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内科症候学 「呼吸障害と意識障害」

「じゃ、おめえは、脳外科なってよかったと思わないのかい?」

ルシフェルがドクトルに聞いてみた.


「いえいえそんなこと思わないですよ、むしろよかったと思います.私のような怠け者でも、いろんな経験できましたからね.何より意識障害、なんでもこい、って自信はありますね.ただし、診断までは良いのですが、手術とか、血管内治療とか、サブスペシャリティについては、研修先等恵まれませんでしたけどね、まあ自分の責任なんでしょうが・・・」


「意識障害、他に興味深い例とかないのかい?」

「ありますよ、思い出しました、呼吸障害と意識障害、一人の患者さんで2回頭を使う例が・・・」


そこは、脳外科単科の個人病院、ベットは60床くらいでしょうか・・・・


「意識障害で搬送されてきたのは、60代か70代の女性でした.CT,MRIでは、意識障害を説明する病変がない.採血では、低血糖とか、電解質の異常でもなさそうでした.血液ガス分析は?なんと、PCO2が100以上で、意識障害の原因は、炭酸ガスナルコーシスでした」


ご家族に話を聞くと、数ヶ月前から呂律不良があり、時々むせていたそうです.手先の力が入らないで、ボタンが止められないということもあったとのことでした.


高炭酸ガス血症をまずなんとかしないとダメだから、気管内挿管して、呼吸器をつけて、換気をして、炭酸ガスについては正常化して、呼吸器からはなんとか、離脱して、抜管もできたと思います.


患者さんの意識障害が治ったところで、改めて話を伺って診察すると、手指の力が入らない、むせやすい、鼻から空気が抜けるような、構音障害、「気息性」というのでしょうかね?舌を見せてもらうと、細かく震えている.


繊維束攣縮,fasciculationか・・

「ALSだ!」


抜管した後も炭酸ガスが溜まりやすかったので、家で使えるBiPAPを用意して、一旦はおうちに退院、その後外来で、近隣の大学病院の神経内科に紹介して、ALSの診断が確定しました.在宅治療、大学の神経内科の先生が結構一生懸命な先生で、その後はお任せしたと思う.


去年、亡くなった、某巨大医療法人の創業者が、同じ病気で、長い間、呼吸器に繋がれて、それでも目の動きで、タブレットを操作して、経営上のこと等に色々と指示をされていたと聞く.病気になる前は国会議員まで勤められた先生らしい.関連の病院に勤めたことがあるが、そこでは、もはや神の領域に住んでいる人の如しだった.


物理学者のホーキング博士もそうだった.会話は、タブレットで、そしてなくなるまで、知的創造を続けられたというから驚きだ.


しかし、診断がついた時、絶望感たるや、いかばかりかと思ってしまう.どうすれば前向きになれたのだろう・・・・


特に医師でもあった、あの先生は、優秀な臨床家だったと聞くから、ご自分でまず診断に気がついたのではないだろうか・・・


その後も生きる!という意思表示はされたのだろうか?

あるいは周りが、生きる意思を持ってもらうように、援助したか・・・・


微妙な問題を孕んだ病気である.

患者の知能、思考力が、侵されないから、問題はさらに深い.


「自分が、なったら、どうするでしょうね、ALS,魂がこの世にあるうちは、何かしら訴え続ける勇気があるか、あるいは、魂の声をあげるのを早々に諦めてしまうか.

自分にはわかりません」ドクトルの言葉である.


不死の神々の一人である、ルシフェルは黙って耳を傾けるしかなかった.



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