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出雲から、IZUMOへ

 富士での最終戦開催が一か月後に迫る中、チームはいよいよ大詰めを迎えていた。


 マシンは正式にスポンサーロゴが入ることになり、協賛したのが燃料でサポートしてくれることになった出光、タイヤではダンロップ、電装品はマレリー、プラグはNGK、ホイールはマルケジーニ、シートベルトはサベルト、ブレーキはブレンボである。

 尚、主だったレース用部品の大半がイタリアからの供給であったのだが、実は谷田部には偶然にもイタリアから来たサプライヤーの関係者がおり、その走りを目の当たりにして即座に売り込みに来たのだった。


 加えて、時計のシチズン、カメラ及び計測器で既に世界的なメーカーであったオリンパスがスポンサーとして出雲を支援してくれた。


 また、先日エントリーが正式授与され、後は日の丸にゼッケンが入るだけとなる。


「ここまで来ると、いよいよレーシングカーらしくなってきたな」

 耕平は、その姿を見て、これまでの苦闘を振り返っていた。


 友人のマン島制覇に触発され、ならば四輪で行こうと決めてから、早一年半になろうとしていた。その間、戦争のトラウマに苛まれたこともあった。

 技術的に未知の領域にも数多く直面した。


 だが、今にして思えば、全てがまるで歯車のように噛み合い、ここまで導かれてきた。そう思えてならなかった。


「いよいよか……」

 ふとカレンダーを見遣ると、10月を飾るのは、秋晴れの富士の写真。尚、当時は今と異なり印刷技術もまだそこまでではなく、所謂昭和品質であったが、雰囲気は十分に伝わっている。

 その富士の写真を持見つめていると、高鳴るものがあった。


「お前は、出雲から、IZUMOになるんだ……」

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