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PRODIGY  作者: えんどう
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第一話「ブラック・ファントム」

人間の目には映らない存在がいるとしたら——

それは幽霊なのか、それとも別の何かか。

ある夜、俺たちは「幽霊」と呼ばれる存在に遭遇した。

しかし、その正体を追ううちに、俺たちは知ることになる。

それはこの世界に潜む、もっと恐ろしい"何か"であることを。


闇の中に隠された秘密。

そして、それを追う者と隠そうとする者たち。


これは、見えない存在を追う者たちの記録——

 俺は心霊現象を専門に調査する、いわゆるゴーストハンターだ。今日はとある廃病院に来ている。

 この場所は「幽霊が出る」と噂され、数々の目撃談が報告されている。カメラと霊感の強い助手を連れて、深夜の病院を探索する。錆びた扉を開け、暗闇を進む。寒気がする。これはヤツが近い証拠だ。


「何か感じるか?」  助手が首をかしげる。

「いや……妙なんです。いるはずなんですけど、見えないんです」

俺はカメラを構えた。

「普通の幽霊っていうのが一般的だけど、実は違うのかもな……」

突然、背後から声がした。  


 "Man, y'all just gonna ignore me? That's messed up!"

(おい、お前ら俺を無視するのか? ひどいな!)


 驚いて振り向くが、誰もいない。


「えっ、英語?今の聞こえました?」助手が震えながら言う。

「確かに声がした。だが、どこにも……」

 "I said, I'm RIGHT HERE!"

(俺はここにいるって言ってんだろ!)


 バンッ! 目の前のロッカーが勢いよく開いた。だが、やはり何も見えない。


「……もしかして、透明な霊とか?」

 "Hell no! I'm just a ghost who ain't easy to see!"

(違う! 俺はただ、簡単には見えない幽霊なだけだ!)


 静寂が訪れた。


「……え?」俺と助手は顔を見合わせる。

 "Y'all always look for the obvious ghosts, huh? I've been here FOREVER, but no one notices me!"

(お前ら、いつも目に見える幽霊ばかり探してるだろ? 俺はずっとここにいるのに、誰も気づきやしない!)


 助手が小声で呟く。「……もしかして、夜の暗闇に溶け込んでて見えないとか……? 見えないけれど、もしかして黒人の幽霊だから……とか?」


 "Damn right! It's cause I'm Black! You ever try seeing a Black ghost in the dark? Impossible!"

(その通り! 俺が黒人だからだよ! 暗闇で黒人の幽霊を見つけたことあるか? 無理だろ!)


 俺と助手は絶句した。


「幽霊にも色素ってあるんですね……」

 助手がぽつりとボケる。

「色素…いや、まあ……確かに……」


 俺はなんとも言えない気分になりながら、カメラを向ける。「その、フラッシュ焚いたら見える?」


 ピカッ! 白い閃光が走る。


 そこには、バスケットボールのユニフォームを着たガタイのいい男が立っていた。彼は腕を組み、呆れた顔をしている。


 "FINALLY! Took y'all long enough."

(やっとかよ! ずいぶん時間かかったな。)


 助手は震えながら言う。「す、すごい……確かにいる……!」


 "Now, are y'all gonna be scared, or what?"

(で、お前らは怖がるのか、それともどうする?)


 俺たちは顔を見合わせ、無言で頷いた。


 幽霊は満足そうに微笑んだ。


 しかし助手は晴れない様子で私に囁く。


「ところで…目撃談があるって話だったはずで私たちはここに来ました。


 しかし、私たちはカメラのフラッシュを焚いて初めて彼が見えるようになったんです。…目撃談って…?」


 実は同じ事を同時に気づいていた。


「そうだよな。待てよ……この幽霊、本当にここで死んだのか?」


 助手と俺は顔を見合わせる。事前に確認したはずの病院の古い記録を頭の中で遡る。


 不自然な点がいくつか浮かぶ。


 患者のカルテはあれど事故で亡くなったはずの人物の名前がどこにも載っていなかった。

 そして、院内カルテには、黒人どころか外国人と思われる患者の記録はなかったのだ。


「お前、本当にこの病院の幽霊か?そして、なぜ日本語が分かる?」


 沈黙が流れた。


 "Damn... y'all are smarter than I thought."

(やるな……思ったより頭が回るじゃねえか。)


 幽霊はニヤリと笑った。背後の闇が揺らめき、彼の姿は次第に薄れていく。


「これは……一体……」


「分かりませんが、普通の幽霊ではない事は確かですね……」


 それ以来、俺たちは「目立たない幽霊もいる」としっかり証言するようになった。だが、本当に彼はただの幽霊だったのか。それとも——



俺たちはまだ何も知らなかった。

いや、知る準備ができていなかったのかもしれない。


《PRODIGY》とは一体何なのか?

誰が彼らを追い、そして誰が彼らを隠そうとしているのか?


闇の中に隠された真実を暴くには、まだ時間が足りない。

だが、俺たちは一歩踏み出した。

そして、その足音は、すでに誰かに聞かれている——

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