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159.デート

「じゃあいつ戦うの?」


「心配するな、もう手はずは整えてある」そう言って私は指を唇に当て、これ以上は話せないと合図した。私たちの会話がどうにかして王の耳に入らないとも限らない。絶対に安全な環境でない限り、口にすることはできない。


私の言葉を聞いたオシアナは頷き、それ以上は尋ねなかった。


「もし私より強かったら……どうする?」オシアナの先ほどの発言を思い出し、最悪の事態を想定せざるを得なかった。ところで今までオシアナより強い敵に出会ったことはないので、彼女の答えは興味深い。


「そうなったら全力を出すわ」


なんと彼女はまだ全力を出したことがなかったのか……さすが深海族最強の若手、感服した。


「でも私が全力を出したら……」オシアナは少し考えてから続けた。「代償が大きすぎる。私自身が大きな影響を受けるだけでなく、この街ごと消滅するでしょう」


それはやめよう。あの男が街一つを滅ぼせるほどの力はないはずだ……たぶん。


「もし全力を出しても勝てないなら、たとえあなたが嫌がっても、すぐに逃げるわ」オシアナは突然真剣な表情で私を見た。「私にとってあなたが一番大切だから」


「もちろん、君でも勝てない相手なら、すぐに逃げるさ。無駄な戦いはしない」私は彼女の頭を撫で、同意を示した。


私は負けが明らかなのに「復讐だ」とか「守る」とか言い張るタイプではない。まず生き延びてこそ、それらの希望がある。瀕死の状態で急に強くなるなんて、小説の中だけの話だ。現実ではむしろ弱くなるのが普通だろう。


「やっぱり全力は使わないでくれ。代償が大きすぎる」私はそう言った。そこまでする必要はない。


私と彼の因縁は私たちだけの問題だ。この街とは関係ない。どちらが勝ってもここを滅ぼすつもりはない。そもそも私が宣戦布告したのも、部下たちを守るためだ。


街を滅ぼしたら本末転倒だろう。


「状況によるわ。もし彼が圧倒的に強ければ、仕方ないもの」

「わかった」


…………


「ボス、今日は随分派手なことやったらしいな」

「情報が早いな」


約30分後、私はオシアナとソファでお茶を飲んでいた。チャールズとエリソンは呆れたように私たちを見つめている。


たった30分で、私が宴会で大暴れした話がここまで伝わるとは。この街は相変わらず、情報が何よりも速く広まる。


「これでもう完全に決裂したのか?」

「ああ、すぐに決着がつくだろう」

「勝てるのか?」

「わからないな」


本当に100%の自信はない。吸血鬼の王に対してさえ、ある程度の見当はついていた。私が勝てなくても、オシアナなら確実に倒せる。これまでずっとそうだったからこそ、私は今まで生き延びてこられた。


しかしこの王に対しては、強さよりも不気味さを感じる。


吸血鬼の王が圧倒的な強さで、対抗できないとわかったのに対し、こいつは何をしてくるか、何ができるかが読めず、手の打ちようがない。


「やはりもっと準備が必要そうだ」私は目を閉じ、まだ実力を高める方法がないか考えた。


タカの良いものはもうほとんど使い切った。【赤ずきん】のカードもかなり手に入れた。ティファニーはチャールズたちの保護が必要だ……そういえば教会からもらった聖剣も折れてしまった。使えれば良かったのだが。


ローズに頼めないかとも考えたが、彼女は私のやったことで手一杯だろう。それに個人的な因縁に協力してくれるかもわからない。戻るのも面倒だ。どうしてもという時以外はしたくない。


他に頼れる者もいない……どうやら本当に打つ手はなさそうだ。


ならば天命を待つしかない。


「よし、用がなければもう寝るぞ」

「ボス、起きたばかりじゃないか」


チャールズは時計を見た。宴会からまだ3時間も経っていない。十数時間も寝ていたはずなのに。


「仕方ない。子供は睡眠が必要なんだ」私はまたオシアナの髪を撫で、彼女は不満そうな顔をした。


「子供はあなたの方よ」


確かに。あなたの年齢にはゼロがいくつ付くかわからないんだから、それに比べれば私は確かに子供だ……もちろんそんなことは口が裂けても言わない。命が惜しいからな。


「はは、必ずしもそうとは限らんがな」頭の中のロワがまた現れた。この野郎、からかう時しか顔を出さない。普段は影も形もない。


「それじゃあ私はずいぶん長く生きてきたんだな?」

「ああ、とてもとても、君の想像をはるかに超えるほどにな。たとえ教えたとしても、君は自分がどれだけ生きてきたか推測すらできないだろう」


どれだけだよ。まさかこの世界が生まれる前からいたなんてことはないだろうな。


「じゃあボス、俺も手伝いに行くべきか?」私たちが階段を上がろうとした時、チャールズが声をかけてきた。


「いいや、君の妻を守ってくれればそれで十分だ」


チャールズも弱くはない。だが彼は私と違い、純粋な人間だ。以前の私と同じで、傷を負えばすぐには回復できない。今の私は頭を吹き飛ばされても平気だが、彼はそうはいかない。


だから危険に巻き込みたくない。


オシアナはベッドに飛び乗り、枕を抱えて転がり回った。子猫のようにとても可愛らしい。


「明日は何するの?」オシアナは枕を抱えながら私を見た。


「うーん……わからないな」今のところ本当にやることはない。できることは全てやった。あとは王との戦いの機会を待つだけだ。


忙しかった時間が急に暇になり、何をすればいいかわからなくなった。


「じゃあ、明日は私と一緒に……何だっけ……あ!デート!デートに行かない?」

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