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核酸が「遺伝子」?

別館の図書室.土曜日の夜である.夕ご飯が終わってから、いつからか、皆の勉強時間になった.テレビを見たりはあまりしない.


海丸くんと、静香は、この前集めてきた、高校生物の参考書と、教科書を読んで、遺伝子として、拡散が同定された歴史、核酸こそが遺伝物質であることが証明された歴史を、書き出して勉強している.


そこには色々がドラマがあって小説を読むようで面白い.学問の面白さってこういうことなのかな?と海丸くんは最近思う.

静香も高校はちゃんと行かないで卒業したし、大学には行かなかったから、学問の面白さをあまりわからずにこれまで生きてきた.


いつも学問が大事、という、ドクトルや、ルシフェルや、ポセイドンのオトシャンは、若い人たちに勧めるほどには、自分たちはそれほど一生懸命学問してきたわけでない.

「だからこそだよ.自分ができなかった学問を若い人にしてもらいたいという親心だ」とルシフェルは例によってわかったような、屁理屈である.

「まあ、俺は仕事が忙しかったからな、漁出たり、地震とか津波の視察に行ったり、時々戦争もしてたしな・・・」ポセイドンは仕事が忙しかったことを勉強しなかった、口実にする.


「ドクトルは?」海丸くんが聞いてみた.

「私、私は、仕事はそこそこにしておいて、なるべく本読んだり、勉強するようにはしてましたけど、やっぱり仕事がいやおおうなしで、本読もうと思ったら呼ばれたり、なんてことでまとまった時間は作れなかったかもしれませんね」


大人は勉強しない、口実を仕事のせいにするとか、だから子供にはしっかり勉強してほしいなんてこと言うが・・・・


「それじゃ、勉強の指針、みたいな、あるいは、どんな勉強したら、失敗したとか成功したとか、そう言う話が聞きたいんだよね・・・」ボソリと静香が、ノートに書き込みをしながらいう.


「それもそうだろうけどな・・・」ルシフェルが口ごもる.


今日の勉強の大筋のテーマは、「遺伝子」である.

つい、19世紀になって、やっと、核酸こそが遺伝物質かもしれない、と言うことがわかってきた、と言うことから.


年表を生物の教科書とか、予備校の参考書「図と表で見る生物」から書き出してまとめてみた.

「ちょっと急いでまとめたから雑な年表で申し訳ないのですが・・・」

静香のまとめたねんぴょうである.


皆で覗き込む.

「ほお、なかなかよく纏まってるじゃねえか」と珍しくルシフェルが褒めてくれる.


1839年 G.D.Mulder タンパク質の研究 

1868年 F.Miescher  膿から核酸抽出.

1880年 A.Kossel「体の部分ごとに、核酸は同じ、タンパク質は違う」

1926年 T .Sveldberg 超遠心機でタンパク質分子量を測定した功績でノーベル化学賞受賞.

1930年台に入って、核酸の研究が進む.DNAとRNA.ある種の紫外線をよく吸収する.260mμの波長を吸収することで定量に応用された.


1928年 F .Griffithの実験.肺炎双球菌の形質転換物質の予測.肺炎双球菌の莢膜の有無で感染性の強弱が違うこと、病原性、莢膜形成菌を煮沸して菌を殺して注射しても病原性は出ないが、煮沸後の抽出物と、胸膜を形成しない菌を混ぜて育てたものを注射すると、病原性が発揮されて、マウスから莢膜を形成した菌体が検出された.


1944年アベリーがグリフィスの研究を引き継ぐ.莢膜形成肺炎双球菌から、DNAを取りだして、それを莢膜を形成しない、菌に混ぜて培養すると、莢膜形成菌が形成されたこと.


1952年、ハーシー、チェイス.バクテリオファージの増殖の情報は、DNAにふくまれる.S(硫黄) ,Pリンの同位元素を用いて.バクテリオファージのタンパク質の部分には遺伝情報は含まれず、本体の核酸が多く含まれる部分が遺伝情報の本体でもある.

1969年にハーシーは「ウイルスの複製機構と遺伝的構造に関する発見」の功績から、ノーベル生理学・医学賞を共同受賞した。


ちなみに女性学者のチェイスは、のちにアルコール依存症か、認知症になって、その後肺炎で亡くなったらしい.


「私たちは、核酸が遺伝子で、体のいろんな形、形質を伝える情報を記録した物質であることを知ってますけど、昔の人はそれを知らずに証明したってすごくないですか?参考にする資料、って全く何にもないんですよ」


「確かに・・・」海丸くんも同意である.

「有名な物理学者の、アイザック・ニュートン、彼は、我々は巨人の背中に乗っている、だから遠くまで見渡せる、と言ったと言います.つまり、偉大な先人の築いた理論とか、実験で証明された事実の積み重ねで私たちは次の真理の探究ができるってことなんじゃないでしょうかね」ドクトルの蘊蓄である.


「私たち、みんな、グリフィスとか、アベリー、ハーシーチェイスが生涯かけて行った実験の結果で今の知識が得られているんですね・・・」静香はしんみりという.


「なあ、学問てのは先人の築いた、礎のもとに築けるお城みたいなもんだ、足場がしっかりしてると、立派なでかい城が築けるってもんよ」誰?こんな立派なこと言うの?

「あれ、父上、珍しく立派なこと言いますね」と言うのは海丸くん.

「いやーそれほどでもないけどな・・・」ポセイドンはちょっと照れるが満更ではなさそうである.


土曜の夜更け、皆の勉強は続いた.ポセイドンと、ルシフェルはいつの間にか寝てしまった.


時計を見ると、1時になっている.

「なんかお腹すいちゃいましたね」海丸くん.

「私、なんか牛丼食べたくなっちゃった・・・」と静香・・・

「じゃ、行きますか、牛丼屋、3時から4時が掃除で休みだから、今行けば・・・」


近所の牛丼屋は、改装工事が終わって、新装オープンしたばかりである.

3人夜道をとぼとぼ、牛丼屋に向かった.


冬の夜、勉強でちょっとほてった顔に夜風が当たって少し気持ち良い.






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