欲望へ向かって突っ走れ!!
そして、デイトナ24時間は開催の日を迎えた。
今回、ボール形式でIZUMOは中団、フェラーリは前、そして、注目のビッグ3は後ろの方を引き当てた。尚、今回デイトナ24時間にエントリーするのは合計で何と100台。
当時の水準からすると、やや短いサーキットだったことを考えれば、交通渋滞になりそうだが、そもそもデイトナ500では当時だと60台前後が出走して数珠繋ぎの中でスリップストリーム合戦を繰り広げていたことを考えると、意外とそうでもない。
因みに現在、デイトナ500にエントリーできるのは決勝時点で40台と決められている。
コースが変則オーバルで、スタート/ゴール地点はカーブのため、マシンが待機しているのはピットロードであった。
当然、マシン及びそのドライバーの周囲には、リポーターやカメラが大勢張り付いている。
取り分け注目度が高かったのが、やはりビッグ3陣営。どのドライバーも自信満々でインタビューに応えている。
だが、やはりというか、セブリングで勝利したことで、IZUMOも注目度は高い。
スターティングドライバーを務める風也はこう言ってのけた。
「今回優勝というより、ロレックスが目的ですから」
そう言うと、周囲から爆笑が起こる。要するにアメリカン・ジョークなのだが、まさか日本人がそれを言ってのけるとは思っていなかったので、誰もが笑わざるを得なかった。
しかし、どう考えても今回も優勝するという宣戦布告でしかない。ビッグ3陣営はそのことに気付いてか、一瞬こちらに殺気立った視線を送る。
一方、フェラーリはデイトナとは相性が悪く、それ故インタビューもなかったので、至って気楽な立場であった。このレースに限り、北の教皇から審判が下ることは絶対ない。
その代わり、これが終われば欧州ラウンドが始まるため、データを持ち帰る必要はあり、気が抜けないことに変わりはなかった。
というのも、相性が悪い反面、特にルマン制覇に必要なデータが数多く集まるのだ。従って、完走は絶対条件と言える。
つまり、リタイアは一台たりとも許されない訳で、それはそれでプレッシャーだ。
スタート時刻は、午後4時。時計の針が、スタートまで1時間を切ると、国歌斉唱の中、戦闘機がカラースモークを牽いて盛り上げる。
スタート10分前、ドライバー以外の関係者は退去するが、その際、田中は風也に言い放った。
「欲望へ向かって突っ走れ!!それ以外は考えるな」
そう聞いた風也は、ニンマリ笑いながら無言で頷いた。
そして、デイトナに静寂が訪れる中、誰もがコンセントレーションを高めており、鼓動さえもが聞こえそうな中、刻一刻とスタートが近づく。
時計の針が午後4時を指した瞬間、星条旗が振り下ろされ、ドライバーはマシンへと向かう。
歴史上に残る圧勝劇が、今、始まった……




