、背腹常なき二股膏薬、悪を絵に描いたような男じゃ、つい先ごろも私とヘラにトロイエ勢と戦って、アルゴス勢に味方するとまことしやかに申しておきながら、今はその約束などころりと忘れて、トロイエに味方しているではないか・・・」


勇将ディオメデスの傍に座ると、戦車は、樫の車軸も、恐るべき女神と名だたる勇姿とを乗せた重みに軋み、凄まじい音を立てた.


パラス・アテナは鞭と手綱を掴むと、真っ先にアレスを目掛け、一つひずめの駿馬を駆り立てる.


血に飢えた、アレスが、討ち取った、巨漢ペリバスの武具を剥いでいる間に、アテナは勇猛アレスに姿を見られまいとハーデスの兜を被った.


人間にとって疫病神のアレス、馬を駆り突進してくるディオメデスを見つけると、ペリバスの死体をその場に放置して、突進してきた.必殺の槍をディオメデスに繰り出したが、アテナが槍先をぐいと掴み、えい、とばかりに振り戻した.


よろけた、アレスに向けて、アテナに青銅の槍を導かれ、ディオメデスは大音声で、アレスの下腹部目掛けて槍を突き出した!


見事に狙った場所を指し貫いて、アレスに重傷を負わせた.


戦神の美しい肌は裂けて、

大量の血がほとばしり、

一万もの兵の雄叫びに匹敵する大声でアレスは苦痛の叫びをあげ、敵も味方も全ての人も神も背筋を凍らせた.


深傷を負い、すごすごと、オリンポスに逃げ帰った、アレスは、ゼウスの御前に出て、アテナの悪口をいう.


「親父、あの、じゃじゃや馬なんとかしてくれよ.親父が好き勝手させてるあのおてんば娘のことだ.あいつのことで、みんなオヤジのやり方、おかしいって言ってるぜ.神々はみんな、オヤジのやること、はいはいって聞いてるのに、あのじゃじゃ馬だけは、好き勝手放題.でも親父は、ちゃんと躾をしてこなかったし、あいつが暴れても注意も説教もしないで、おお可愛い子がまた活躍しておるな、なんて、目を細めて、皆、親父についてくのやめよかな、なんて言ってるよ、どうすんの!オヤジの頭から生まれたから、特別扱いか?俺は母さんから生まれたから、特別扱いしてもらえねえってか?」


「お前に言われたくない.わしはアテナのことが一番可愛い、これは隠そうとも思わんし、皆が言う通り、あの子を見ていると、なんか自分の若い時、元気に暴れ回った時のことが思い出されて、だから俺はあの娘が自分の子供の中で一番可愛い、ああ、そうさ、俺はアテナのことを贔屓にしてるさ、甘やかしてるさ、だからなんだって、俺もアテナみたいに可愛がれってか?はあ、おめえ何言ってんだ、バカかあ?」


反抗的な息子に対する、父親の愚痴と説教は止まるところを知らない.


「お前のことは神々の中で、一番嫌いだ!おお、そうだよ、アテナは一番好きで、お前のことは、何を隠そう、一番嫌いだ、神々の中で一番嫌いだ、つまりワーストワンダ、はは、驚いたろ、びっくりだろ、まさかそこまで嫌われてるとは思って見なかったろ、ざまあみろ、なんで俺がお前のこと一番嫌いかって?それはなあ、お前が戦争が好きで、暴力が好きで、乱暴者だからだ.後、どっちつかずの二股膏薬的な、行動原理、つまり、どっちつかず、その時の気分で戦争をしてしまうこと、人を殺してしまうところだ.作戦も、戦術、おめえにあんのか?ねえだろ?低脳なだけ、戦略と勝つためにどうするか、とか、兵士を死なせないための工夫とか、考えてないだろ、この脳筋!アテナはなあ、俺そっくりでその辺のことヨック考えて、戦争する.しかも人間に手柄をそっと渡してやる気配りもあるんだ、わかったか!おめえには全然ないもんだよな.今回のこともそうだ.お前の母親の差金で事態はさらにややこしいことになったが.お前のことも、わしの息子でなかったら、今頃タルタロスのさらに深いとこにぶち込んでやりたいところだが・・・・」


のべつまくなしに、自分のダメなところをとうとうと説教されたのと、嫌いなアテナと比較され、向こうは大絶賛、こっちには最大限のダメ出しをされて、アレスの泣き出しそうな顔になった.


それに「は!」と気がついたゼウスは、ちょっと言いすぎたと思って、少し優しい口調になった.


泣きそうな顔をしているのは傷が痛むからかもしれない.そもそもアレスには説教されて、傷つくような、デリカシーはあまりなさそうである.


「でも、まあお前も俺の息子だから、その傷ほおっておくわけにもいくまい、アスクレピオスがちょうどいるから、治療してもらってこい、そんでへぺに新しい服着せてもらえ・・・」


説教からの・・・結局子供に甘いオヤジの姿を隠そうともしないゼウスであった.





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