4.酒に酔ってからです
陽が部屋に差し込み、小鳥たちのさえずりと共に、静かで穏やかな雰囲気の中、ベッドに横たわっていた人物がゆっくりと起き上がった。
「痛い痛い痛い痛い痛いっ!!!!!?」
頭が斧で真っ二つに割られたような感覚で、その上を蛙がピョンピョン跳ね回っているようだ。
「なんだこりゃ………」私は力なく呻いた。
特殊訓練を受けた身だ。普通の酒なら二、三樽飲んでも何ともないのに、この液体は一気に私を昏倒させ、今も頭が割れそうに痛い。
気がつくと、傍らで誰かがじっと私を見つめていた。
灰白色の髪、皺の刻まれた顔。年齢は80歳ほどか、ファロス親分よりもさらに年上に見えるが、眉間の気迫がかつての栄光を物語っている。ひげを一切生やしていない点だけが親分との違いだ。
私が目を覚ましたのを見ると、彼は興奮して叫んだ。
「1日!たったの1日で、新記録だ!!」
「なに!?1日で?こいつ超人か!」
隣の部屋から聞きつけた男が飛び込んできて、ベッドに座る私を見て目を丸くした。
彼は一風変わった風貌で、炎のような赤髪に顎鬚、口にはパイプを咥え、顔中に傷痕が刻まれている。
最も印象的なのは全身から迸る殺気だ。地獄から這い上がってきた者だけが持つ気配で、初対面で気の弱い者は卒倒するほど。
…まあ、私には効かないが。
私が平然としているのを見て、彼は満足そうに頷いた。「いい、良い芽だ」
「誰を見ても良い芽だ良い芽だと。人は皆殺し好きじゃないんだから、その殺気を収めろ。それに、ライト弟には勝てんかもしれんぞ」
外から聞こえた声に三人が振り向くと、ファロス親分が腰を叩きながらゆっくり入ってきた。
「俺は本当のことを言ってるだけだ。ライト弟はただ者じゃない。俺の酒を飲んで1日で目を覚ます奴は見たことない……前回の最速記録は誰だっけ?」
「親分だよ」最初にいた男が答えた。「親分は2日、俺は3日、三番目は5日。五番目はたまたま不在で難を逃れた」
「そうだそうだ、やはりライト弟はただ者じゃない」
「ライトはまだ若いんだ、酒は控えめにな」
いや、見た目完全に成人してるし、むしろ年配の方が控えるべきでは?
「そもそもお前が間違えたんだろ。ライト弟に出すはずだった温かいミルクと、俺が頼んだ酒を間違えたからこうなった」赤髭の男は平然と言い放った。「それに酒くらいどうってことない。俺の酒は他では飲めんぜ。そうだろ、ライト弟?」
「あ、あー……確かに」
彼らの会話で私も少し清醒し、昨夜の酒の味を思い出した。鼻を刺すような香りながら、飲み心地は滑らかで、コクがありながらバランスが取れ、甘みもほのかに感じつつ、やはり辛口が主体。飲んだ後も口中に芳醇な香りが長く残る、間違いなく上等な酒だった。
……ただ酔いが早すぎるし、頭が痛い。
「その話は置いといて、ライト、もう少し寝るか?」
「いえ、もう大丈夫です」
人のベッドを占領し続けるのも気が引けるので、私はすぐに起き上がり、さっと寝床を整えた。三人はにこやかに私を見つめている。
「紹介しよう。俺はジェット、二番目だ。あの大男はアラン、四番目。五番目はワーカーで、今は別の町で買い物中だ。あと3時間ほどで戻るだろう」
「じゃあ、私は六番目ですか?」
私の言葉に三人は大笑いした。「いいねえ、すぐに打ち解けてくれる。残念ながら六番目は既にいる。今は放浪中で、どこにいるかさっぱりわからん。だから君は七番目だ」
三番目は?
私の疑問を察したジェットは肩を叩き、悲痛な表情を浮かべた。「三番目か……彼はもう……あの世だ……墓はあそこの山にある。お参りに行くか?」
「そ、それは……お悔やみ申し上げます」
最後の言葉が口をついた瞬間、私が悲しみの表情を作る間もなく、彼の頭を親分が強く叩く音が響いた。
「芝居芝居芝居!何年経っても同じことばかり」叩き終えると親分は私に向き直った。「気にするな。三番目は天寿を全うしたんだ。日向ぼっこしながら眠るように逝った。苦しみは一切なかった」
ジェットは頭を押さえながら不服そうに言った。「天寿だろうが、三番目が逝った時みんな泣きじゃくったじゃないか。一人減ったら寂しくなるのは当たり前だろ」
「ああいう風に静かに逝けただけありがたいと思え」親分はぽつりと言って、すぐに口を閉じた。
この不可解な発言に対し、私は聞こえないふりをすることにした。
どう見てもこの三人は普通ではない。親分が以前「ちょっとした裏方仕事」と言っていたのも嘘か、あるいは話せる範囲のことだけを話したのだろう。長年の戦闘経験で研ぎ澄まされた私の直感が警鐘を鳴らしている。私はできるだけトラブルを避ける主義だ。
「えっと……順番は年齢じゃないんですか?」長い沈黙の後、私は気まずい空気を打ち破るように質問した。
意外な質問に三人はしばらく呆然としたが、やがてアランが説明してくれた。「ああ、順番はここに来た順番だ。ここは親分の家で、他の俺たちは後から加わったんだ」
「え? じゃあみなさん元々この土地の出身じゃないんですか?」
「もちろん違う。俺たちが同じ地方の出身者に見えるか?」
「は、はい……確かにそうですね」口では適当に返しつつ、私の心中では警報が鳴り響いていた。
こんな小さな隔絶された村に、元々の住民がいないだなんて。
そう考えると、私がここに来られたのも、偶然ではないのかもしれない。