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ドエロ転生  作者: エチエチエッチマン
第一章 バルクレイオス領 騒乱編
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笑顔の時が一番怖い

2人が風呂に入ってる間に服を用意しておかないとな。

だが、碌に客も訪れない男2人の住処には女の子が着るような服なんてない。

大きさ的にオレの服を着せてやるしかないな。

風呂から上がってくる前に脱衣場に置いておこう。


風呂から上がってきた2人が、ぶかぶかなオレの服を着て居間にやってきた。

2人をテーブルに座らせて、パンを焼いて軽く食事を作る。

焼いたベーコンの匂いでどちらかの腹の音が大きく鳴った。

「待っててくれ、もう出来るよ。」

料理を皿に移して、2人の前においた。

「どうぞ召し上がれ。」

即座に口にかきこむ猫娘ミルシャ。

対照にオレを何度か見つつ、口からよだれを垂らして目の前の皿を見ている犬娘アマナ。

「マナちゃんいらないなら頂戴?」

まだ自分の分があると言うのに、ミルシャはアマナの皿に手をかけた。

「えっ・・・・。」

言われたアマナはとても悲しそうな顔をした。

目の前に用意した食事を守るように、自分の皿に少し手を添えている。

かわいそうだから助け舟を出してあげるか。

「お代わりならあるぞ?」

「本当!?」

返事をしたのはミルシャだった。

いや、お前じゃないよ。

だけど結果的にアマナの皿は守れたから良かったか。

パンを持っていくと、ミルシャはひったくって口に入れる。

速い。誘拐されて何も食べていなかったんだろうな・・・。

だが、同じく腹が減っているはずのアマナは全く手をつけない。

「食べられないものとかあったか?」

アマナに話しかけても、顔をそらされるだけでコミュニケーションがとれない。

家族を殺されて今まで監禁されていたから、人が信用出来ないんだろうか?

でもミルシャの食べっぷりを見るに、食べなきゃすぐにも倒れてしまいそうだ。

バクバクと食べて笑顔のミルシャを見つつ考えていると、玄関の方で音がした。

父が帰ってきたようだ。


「ただいまエゼル。今日は何もなかったよね?」

「お帰り父さん、休日の度に聞くのはやめてくれよ。あなたの息子は人様の迷惑をかけるようなことはしていないよ。」

オレの休日が少ない理由の一つがこれだ。

過保護な性分でオレの行動を逐一聞いてくるのだ。

今日だって夕方まで用事があると言っていたのに、昼に帰ってきた。

2人の事があったから話をするにはちょうどいいが、父の束縛がえぐい。

「そうは言っても、キミに休日をあげる度に近隣の方から苦情が入って来て───。」

会話をしながら父が居間に入って来て、獣人娘2人と目が合った。

そして、視線がオレに来る。

「エゼル、こちらのお嬢さん方は?」

一見落ち着いているように見えるが、父の声には震えが混じり、オレの肩を強くつかんでいる。

「おちついてよ父さん、肩が痛いから。オレの話を聞いて。」

父よ、息子を信じろ。信じるのだ。

オレは簡単にこの子達のあらましを話した。


「なんだ。ボクはてっきり・・・。」

てっきりとはなんだ?なんなのだ?

まあいい・・・この話をするとオレの方が分が悪い。

とりあえず2人に父を紹介するか。

これから一緒に住むことになるしな。

「2人とも、この人はオレの父さん、マルロス・ヴァンファストだ。」

「はじめまして。」

「・・・・・・。」

ぺこりと頭を下げる猫娘ミルシャ。

犬娘のアマナは、言葉を発さない。本当に人見知りなんだな。

いや、よく見てみると視線を父に向けたまま固まっていた。

「奴隷解放の英雄・・・本物のマルロス様ですか・・・?」

奴隷解放の英雄?父さんが?

初めて聞いたぞ、そんな話。

「父さん、今の話は本当なのか!?」

「今のって言うのは?」

「父さんが奴隷解放をした英雄って話だよ。話聞いてた?」

この父は本当に抜けてるな。

言い方と態度が少し悪かったのか、父に怪訝な顔をされ睨まれた。

「本当の話だけど、それはエゼルが生まれる前の話だ。

その子達はどうみてもエゼルより年下なのに、よく知っていたね。」

そういえばそうだ。オレは自分の父のことを詳しく知らない。

なんとなく強くて、その力で偉くなったと言う事しか知らない。

英雄か・・・。

待てよ?

と言う事は、オレがエッチな奴隷を買えなくなったのは、この男のせいか?

くそっ、この男の息子でなければ・・・もっと早くにこの世界に生まれていれば・・・。

父への恨みは一旦置いておいて、父だけじゃなくオレも挨拶しておこう。

「改めてオレは英雄の息子エゼルだ。平民なんで家名はない。よろしくな。」

あくまで父であるマルロスが家名を与えられ貴族と同等の権利を与えられたのであって、オレには貴族としての権限はない。

そう言うと、

「エゼルさんは、マルロスさんと実の親子ではないのですか!?」

アマナが驚いていた。さっきまでと大違いで、食いつきがすごい。

「いや、血を分けた親子だよ。詳しくは知らないけど、父さんの地位や権利を引き継げないんだ。」

1代限りの貴族というやつだ。

軽率に平民を貴族にしては国が貴族だらけになってしまう。

だが特別な働きをした者に褒美がなければ、誰も国に尽くさなくなる。

そのための制度だ。

オレ達の外見を見て本当に親子なのかと疑うのも分かる話だ。

父はとてもきれいな金髪でよく目立つ。

そしてオレは母親譲りの赤みがかった茶髪。

なので、一目では親子と分からないのはしょうがない。

そうだよな、髪色の問題だよな?

「そうだったんですね・・・マルロス様のご子息なら安心ですね。申し訳ありません。」

その言い方は・・・やっぱり信用されてなかったか。

だが父の名声によりアマナは食事を食べてくれた。良かった良かった。

しかし、父はこちらを睨んだままだ。なんだろう?

「エゼル、話を聞いていて思ったんだけど、ボクの言いつけを破ったね?」

「あ・・・。」

危険なところには寄り付かない。外に出るときは剣を持ち歩く。

この2つをオレは守らなかった。

だから、父はオレをずっと睨んでいたんだな・・・。

「明日、付き合ってもらうからね。」

父は笑顔のままそう言ったが、目の奥は笑っていなかった。

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